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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 8

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第28章 風の大山、真実の領域


 広大な砂漠をガルシア達五人は歩んでいた。
 オセニア大陸の中心に位置する大岩山、エアーズロック、この神秘の山には風の力が溢れている。それによって吹き荒れる風によってエアーズロックの周りの雲は皆流れていき、周辺ではめったに雨が降ることはない。それがエアーズロックの周辺を砂漠化している原因だった。
 砂漠ではあるがほとんど暑くない。それは吹き付ける風のおかげだった。砂漠化を招いた風が逆に砂漠の熱を冷ましている。何ともありがたいのか、仇となるものなのか良くは分かりかねるものだった。
 砂漠を歩き出して約二時間が過ぎようとしていた。ようやくガルシア達はエアーズロックの麓までたどり着いた。
「これがエアーズロック…」
 見上げるほど高い。見上げてもその頂上は霞んでいた。これを登るとなると相当苦労を重ねることにであろう。
「行こうか」
 ガルシア達は再び歩き出した。
 麓は起伏の激しい道が迷路のように入り組んでいた。風で寄せ集められた砂がいつしか固まっていき出来た道だった。
 少し進むと細い通路の間に砂が詰まった場所へ差し掛かった。
「う〜ん、この先は進めそうにねえな」
 シンは言った。
「仕方ない、別の道を探すか」
 ガルシアは言ったが、ここを進まなければエアーズロックに近付くのは難しい事だった。起伏の激しい道を登ったり下りたりしなければならないからだ。
「待って」
 シバは皆を引き止めた。
「どうしたの、シバ?」
 ジャスミンは訊ねた。
「この岩から風の力を感じるわ」
 シバは側にあった自身の腰元位の高さの岩に触れ、言った。
 その岩は薄い黄土色の一見何の変哲もない岩である。しかし、その岩こそが風の力を増幅させる『スピンストーン』であり、エアーズロックを進むにあたって欠かすことのできないものだった。
「もしかしたらこれを使えばいいのかも…」
 スピンストーンの前に立つガルシアとシンによけてもらってシバはスピンストーンにエナジーを使った。
『スピン』
 小型の竜巻が発生し、スピンストーンの上で回転している。やがて回転の速度が速くなり、竜巻の大きさは一回りほど増大した。
 シバは竜巻を前方へ放った。竜巻は真っ直ぐに飛んでいき、通路の間の砂を吹き飛ばした。
「これで進めるわ」
 シバは言った。
「やるじゃねえかシバ。よくこんな仕掛け見破ったな?」
「偶然よ、ただ感じるままにやってみたらこうなっただけよ」
 シバは謙遜していた。
 これ以後も何度か砂が詰まって進めない場所へぶつかった。しかし、そのたびにスピンストーンを見つけ、『スピン』を強化して砂を吹き飛ばして進んだ。
 進んでいくうちに起伏の激しい道を越え、ついにエアーズロックの前までたどり着いた。これから先はこの岩山をひたすら登っていく事になる。 しかし、登ろうにも岩山の表面は砂に包まれていた。これでは足が滑り続けてとても登れそうにない、そこでどうにかこの砂を吹き飛ばすことが出来ないかとスピンストーンを探した。
「おい、何だ、あれ?」
 シンは少し離れた所を指差した。その先には竜巻の形を模したオブジェのような岩があった。
 スピンストーンよりも遥かに強い効力を持つ『トルネードロック』と呼ばれるものである。
 ガルシア達は自分達の背丈以上もあるトルネードロックに近づいた。
「この岩からも風の力を感じるわね、それもかなり強いわ」
 シバはトルネードロックに触れて言った。
「とすると、ここもシバの出番ね!」
「任せてジャスミン」
 シバはトルネードロックに手をかざし、念じた。
『スピン』
 するとトルネードロックは一瞬輝き、発生した光の玉が渦を巻いた。その瞬間、普段の何倍もの大きさとなった『スピン』の竜巻が発生した。
 大竜巻はうねりを持ってどんどん岩山に纏わりついた砂を払っていった。
 約一分間竜巻は続いた。大竜巻が消滅すると岩山の表面は露わとなり、登っていくことができるようになった。
「物凄い風の力だったわね」
 シバはあれほどの大竜巻を出した後だと言うのに疲れた様子はない、ほとんどトルネードロックが成し遂げた事だった。
「これからが大変だぜ…」
 シンは岩山を見上げた。真下だけあってまるで頂上が見えない。
「スクレータ、どうする?ここからはかなり厳しいぞ」
 ガルシアは訊ねた。
「うむ、そうじゃな。残念じゃが、ワシはここで待ってるとしよう」
 やはり老体には山登りする体力は無かった。それをスクレータ本人はよく分かっており、足手まといになるまいとここに残ることにした。
「そうか、ではここで待っていてくれ。できるだけ早く戻る」
「うむ、そうしとくれガルシア」
 スクレータを麓に残し、ガルシア達は岩山を登り始めた。
 少し登ると平地にたどり着いた。岩山ではあるがただの岩登りではなく本格的な山登りに近かった。
 その後の道のりは何とも不思議なものがいっぱいだった。どのような仕組なのか像の口から吹き出される旋風に乗って上がっていくという事をした。それから再び岩壁を登っていった。するとひどい靄のかかった所へ出、そこでは登っても登っても同じ場所へ戻されてしまった。
 そこにも例のトルネードロックがあった。シバが『スピン』を発動し、巨大な竜巻を引き起こした。
 靄は竜巻によってどんどん払われていく、次第に晴れていき青空が見えてきた。
 靄が晴れ、ガルシア達は更に上へ進んだ。たどり着いたのはエアーズロックの頂上だった。ついに登頂することができたのだが、頂上には何もない。だだっ広い平らな地面で目の前は広大な砂漠の景色が広がるのみだった。
「何だ、何もねえじゃねえか?」
 シンは拍子抜けしていた。これほどすごい岩山だというのだから頂上には何かあると踏んでいたのだが、頂上には何一つない。あるのはやはりあのトルネードロックのみ。
「仕方ない、下りるか」
「待って」
 ガルシアが下山しようと提案した途端、シバは止めた。
「どうしたのよ、ここには何もないんだから帰りましょうよ」
「ここ、今までで一番強く風の力を感じるの。きっと何かあるわ…」
 シバはトルネードロックに歩み寄った。そっと触れるとそれを通じて風の力が伝わるのを感じた。それもやはり今までで一番強い、ここには必ず何かある、シバは確信が持てた。
『スピン』
 シバは詠唱した。トルネードロックから光の玉が発生し、渦を巻くと上空に竜巻が伸びていった。上空の僅かしかない雲を竜巻によって寄せ集め、雷雲を作り出した。
 雷雲は雷鳴を轟かせ、眩い輝きとともに一気に落雷を引き起こした。
 轟音とともに雷はトルネードロックの前の地面に落ちた。すると衝撃によって地面が陥没した。「びっくりしたなぁ、みんな大丈夫か?」
 シンは訊ねた。
「ああ」
「何とかね」
 土煙が晴れていく、地面が陥没し、できた穴には螺旋状の下り階段があった。
「行きましょう、風の力はこの先から感じるわ」
 シバは先に階段を下りていった。ガルシア達も後に続くのだった。
    ※※※
「これは…」
 ガルシアは驚きの声を発した。