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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 8

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「お主ら、本当に修行を乗り越えてここに来たのか?」
「ええ、一応…」
 ガルシアが答えた。
「なんと、やはり修行の穴を抜けおったのか!」
 ピポイは突然険しい顔で唸りながら何かを考え始めた。
「ピポイ殿、何をそんなに唸っておられる?」
 スクレータは訊ねた。
「…本来ならば修行を乗り越えた者には奥義を与えねばならぬ。しかし、寺の者ではないお主らに奥義を与えて良いものか…」
 ピポイは悩んでいた。
「ちょっと、苦労して魔物とまで戦ってここまで来たって言うのに、奥義が貰えないなんてあんまりじゃない」
「ちょっと、シバ…」
 ピポイの表情が変わった。
「魔物、じゃと?」
 ピポイは太く白い眉をひそめた。
「全く、修行の最後に魔物との戦いがあるなんて思わなかったわよ」
 シバは言った。
「何の話じゃ?修行の穴にそんな試練はないはずじゃが…」
 ピポイははっとなった。
「そうか、最近弟子達が言っていた穴から聞こえる獣の唸り声の正体はそれじゃったか!」
 ピポイは急に笑顔になった。
「お主らは修行を乗り越えただけでなく不届きな魔物どもも退治してくれたのか。ならば何も言うまい、奥義を授けよう」
 ピポイはガルシア達を順繰りに見渡した。そしてガルシアの目を見て訊ねた。
「良い目をしておるな、お主、名を何と申す?」
「ガルシアです」
「ガルシア、か。ではガルシア、ワシの後に付いてきてくれぬか?」
 ガルシアは仲間と共にピポイの後を付いていった。連れられた先は部屋の真ん中あたりである。質素な台座の上に、水色の水晶のような石が置かれていた。
「これは『リリースのペブル』という。ガルシア、これに触れてみるんじゃ。お主に十分な力があればこれによって奥義が授けられるじゃろう」
 ガルシアはリリースのペブルに手を伸ばした。そっと触れてみるととてもひんやりしていた。
 触れている内にリリースのペブルが光を帯び始めた。それはとても弱く、微かなものだった。
 瞬間強く輝きを放った。それと同時に光も消え失せた。
「うむ、もう手を離して良いぞ」
 ガルシアはリリースのペブルから手を離した。そして石に触れていた手のひらを眺めてみる。
 自分の中に新しい何かが現れたような感じがするが、それがどんなものなのかは分からない。
「奥義を授かることができたようじゃな。ではワシが手本を見せよう」
 言うとピポイはどこからか木の棒を取り出してそれを地面に置いた。そして目を閉じて精神集中すると手をかざし、詠唱した。
『リリース』
 木の棒は一瞬光に包まれると弾丸のように壁へと飛んだ。
「これが我が寺に伝わる物を飛ばす力、『リリース』じゃ」
 ピポイは説明した。
 精神力を念力に換えて物体を遠くに飛ばすリリース。精神力が元になるところはエナジーに通じるものがあるように思われた。
 エナジストのような特殊な力を持たない普通の人間がこの力を使うにはかなりの精神力が必要であるという。故に修行の穴を越えられるような決して折れない心と精神力が必要で、あれほど厳しい修行があるのだという。
 もし精神力が十分に無い者が奥義を授かろうとしても、仮に授かることができたとしても満足に物は飛ばせないであろう。
 そういう理由でピポイは弟子達に厳しい修行をさせていた。
「まあ、口でごちゃごちゃ言うよりも試してみる方が早いじゃろ」
 ピポイは先ほど自分が飛ばした木を拾ってガルシアの前に置いた。
「さあ、やってみるんじゃ」
 ガルシアは木の棒を見つめた。先ほどピポイがやった情景を思い起こしてみる。石に触れた後に感じた新しい何かがその情景に呼応した。それと同時に他のエナジー同様にそれがどのような効力を発揮するのかが心に刻み込まれた。
 ガルシアは手をかざし念じた。
『リリース』
 木の棒は物凄い勢いと速さで壁に飛んでいき、壁にぶつかると真っ二つに割れた。
 ピポイは驚いた。
「何と、これほどの精神力があるとは…!」
 この『リリース』というエナジーは精神力に非常によく比例する。エナジストであるガルシアの精神力は並一通りではなかった。
「ガルシア、お主はすごい。最早非の打ち所がないぞ」
 ピポイは絶賛した。
「はあ、ありがとうございます…」
「良かったなガルシア、良いものが学べて」
 スクレータは言った。
 ピポイはうむ、うむ、と頷いている。
「お主になら素質がある。どうじゃ、ワシの一番弟子になってこの寺を継いでみぬか?」
 思わぬ勧誘をされてガルシアは戸惑った。
「いえ、それはちょっと…」
 その様子を見てジャスミン達は寺を継いだガルシアの姿を想像してしまった。
 彼女達の頭の中に麻布の衣を着て袈裟を着け、頭を丸め、手を合わせるガルシアの姿が思い浮かんだ。
「ぷっ、くくく…」
 二人はクスクス笑い始めた。
「おいそこ、何が可笑しい?」
 ガルシアは突っ込んだ。
「ははは、冗談じゃよ、冗談。じゃが、我が弟子達にも早くお主ほどの精神力を手に入れてもらいたいもんじゃ」
 ピポイは笑った。
「ではピポイ殿、ワシらはそろそろお暇させてもらいますわい」
 スクレータは言った。
「おおそうじゃな。爺さんの足で修行の穴を越えてきたんじゃお疲れじゃろうな」
「爺さんじゃと、お主も爺さんのくせに!」
 スクレータは食い下がった。
「ハイハイ、止めときなさい」
 シバは宥めた。
「達者でな、道中気を付けるのだぞ」
 ピポイが言うとガルシアは奥義の礼を言って、カンドラ寺を後にした。
 寺の外に出ると辺りはすっかり暮れており、しばらく暗い洞窟にいたせいか、夕日が眩しく感じられた。
 これ以上の旅は明日の朝にする事にしてガルシア達は一旦デリィ村へ帰る事となった。
「ねえ兄さん」
 デリィ村へ行く途中の道でジャスミンが訊ねた。
「これから先どうするの?」
 ガルシア達の最大の目的はやはり灯台を解放する事である。ヴィーナス灯台であの様な異変が起こらなければサテュロスが用意した船で西のジュピター灯台へ行くはずだった。
 しかし、異変によってガルシア達は島ごと海に流され、船は藻屑と化してしまった。そこで彼らにはジュピター灯台へ行くために何としても船が必要だった。
「そうだな…」
 何とかして船を手に入れなければならない。しかし、デリィ村の船はほとんど津波で破壊されてしまっている。どこか別の町で船が手に入ればいいのだが。
 ガルシアは思い出した。今日の昼間にデリィ村で薬草を売っていた男から近くに町があると聞いている。
 今行くのは危険、男はそう言っていたが、町ならば船が手に入る可能性があった。
 ガルシアは決めた。
「マドラへ行こう」