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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 9

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第34章 前夜、よみがえる悪夢


 イズモ村の村はずれにひっそりと佇む一軒の家があった。
 里から離れ、林の中にたった一軒だけ家が建っている。里の方の家に比べると意外と大きい方である。ウズメの屋敷程ではないが、雰囲気はどことなく似ている。
「着いたよ、ここが私の家だ」
 リョウカは言った。
「へえ〜、なかなかいい家じゃねえか」
 ジェラルドは感嘆した。
「でも何でこんな村はずれにあるんだ?人のいる所に建てればいいのに」
 ロビンは思い言った。確かに、これほど里から離れていては買い物をしたりするのが大変そうである。事実ここまで来るのに多少時間がかかった。
「まあ、そうなんだが、どうやら先祖に人嫌いな者がいたようで、その人が建てたらしいんだ」
 その昔、リョウカの曾祖父に当たる人物が里で皆と普通に過ごしていたが、ある日村の者に嘘をつかれ、酷い仕打ちを受けたという。それ以来その人は人間を信じられなくなり、こうして人里離れた所に住むことにしたのだった。
「それ以来祖父、父、そして私達の三代に渡って住み続けてきた、というわけだ」
 リョウカは一通り説明した。
「ここに家を建てたやつは相当堅物な爺さんだったんだろうな」
 ジェラルドは言った。
「でも自然がいっぱいでいい所じゃないですか」
「そうですよ、住めば都と言いますし、場所なんて関係ないですわ」
 イワンとメアリィはここが気に入ったようだった。
「じゃあそろそろ入ろうか」
 リョウカを先頭に一行は家に向かった。
「ただいま帰りました。リョウカです」
 広めの玄関でリョウカが言った。すると奥の方から家主が姿を現した。
「え!?」
 ロビン達は驚いた。その家主の姿に、である。
 容姿が非常に見覚えのある人物だった。ある日村を抜け出し、ガルシア達と共に灯台を灯そうと暗躍していた人物であり、リョウカとの戦いにより海へと消えたあの人物、シンである。
 もちろん、シンがここにいるはずがない。実際には生きているのだが、ロビン達は死んだものと考えている。本当に似ている人物である。
 現れた家主はシン程ではないが長身で、肩まで掛かる長髪だった。丈の短い着物を着ており、露出された脚は細く、長い。
 女性らしい腕組みの仕方をし、それによって豊満な胸が更に強調されていた。かなり大人の色気漂う女性であった。
「あら、久しぶりのお客様かと思ったら、あなただったのね…」
 家主の女性は言った。とても物静かな感じの口調であり、容姿のそっくりなシンとは対照的だった。
「お久しぶりです。ヒナ姉様」
 リョウカは頭を下げた。
「この人がリョウカの…」
 ロビンは驚きのあまり声が出てしまっていた。
「あら、そっちの人達はお友達?村では見ないわね」
 ヒナはロビンの声で彼らに目を向けた。
「ああ、こちらの者達は長い間共に旅してきた仲間です」
 リョウカは説明した。アンガラ大陸のゴマ山脈でロビン達と初めて出会い、そしてそこから北のイミル村でメアリィと出会い、そして共に旅を始めた。大体の経緯を話した。
「彼らは世界中にある灯台を解放しようとしている者達と対立し、先日倒しました。今はバビという方に頼まれ、レムリアという場所を探して旅をしております」
「そうだったの、素敵なお友達と出会ったのね、リョウカ」
 ヒナは微笑んだ。微笑むその表情もとても美しかった。
 ヒナはロビン達に視線を向けた。その視線を感じたロビンは慌てて自己紹介した。
「あ、すみません、申し遅れました。僕はロビンです」
「!?、あなた…」
 ロビンを見て、ヒナは驚いた。何かこの世のものとは思えないものを見たかのような驚き方である。
「あの、どうかしましたか?」
 ロビンは訊ねた。
「いえ、ごめんなさい。何でもないわ」
 続けて仲間達も次々に名乗った。
「オレはジェラルドだ」
「ボクはイワンといいます」
「イミルのメアリィですわ」
 ヒナは笑顔で自己紹介に応じた。続いてヒナが名乗った。
「あたしはヒナ。もう聞いてると思うけどリョウカのお姉さん、ふふ…、お姉さんって年でもないわね。いいのよ、オバサンって呼んでくれて」
 ヒナの年齢は27歳である。容姿も端麗でかなり美しく、若く見える。とてもオバサンと呼べる人とは思えない。
「いや、そんなとんでもないですよ!」
 ロビンは慌てて否定した。
「本当にいいのよ。何故ならイズモ村では15歳までに結婚しないとオバサンって呼ばれる決まりがあるから」
 ヒナはいたずらっぽい笑顔を見せた。
「姉様、デタラメを言わないでください!それでは私までオバサンになってしまいます!」
 珍しくリョウカが突っ込んだ。
「ふふふ…」
 ヒナは楽しげに笑っている。物静かで弟のシンとは対照的な性格だが、冗談を言うところはその容姿並みに似ていた。
「さ、立ち話もなんだし、お友達を中に案内しなさい。リョウカ」
 ヒナは家の奥へ進んだ。
 リョウカに促され、ロビン達はヒナの家に上がった。彼らは居間へと案内された。すっかり日も暮れて辺りは暗くなっていた。リョウカは蝋燭に火を灯した。
「みんな、今夕食の準備をするからそれまで何もないけどくつろいでてね」
 ヒナは竈の前で言った。
「あ、姉様、私も手伝います」
 リョウカも竈の前に向かった。
「いいわ、あなたも旅から戻ったばかりなんだから休んでなさい」
「でも…」
「いいから、あたしに任せておきなさい。何年あなたの母親代わりしてると思ってるの?」
 お友達とお話ししてなさい、ヒナはリョウカを居間へ戻らせた。
 仕方なくリョウカは居間へ戻り、卓の前に座った。ざくざくと野菜を切る音が聞こえていた。
「なあ、リョウカ」
 ロビンは呼んだ。
「シンの事、どうする?」
「…ちゃんと話すさ」
 しかし、まだ心の準備がしたかった。ヒナもとりたてて聞こうとはしてこない、リョウカが帰って来た本当の意味を。
 皆が話している所でリョウカは一言も言葉を発しなかった。ただひたすらに全てを姉に話す覚悟を決めようとしていた。ロビンはそんな彼女の様子を心配そうに見ていた。
 それから程なくして夕食の準備が出来た。
「お待ち遠様、お口に合うか分からないけど、遠慮せずどうぞ」
 運ばれてきた料理はあまり見慣れないものだった。まず、主食は米であり、ロビン達にとってあまり縁のないものだった。おかずに川魚と汁物と全体的に質素な感じだった。
「今海の魚がなかなか穫れなくってね、川魚しかないの。ごめんね」
「あ、いえ、気にしないでください。それじゃ、頂きます…」
 ロビンは料理を食べようとスプーンやフォークを取ろうとした。しかし、そのどちらも無く、代わりに二本の短い棒状の物があるだけだった。
「ん?これどうやって使うんだ?」
 ジェラルドはその棒を握り締め、使い方が分からず眉をひそめていた。
「あら、あなた達箸を使ったことないの?」
 この棒状の物はヒナによるとハシと呼ぶらしい。スプーンのように掬って使うものではなく、食べ物を割って挟んで使うものだった。
「ほら、こうやって使うのよ」
 ヒナは左手の指の間に挟むようにして持った箸を先端をカチカチならしながら使い方を教えた。