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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 9

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 それから先も慎重な行動で見張りに見つからないように進んだ。『リリース』でロープを飛ばして見張りの上をこっそりと渡ったり、見張りの頭上から木箱を落とし、その中に閉じ込めたりもした。
 番犬のいる道までもあり、そこは偶然食べ物を持っていたシンがそれを与えることにより犬を黙らせた。
 様々な手段で見張りをかわし、ついにミング山脈も出口にさしかかった。辺りは夕焼けに暮れていた。
「よし、山はもう越えた。キボンボへ向かおう」
 ガルシア達がキボンボへ向かうべく歩き出した途端、そばの茂みから魔物が現れた。
 山の猛獣、ワイルドゴリラと小さな妖精のピクシーが二匹の合計三匹の魔物が立ちふさがったのだ。
「やれやれ、こいつらも見張りか?」
 シンは武器を取った。
「どちらにせよ、倒さなければ先へは進ませてもらえそうにないな」
 ガルシアはシルバーブレードを抜き、シンの隣に立った。
「向かってくる敵は必殺、それも忍者の仕事か。面白い、精々楽しませてもらおうぜ、ガルシア!」
「ああ」
「ちょっと待ちなさいよ!」
 ガルシアとシンは後ろを振り向いた。シバとジャスミンが手に杖を持って構えていた。
「あなた達だけで面白そうな事始めないでよ!」
「私達も戦うわ、兄さん!」
 心強い、とシンは口元を吊り上げた。
「そういえば、スクレータは?」
 ガルシアはそれとなく探すとスクレータは近くの岩陰に隠れて様子を窺っていた。
「忘れたら怒られるもんな」
 シンは笑った。
「そうだな、だが隠れていてもらった方が戦いやすい」
「それもそうだな」
 魔物達は痺れを切らしたように唸り声を上げた。
「やつらも待ちきれないみたいだな」
「ああ、みんな、一気に片付けるぞ!」
「おお!」
 掛け声と共にガルシア達は相手に向かっていった。ガルシアとシンはワイルドゴリラに、ジャスミン、シバはピクシー達に向かった。
「たあ!」
 シバはピクシーに目掛けて杖を振るった。しかし、ピクシーはするりと杖をかわし、シバの周りを馬鹿にするように飛び回った。
 シバがピクシーを睨むとピクシーはきゃははと笑っていた。
「何よ!あったま来ちゃうわね!」
 シバは怒りに任せて杖を振り上げピクシーに向かった。するとピクシーは両手をシバに向け、詠唱した。
『プラズマ!』
「え!?」
 眩い閃光とともにシバの目の前で落雷した。シバはすんでのところで飛び退いた。
――あいつ、私と同じエナジーを――
「シバ〜!」
 ジャスミンが涙声で駆け寄ってきた。後ろからもう一匹のピクシーにつつかれている。
「助けてぇ!」
「何やってんのよ!あんなのに叩かれたって痛くないでしょ!」
「だぁってぇ〜…」
 シバは杖を振り回してピクシーを追い払った。これによりピクシーが二匹とも並んだ。さらに厄介な事になってしまった。二匹そろってエナジーを使われたら結構手痛い。
「いい?ジャスミン、よく聞いて。奴らすばしっこくて杖じゃ叩けないわ」
「じゃあどうするの?」
「エナジーでいきたい所だけど、奴ら私と同じエナジーを持ってるのよ。一緒に使われたら押し負けるわ」
 じゃあどうしようもないではないかといった様子でジャスミンがシバを見返していると、シバはニッとした。
「大丈夫、力押しするばかりが風のエナジーじゃないわ」
 シバは考えた作戦をジャスミンに耳打ちした。
「じゃ、私の合図で頼んだわよジャスミン!」
 言うとシバはピクシー達に杖を振り上げて向かった。ピクシー達は返り討ちにすべく手を向けた。
――来たわね!――
『イリュージョン!』
 シバは先手を打ってエナジーで霧を作り出した。霧は一瞬にしてピクシー達を包み込み、目眩ましとなった。
 霧に包まれ、ピクシー達からはシバ達の姿を捉えることができなくなった。エナジーを出したシバにはピクシー達の姿は見えるが、後方のジャスミンにはピクシーと同じく霧の中は見えない。
――ジャスミンにだけ伝えるのよ…――
 広く及びそうな力をうまく抑えつけてシバは再度エナジーを発動した。
『イマジン!』
 シバから光の球が発生し、ジャスミンに向かって飛んだ。それがジャスミンに当たると一瞬強く光を発した。
 ジャスミンはそっと目を開けた。辺りは虹色に輝き、真実の空間が広がっている。霧の向こうもはっきりと見える、霧の向こうでうろたえた様子のピクシー達を見ると、どうやら真実が見えているのは自分達だけであるようだった。
「見える、見えるわシバ!」
「今よジャスミン!」
 シバは合図を出した。心得たとばかりにジャスミンはエナジーを発動した。
『フュー…』
 詠唱しようとした瞬間、ジャスミンは自分の中に今までとは違う何かがあるのに気が付いた。どんなものなのかはすぐに頭の中に浮かんだ。
 ジャスミンはそれを高らかに詠唱した。
『フュームワーム!』
 これまでの『フューム』とは違う、敵に向かって進む炎のドラゴンの顔のようになった先端部分が一回りほど大きくなっていた。
 ピクシー達はドラゴンに噛み砕かれるように炎の中で雲散霧消していった。同時に霧も吹き飛んだ。
「やったぁ、上手くいったわね!」
 シバとジャスミンは嬉しそうに抱き合った。
「あ、そうだ、こうしちゃいられない。兄さん達を助けなきゃ」
「誰を助けるんだ?」
 ジャスミン達の後ろでガルシアとシンが笑っていた。
「終わったみたいだな」
「シン、兄さん、えっ、魔物は?」
「倒したさ、とっくの昔にな」
「あんな奴瞬殺だぜ瞬殺!」
「じゃあどうして助けてくれなかったの?」
 二人が見事な戦いをしているのを見て、最後までどんな戦いをするのか見てみたかったと言う。もっとも、危なくなれば助けるつもりではあったが。
「『イマジン』をあのように使うとはな、驚きだ」
「ほんと、シバにはセンスがあるな!」
 シバばかりが誉められていて、ジャスミンは面白くないといった様子でそっぽを向いた。
「…私だって魔物をやっつけたのに」
「いやいや、ジャスミンもよくやった。とっさに新しいエナジーを手に入れたようだしな」
 ガルシアが言うと、ジャスミンは目を輝かせた。
「そうなのよ兄さん!また前みたいに感じたことのない力を感じて、それでね…」
「まあまあ、その話はまた今度…」
 ガルシアは両手を前に出して苦笑した。そして辺りを見渡した。すっかり日も暮れ、辺りは暗闇に包まれ始めている。黒魔術の儀式は今夜行われるとキボンボの戦士が話しているのをガルシアは小耳に挟んでいる。間も無く儀式は開始されることであろう。
「もうすぐ儀式が始まってしまう。急ごう」
 ガルシア達はキボンボ村へ急いだ。