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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 10

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 それでもまだリョウカには抵抗があったが、遂には帰る事に同意した。
「それじゃ気をつけてね。あたし達もすぐに行くから」
 ヒナに見送られるようにロビン達はその場を発とうとした。
――地の力を操るものよ――
 ふとどこからか声がし、ロビンは周りを見回した。
「どうしました?」
 イワンが訊ねた。
「いや、今なんか声が聞こえたような気がして…」
 尚も見回しているとイワンは不思議そうな顔をした。
「特に何も聞こえませんけど」
 声はもう聞こえない、やはり空耳か、ロビンは思った。
「ごめん、それじゃ行こうか…」
 歩みを進めようとすると再びロビンにだけ声がした。
――地の力を操り、『群雲』を使うものよ。オロチの元へ。さすれば汝に力を与えん…――
「ロビン…?」
 ロビンは足を止め、誘われるようにオロチの石像へと歩み寄った。次の瞬間エナジーの波動が発せられると、周囲が不思議な空間となった。虹色の霧が発生し、仲間達は皆固まったように動かない。動くことができるのはロビンだけであった。更に周りの音が全く聞こえなくなった。吹き抜ける風の音さえしない。
――よくぞオロチを止めてくれた。群雲を持つ者よ――
 オロチの石像の前に光が集まっていく。最初は小さな球が次第にロビンの背丈ほどになり、人型をなしていく。
 人型となった光から、次第に人の姿が明らかとなっていく。軽く癖のついた長い黒髪、凛々しくつり上がった目、細身に見えて筋肉質な体の男が現れた。
「あんたは?」
 ロビンは男に訊ねた。
――私の名はミコト。太古の昔オロチと戦い、そして死んだ――
 この人物がこれまで何度か耳にしてきたミコト、ロビンは思った。たった一人でオロチと戦い、そして封印した伝説の戦士とあって、さぞ逞しい巨躯の男であるのだろうと想像していた。しかし、実際の所背丈はロビンと大差なく、美顔の好青年でかなり意外だった。
「あんたがミコト…」
――知り及んでいたか、まあいい、お前の名は何という?――
「オレはロビン」
――ロビン、か。もう会うことはないだろうが、覚えておくとしよう――
「ミコト、あんたもう死んでるんだろ、どうしてここにいるんだ?」
 ミコトはオロチとの戦いで命を犠牲にしてオロチを封印した。その後すぐに傷が元で亡くなっている。死んだはずの者がこの世界にいるのはおかしい事なのである。
 ロビンの問いに、ミコトは答えた。
――私は分かっていたのだ。必ずオロチは復活する、と…――
 長い年月、オロチはガイアロックにいたせいで不死身となってしまった。そのおかげでオロチを止めるには封印するしか方法はなくなった。そのため激闘の末、ミコトは自身の命を削り、封印の呪法でオロチを封じたのだった。
 しかし、その時すでに致命傷を負い、瀕死のミコトの生命力ではいずれまたオロチは何らかの要因によって復活を遂げてしまう。それを心配するあまりミコトの魂はこの場へ止まってしまったのである。そして数千年の時をオロチと共に過ごしてきた。
――いつか群雲を持ち、復活を遂げたオロチと戦う者が必ず来ると、私は思っていたのだ。そしてその日は来た。私の子孫が群雲を取って戦うことはなかったがな…――
 スサはガイアの剣を持たなかった。しかし、ミコトにとってはそれでよかったのである。ミコトは自分の子に戦いに身を置く事を望まなかった。スサがミコトのように群雲を持って戦うことをしなくて本当によかった、ミコトは思うのだった。
 突然、ミコトの体が透き通り始めた。
――オロチも封印され、私はもうここに在る必要はなくなった…――
「そうか、ならもう安心して逝くといい」
――そうだな…――
 ミコトはロビンに手を貸すように言った。ロビンは従い、ミコトへ手を差し出した。
 ミコトがロビンの手を掴むと掴む手が輝きだした。すると二人の体が宙を舞い、ミコトから飛び出す光の球が軌跡を残し、ロビンを包み込んでいった。
 ロビンを包む光が一際眩しく輝くと二人の体は地面へと降り立った。
 ロビンの手が輝きを放っている。
「これは…?」
――その身を砂と変え、自在に動ける力だ。どのように使うかはお前次第だ…――
 ミコトの体が更に透き通っていく。
――もう、時間だな。さらばだロビン、オロチを討ってくれたこと、感謝する…――
 ミコトは光の粉を撒き散らしながら完全に消失した。時を止めていた力も消え、空間はもとに戻っていった。
――さようなら、ミコト…――
 ロビンが拳を握ると光は消えた。
 全ては終わった。太古の昔のように、幾人の者が死ぬことなく、魔龍は再び眠りに付いた。