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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 10

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「いや、もうお前のものだ、持って行ってくれ。オレからのせめてもの礼だ」
 じゃあな、言うとスサは村へと駆けだしていった。
「スサ!」
 もう追いかけようにも遠く、追い付けそうもなかった。
「放っときな、感謝の印なんだろ?ありがたく貰っとこうぜ」
 ジェラルドは言った。
「う〜ん…」
 ロビンはまだ複雑な気分だった。しかし、もうスサはいなくなり、村に戻って返すのもスサの気持ちを裏切るような気になり、受け取ることにした。
 徐に刀を鞘から抜いてみた。その刀身は真っ直ぐであり、刃は眩いばかりの輝きを放っていた。
 最初手にした時に感じた力は今もある。秘められた力があるのは確かであった。
 ロビンは鞘にしまった。
「イワン、これは君が持っててくれ」
 ロビンは刀を差し出した。
「どうしてボクが?」
 イワンは刀を受け取らずに訊ねた。
「君の剣はオロチとの戦いで壊れてしまっただろ?それにこの刀すごく軽いし、前の剣と同じように使えるだろう」
 ロビンは既にガイアの剣を持っており、ジェラルドは大剣とアサッシンソードを持っていて、メアリィはそもそも剣を扱わない。丁度イワンは武器を持っておらず、菊一文字を持つのには都合がよかった。
「分かりました…」
 イワンは刀を受け取った。持ってみると見た目よりもだいぶ軽く、イワンの細腕でも片手で振れそうだった。
「すごく軽いですね、これ」
 イワンは刀を上下に振ってみた。
「なかなか様になってるじゃないか、もう壊すんじゃねえぜ?」
 ジェラルドは言った。
「そろそろ行こうか…」
 言うとロビンが最初に船に乗り込んだ。後から仲間達も続く。
 碇を上げ、動力を発動させると、船はゆっくりと進み始めた。
 徐々にジパン島が小さくなっていく。オロチを再び封じ、平和を取り戻したジパン島はどこか明るく見えた。
 オロチをめぐって兄妹が戦い合っていた。
 オロチの脅威から村を救うため、掟を破ってまで村を飛び出した兄。しかし、その行動そのものがオロチ復活を助長する仇となってしまった。
 その兄を止めるべく、討滅の使命を受けたのはその妹であった。ずっと慕っていた兄が村に仇なそうとしている事を聞き、一度はその兄に憎しみを持った。しかし、その兄に危機が迫った時、妹は自らの持つ兄への愛を思い出した。
 それは兄もまた同じであった。大切な妹に自らを殺めさせぬよう、兄は自ら身を投げた。それから兄の心を汲み取り、妹は全ての元凶であるオロチを戦った。そして再び封印することに成功した。
 妹の、リョウカの使命は終わった。全てはオロチの脅威を取り去るため、目的は同じであったはずなのにすれ違い、兄妹で戦わなければならなかった、そんな悲しい使命は終わりを告げたのだった。
 船は進み、陸の見えない海原へ差し掛かった。
 ロビン達は皆一様に寂しげな様子で甲板に立ち尽くしていた。
「やっぱ、寂しいもんだな…」
 ジェラルドは洩らした。
「本当に、これでよかったのでしょうか…」
 メアリィは言った。
「リョウカ自身が決めた事です。ボク達にはどうしようもないですよ」
「イワンの言うとおりだ。もうオレ達の旅に、リョウカが来る必要はないんだ、これでいいんだよ…」
 口ではこう言っているイワンとロビンであるが、やはり寂しさは隠しきれていなかった。
 それからさらに沈黙が流れた。
「全く、やはりお前達は私がいなきゃ駄目みたいだな!」
 ふと、ロビン達の頭上から声が降りかかった。彼らは驚き、辺りを見回した。
「あそこ!」
 メアリィが指差した。船室の上、物見の上に小袖の着物に袴を着けた真紅の髪をした少女が立っている。
 少女は結構な高さのある物見の上から飛び降りた。かと思いきや飛び降りた瞬間にその姿は消え、一瞬のうちにロビン達のそばに姿を現した。
「リョウカ!?」
 皆と別れ、村にいるはずのリョウカがそこにいた。
「全く、お前達が遅いものだからつい寝てしまったじゃないか」
 結構長い間あの物見の上で眠っていたという。
「リョウカ、お前?」
 ジェラルドがあることに気が付いた。ほぼ同時に皆も気付いた。
 腰元まであったリョウカの髪が、今は背中辺りまでしかない。元が結構な長さであったぶん、かなり短くなった印象を受けた。
「ああ、これか、邪魔だったからな。バッサリ切ったよ」
 リョウカは髪を掴みながら言った。どこか冗談を込めているように聞こえた。
「それは違いますわ。女性が髪の毛を切るなんてはっきりとした理由があるはずですわ」
 メアリィは見抜いていた。
 かなわないとばかりにリョウカはふうっと息を洩らし、本当の理由を話した。
「私は、死んだんだ」
     ※※※
 人里離れた林の中、木の葉の間から少し欠けた月の明かりが照らしていた。
 女が二人、月夜の林に立っている。一人は月明かりに真紅の髪を照らし相手に背を向け、もう一人は腕を組み、静かに目を閉じている。
「どうしても行くの?」
 ヒナが沈黙を破った。しばし間を開けた後、リョウカは答えた。
「私は、行かなければなりません。まだ私にはやらなければならないことがあるのです」
「…それは、レムリアとかいうのをロビン達と探すことかしら?」
 リョウカは首を横に振る。
「確かに、私も頼まれたことですが、そうではありません」
 ヒナは訝しげに眉をひそめた。
「じゃあ、一体どうして?」
「それは…」
 リョウカは全てを話した。
 オロチ討滅の前夜、ふと目が覚め、そのまま寝付けなくなった。気分転換にと外を歩いていた。そこへ偶然にロビンとヒナが一緒にいるところを目撃した。
 何やら話している様子だったが、少し遠くて内容を聞く事はできなかった。そこで少し近づき、物陰に隠れながら二人の様子を見ていた。その時突如として二人は戦いを始めた。
 事態が飲み込めず、リョウカはしばらく呆気にとられて傍観する事しかできなかった。
 エナジーを使った攻防や、殺気を込めて斬り合っている様子から、剣の稽古ではないことは容易に想像が付いた。
 リョウカは止めようとした。しかしその瞬間、ヒナは閃光とともにロビンの周りを駆け巡った。彼女の必殺技、『瞬星刃』であった。
 ヒナの強力な攻撃にロビンは瀕死の傷を負った。その時がリョウカが二人を止める最後の機会であった。
 急ぎ二人の間に入ろうとした。しかし、次の瞬間起きた変化がリョウカの足を止めた。リョウカにとって覚えがある気配を感じた。
 おぞましい色の光に包まれ、ロビンは受けた傷を回復していった。コロッセオの戦いの時、リョウカを完膚なきまでに叩きのめした奴が表れた瞬間だった。
 血の色に染まった眼光を見た瞬間、リョウカに恐怖が襲った。今出れば自分まで殺される、そんな思いがリョウカを止めてしまった。
 戦いは再び始まった。先ほどまではロビンを圧倒していたヒナが、その時はロビンに圧倒されていた。
 そして戦いは終わった。すんでのところで正気を取り戻したロビンによってヒナは命を救われた。
 リョウカ自身も安堵していた。その時になって、胸の高鳴りに気付いたほどだった。
 それからしばらくの間二人の様子を見ていた。その時だった、リョウカが知らずにいた事実を耳にしてしまったのは。