二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 10

INDEX|19ページ/19ページ|

前のページ
 

――リョウカは、人間じゃないわ
 全くもって理解できなかった。自分のこと、自らが捨て子であった事は知っていた。だが、人間ではないとはどういうことなのか、ヒナの言うことが全く分からなかった。
――リョウカは、あの子は…神
 次にヒナが告げたのはリョウカが神にも等しい存在だと言うことだった。
 リョウカは全て話した上で、ヒナの言っていた事の意味を問うた。自分が人間ではなく、神だと言うのはどういうことなのか。
「まさかあそこにあなたがいたなんてね…」
 迂闊だった、という様子でヒナは目を伏せた。ロビンとの死闘の後で疲労していたとはいえ、リョウカの気配が分からなかったのは本当に迂闊だった。
「教えてください姉様、私が人間ではないとは一体…」
「言葉そのままの意味よ。あなたは人間じゃなく、神様…」
「ですから、それを教えてほしいのです!どうして…」
「リョウカ…」
 ヒナは静かに、しかし、語気を強めて言った。一旦、リョウカは黙った。
「フジ山であなた一回倒れたわね」
「はい…」
「その後気が付いたらいくつか新しいエナジーを使えるようになったでしょ?」
 それは事実である。『ブラストヴァルカン』、『スパイアストーン』、『レイデストラクト』、『チルドマウンテン』と最大級のエナジー、それも全ての属性である。
「普通エナジーは自分の属性しか使えない、あなたも知ってるわよね?」
 リョウカは頷いた。自分でも常々不思議に思っていた事だった。どうして様々なエナジーを使うことができるのか、自分が異質なのではないかとも思っていた。
「神様でもないと色んなエナジーなんか使えっこないわ。それにあなたの使うエナジーは威力がとても高いしね」
「しかし、それだけで…」
「それだけじゃないわよ」
 ヒナは告げた。
「あなたも気付いているんじゃない?自分の中に別な自分がいるって」
 リョウカは驚き目を見開いた。そういった感じのものはこれまでに何度か夢の中に出てきていた。そしてよくは聞き取れないが、耳慣れない名で自分に呼びかけてくるのだ。
「どうしてそれを…?」
「フジ山で別なあなたが表れていたわ。まるで昨日のロビンみたいにね」
 いえ、ヒナは言い換えた。
「ロビンと違って、あっちが本当のあなたなんじゃないか、あたしは思うの…」
 リョウカの中にいる何かが本当の姿、それはつまり今ここにいる自分が偽りであることに他ならないと、ヒナは言うのだった。
「それを知っちゃったんならもうあなたはここにいちゃいけないわね…。行きなさいリョウカ、本当の自分を見つけるのよ」
「姉様…」
「けど、分かってるわね。村を出ることがどういうことか…」
 リョウカは全て分かっているかのように、何も言わず腰の刀をヒナへと投げ渡した。
 ヒナは刀を受け取ると、構えを取った。
「リョウカ、死んでもらうわ」
 リョウカはそっと目を閉じた。同時にヒナは一瞬にして距離を詰めた。
 すれ違いざまに刃が放たれた。月明かりの中に赤い何かが舞う。
 二人は背中合わせとなっている。するとパサっ、と音を立てて何かが地面に落ちた。
 それと同時にリョウカは目を開いた。
「これであなたは死んだ…」
 ヒナは刀を納めた。
 ヒナが斬ったもの、それはリョウカの真紅の髪であった。背中から下の髪を寸分の狂いなく切ったのだ。
「姉様…」
 リョウカは短くなった髪を風に揺らした。
「あたし、これで一人ぼっちね…」
 ヒナは手から刀を零し、地に膝をつき、静かに嗚咽を洩らし始めた。
 肉親は死に、そして今掟により義妹とも二度と会うことは叶わなくなった。
「姉様、ごめんなさい。姉様…!」
 ヒナの震える背中を抱き、リョウカも涙を流した。二人共に、二度と会えぬ永遠の別れに涙するのだった。
     ※※※
 リョウカは全てを話し終えた。
「私は本当の自分を見つけ出す。それが私自身の使命」
「見つけ出して、それで自分がやっぱり偽りの存在だったら、受け止められるのか?」
 ロビンは訊ねた。
「すぐには無理かもしれない、けど、きっと受け止める。全てを、受け入れてみせる…」
 決意を持った瞳でリョウカは答えた。それ以上の事はその瞳が告げていた。
「おっと、そう言えばまだ名前を言っていなかったな…」
 リョウカは言った。ロビン達は一瞬わけが分からないと言った様子になった。
「おいおい、一体何言ってんだよ…」
 ジェラルドは苦笑した。
「お前達が知っているリョウカはもう死んだんだ、私は違う…」
 リョウカは名乗った。
「私の名はリョウカ。討滅者とは別の、ただのリョウカだ」
 リョウカの意図を汲み取り、ふ、と笑みをこぼすとロビンも同じように名乗った。
「初めまして、リョウカ、オレはロビン。よろしく」
「ボクはイワンです」
「メアリィですわ」
 二人も同じ様にした。
「ったく、しょうがねえな…」
 皆からの視線を受け、ジェラルドも頭を掻きながら名乗った。
「オレはジェラルドだ。覚えときな、って、やっぱ変な感じだぜ…」
 お互い知っている相手にわざわざ名乗るのはやはり釈然としなかった。
「けどよ、自分を見つけ出すって、実際何するんだ?」
 ジェラルドは訊ねた。
「私にも分からない、でも、みんなと一緒に旅していれば、きっと何か分かるはず。そう、きっと…」
 それでも難しい顔をしているジェラルドにリョウカは悪戯っぽく笑って彼の頭を叩いた。
「そんなに難しく考えるな、ジェラルドらしくない。その内分かればいいんだ!」
「いって!」
 ジェラルドは頭を抑えた。意外と力強く叩かれたので、もしかしたら瘤ができたかもしれない。
 そんなジェラルドに目もくれず、リョウカはロビンを見た。
「さあ、ロビン。どこに行くか決めてくれ、私はどこへでも付いていくぞ」
「そうだな…、どうしようか?」
 レムリアを探す旅はまだ始まったばかりであった。それどころかこの大イースト海に何があるのか、右も左も分からない状態だった。
「南に行ってみてはどうでしょう?」
 メアリィが提案した。
「南か…」
 ジパン島はウェイアードの北東に位置しており、これ以上北に行っても何もないような気がした。
 船に置いてあった海図を見てみると、ここから遥か南にガラパス島があるのが分かった。
「そうだな、特に行き先もないし、南に行ってみるか」
 こうして、新たな行き先は決まった。
 リョウカの悲しき使命、そして魔龍オロチとの戦いは終わった。志新たなリョウカを迎え、ロビン達の旅は再び始まる。