二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

destin ⑤

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 


審判の旗が、また平次の方へ上がった。
同時に観客の歓声も上がる。

「すげーな、ったく」

ひとりで試合を観戦していた新一は、思わず呟いた。
試合が始まってから数えて5連勝目。
強いとは聞いていたが、これほどまでとは知らなかったのだ。


だが、圧倒的に強い男がもうひとり―――そう、ロロノア・ゾロだ。

平次は有効勝ちが多いのに対し、ゾロは全て一本ストレート勝ち。
しかも、そのほとんどが30秒足らずの瞬殺だった。
さすがは世界二位の実力者、格が違う、と新一はため息を漏らした。

トーナメントである今回の試合では、幸いにもゾロと平次が一番離れた組だったので、二人が決勝に進まない限りは当たらない。
もちろん、二人が勝ち進めばの話なのだが、おそらく決勝戦はゾロと平次になるだろう。

二人の雄姿を観ながら、早くも決勝戦が待ち遠しい新一だった。



準々決勝以降を残し、ここで昼食となる。

頭に手ぬぐいを巻いた平次とゾロが新一の方へ寄ってきた。
ゾロはほとんど黒に近い深緑色の布を頭に巻き付けている。

「工藤、ひとりやったんか?」
「あぁ」
「なんや、先輩の連れさんと一緒かと思っとったで」
「そういえば、ロロノアさんのお連れさんが弁当用意してくれるって…」
「あぁ、今取りに行ってる」

新一がゾロの方に視線を向けると、お面と竹刀を壁に立て掛けながら、ゾロは駐車場の方を指差した。
平次も豆絞りを取りながらゾロに質問する。

「そや、なんでお弁当まで用意してくれはったんですか?」
「あー、それはな、俺の連れがコックだからだ」
「「コック?」」

新一と平次は口を揃えて首を傾げた。
ゾロは続ける。

「レストラン『バラティエ』って知ってるか?」
「あ、知ってます。都内でもかなり有名で、芸能人御用達の人気レストランですよね?」

俺まだ行ったことないんですけど、と新一が呟く。
平次も頷いた。

「そのバラティエがどないしたんですか?」
「俺の連れがそこのオーナーの孫でな。料理の腕に関しては超一流なんだ」
「へぇー」
「…あれ?でもオーナーって………」

新一は首を傾げる。

フランス人じゃなかったっけ。
以前、雑誌に特集が組んであり、厳つい顔のフランス人オーナーが載っていた記憶がある。
それと同時に、新一にはもうひとつ引っ掛かることがあった。

あの人もフランス人、だよな。


――脳裏に浮かんだのは、金色の髪を靡かせ、いつも楽しそうに料理をしていた、あの後ろ姿。
驚くほど見事な料理を両腕に抱え、笑顔で振る舞ってくれた―――

もちろん、彼が今日本にいるわけがない。
遥か遠くにいることはわかっているが、思わず、新一は昔の記憶を辿っていた。


「口はうるさいが料理は絶品だ。楽しみにしとくといい」
「ホンマですか!楽しみや~、な、工藤」
「え?あ、あぁ…」
「お、来たみてぇだ」

ゾロの視線の先に、自分の頭より高く積まれた弁当箱を抱えた人が見えた。
弁当箱のせいで顔はまだ見えない。
心なしかフラフラしている気がした。

「あー、アレ危ないんとちゃいます?前見えへんし」
「器用だから大丈夫だろ」
「せやけど……」

ゾロの返答に苦笑しながら、どこまでも世話焼きな平次は、男に駆け寄った。
新一も行こうかと思ったが、あと5メートルほどだったので、まぁいいかとその場に留まる。

「手伝いましょうか?………って、あーっ!」
「あ、ありが………あっ!?テメェはさっきの!」

手を差しのべた平次が何かに驚き、突然大声を上げた。
続いて男も短く叫ぶ。
新一は何事か、とゾロと顔を見合せ、二人に近づいた。

「日本語喋れとるやん!!」
「なんでお前がいんだよ?!」

弁当箱が落ちないようしっかりと抱え、男と平次は互いに驚きの声を上げる。

「なんだ、お前ら面識あったのか?」

ゾロがそう尋ねると、平次は勢い良く顔を左右に降った。

「ちゃいます!」
「コイツがさっきぶつかってきたんだよ」

相変わらず顔は見えないが、平次と男の話からすると、自動販売機でぶつかった外人さんがこの人なのだろう。
新一は、一応確認の意味で平次に聞いた。

「服部、もしかしてさっきの外人さん?」
「そや。アンタ、日本語通じとるやんけ!」
「だからなんだよ」

いがみ合う二人をよそに、ゾロは紹介する手間が省けたな、と呟き、男から弁当を受け取る。
その時初めて、新一は男の顔を垣間見た。


「えっ………」

あまりの驚きに、新一はしばし言葉を失った。
揺れる金髪、スッと通った鼻筋、透き通るように碧い瞳。

「…さん…にい………」

昔の記憶より遥かに美しく成長した彼が、今まさに、目の前にいる。
その横顔からは、微かに懐かしさが見てとれた。

そのまま絶句した新一の様子に気付いた平次が、何事や?と声をかける。

「工藤?どないした?」
「クドウ…?……あっ!!!」

平次の言葉に反応した金髪の男も、新一の方へ目を向ける。
そして新一を見た途端、目を見開き叫んだ。

「シンイチ!!?」
「サン兄!!」
「「………え?」」

ゾロは男の口から飛び出した『シンイチ』という言葉に、そして平次は新一が発した『サン兄』という言葉に、思わず首を捻った。
まさか初対面の二人が、互いの名前を、あたかも知り合いであるかのように呼びあうわけがない。
しかし、そんなことはお構いなしに、サン兄と呼ばれた金髪の男は抱えていた弁当箱を全てゾロと平次に押し付け、新一の方へかけていく。

「わっ、危ないがな!」
「おい、コック?!」

慌てる二人の声など聞こえていないのか、男は新一を見つめたまま、感激に声を震わせた。

「し、新一、………だよな…?」
「うん。俺だよ、サン兄」

新一も、かつてないほど瞳を潤ませ、頬を上気させ、男に呼びかける。
二人は数秒間息を止め、そして勢い良く抱き合った。

「わーっ、マジでか!! J'ai rate(会いたかった)!」
「Moi aussi(俺も)!」
「「…はぁっ!?」」

いきなり抱き合い、しかもフランス語で話し出した二人を見て、目玉が飛び出るほど驚いたのは、ゾロと平次の二人。
彼らからすれば、目の前にいる新一と男の様子は尋常ではなかったのだ。


―――あのコックが、大の女好きであれほど男を嫌っているコックが、知り合い(と思われる)の男と抱擁だとっ?!
あ、ありえねぇ!!


―――く、工藤が、あんだけ他人に懐かへん工藤が、頬真っ赤にして男の胸に顔をうずめとるやとっ?!あ、ありえへん!!


呻く二人をよそに、新一と男はまだぎゅうっと抱き合ったままだ。

「こんなところで新一に会うなんて、思いもよらなかった」
「アイツから自販機の前でぶつかったっていう話を聞いて、もしかしたらって思ってたんだ。ジタンの匂いもしてたし」

新一が男の胸から顔を上げる。

「でも本当に会えるなんて思わなかった」
「だな」

嬉しそうに微笑む二人を見つめ、ようやく平次が口を挟んだ。

「あの~、状況がよう飲み込めんのやけど。工藤、そちらさんは?」

平次の問いに、新一はやっと周囲が見えてなかったのを理解したらしく、慌てて説明する。
作品名:destin ⑤ 作家名:だんご