僕→私
「おはよう!直斗クンっ」
登校中、久慈川さんに後ろから声をかけられた。
「あ、おはよう、久慈川さん」
そう返した久慈川さんは、なぜか僕の胸元をじっと見ていた。
「…あの…どうかしましたか…?」
「直斗クンさ…胸、少し大きくなったんじゃない?」
「な…?!」(いつもよりきつく縛ったのに…!)
僕は自分の胸元を腕で隠した。
「いいなあ…あたしなんか全然…」
久慈川さんはぼそぼそ言いながら、自分の胸を触っていた。
何がうらやましいというのか…!僕は毎朝毎朝苦労してるというのに…。
「…直斗クンさあ、なんで今更サラシとか巻いてるわけ?」
「…え?」
「自分のシャドウと向き合って、自分が女だって認めたんじゃないの?」
「う…で、でも…認めたからと言って…自分を変えていくのは…大変っていうか…」
もごもご言いながら、自分の心から言い訳を探し出そうともがく。
「―――ごめん。いいわけでしかないよね…」
自分でもわかってはいる。しかし…。
「…それじゃあさ、あたしが手伝ってあげるよ!直斗クン、変身プロジェクト☆」
「変身プロジェクト…?」
久慈川さんはたまに変なことを言い出す。…まあ今回は僕を心配して言ってくれているわけだし…。さすが、女の子だなあ、とつくづく思う。
「そう!一番は、制服だよ!いまだに男子用着てるし!それと、メイクとかもして女の子っぽくしたりだとかっ」
「メ、メイク…?」
久慈川さんの勢いに圧倒されている僕。間違ったことは言っていないから、抵抗すらできない。
「それとやっぱり、一番大事なものと言ったら…」
久慈川さんは一時休止した末にいった。
「胸よ」
「む…胸…ですか…?」
自分の顔が少し熱くなるを感じ、久慈川さんに聞き返してしまった。
「そう、胸よ。あるものは出さないともったいないじゃない」
「も、もったいないって…ッ」
「いいからいいから!ねっそうと決まったら、放課後にジュネス行くからね!」
「は、はあ…。あの、何のために…?」
「だからあ、直斗クン、変身プロジェクトのために決まってんでしょ!」