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Wizard//Magica Wish −13−

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………

それから、あっという間に時間は流れた。季節は移り変わり冬。長かった夏は終わりを告げ、気温が一気に低くなり雪が降り積もるようになった。

「雄吾、寒くない?」
「あぁ、大丈夫だ」

「また寒くなったのかな、マフラーしてても意味がないや」

学校の帰り道、時刻はだいたい6時ぐらいだ。私達3人は横に並列して下校をしていた。いや、正確には由真と雄吾がお互い身を寄せ合い、私は少し離れ気味に横を歩く。

二人はめでたく付き合うこととなった。

付き合い始めたのは秋のことだった。学祭中、ついに由真が思い切って雄吾に告白したみたい。そして結果はこのとおり。よかったね、由真。ついに思いが届いたんだね。

でも、現実は良いことばかりじゃなかった。

いつの間にか、由真と雄吾は二人だけの世界を作るようになり、私はその中の世界に入りづらくなっていった。いつもは毎日のように3人一緒で帰った通学路、けど今はごくまれにしか一緒に帰らない。今日だって2週間振りだ。

別に喧嘩をしているわけじゃない。

ただ、…物事は変わり続ける。

いつまでも、同じままじゃいられないんだ。


「ねぇ雄吾、もしよかったら、その…今日私の家に遊びにこない?今日も父さん仕事長引くみたいでさ…夜は誰もいないんだよね」
「あぁ…あ、でもよ…美紗は…」

「っ!いや、いいよ?何を気にしてるのさ!ふたりっきりの邪魔しちゃ悪いし、私先に帰るね!ばいばい、ふたりとも!」

「あ、美紗!」
「美紗…」

私はその場から逃げるように家へと走っていく。息を切らし、涙を流しながら…。
どうしてこんなことになっちゃったんだろう。
一体何が悪かったんだろう。

別に嫌なことじゃない。

けど、昔のままではいられなかった。

「はぁっ!はぁっ!うっ…」

玄関を開けて家の中へと入る。ブーツを無理やり脱ぎ階段を駆け上げった。
−全く、今日も営業をしくじるとは…全く情けない−
−まぁまぁ社長!いざとなれば…−
−あぁ、その件は考えている−
リビングではパパとそのパパの会社の部下がお酒を飲みながらなにやら打ち合わせをしているみたいだった。でもそんなことはどうでも良かった。

自分の部屋に入るやいなや、ベッドにダイブし枕を顔を押し付け言葉にならないような叫びをぶちまけた。
それと同時に脳裏にとある単語が浮き上がった。

−憎い−

最初はちっぽけな思いだった。けど日にちと時間が経つにつれてそれは次第に大きくなりつつあった。

「なんで、昔のままでいられないんだろう。なんでこの世界は変わり続けなければいけないんだろう。訳わかんないよ…」




−−−そして、さらに時間は経つ。





丁度、年が変わる数日前、私は学校で孤立していた。
いつもはすぐ傍に由真と雄吾がいた。
けど、ふたりは独自の世界を作り上げ、いつしか私すら拒絶するようになっていた。

他にも友達はいたけど、私は腹ただしく、特に絡むつもりはなかった。
別に虐められているわけではない。ただ、自分から一人になることを望んでいた。

「なぁ、美紗!」
「…何?雄吾」

放課後、私は席に座って雪が降り続ける窓の外を見続けていると、いつの間にか私の前に雄吾が立っていた。

「あのさ、明日で終業式だろ?終わったらさ、久しぶりに3人で都会に遊びに行かないか?」
「…はぁ、由真とふたりで行けば良いじゃない」
「なんだよ、美紗。お前最近変だぞ?何かあったのか?」
「変?私が?」

私は雄吾の言葉が気に食わなかった。変だと、彼は言うのだ。あまりにも不条理だ。不愉快だ。誰が私をこのようにしたんだ…全部、あなたたちのせいじゃないか!!

「私を一人にして、雄吾と由真はずっとふたりきり…私がどんな思いして今まで生活していたか…雄吾にわかるの!?」
「あぁ?お前何言って…」
「もう良いよ!ほっといてよ!!」
「おい!美紗!!」

私はカバンを持って教室を出て行った。
こんなところにいたら頭がおかしくなりそうだ…そうだ、逃げよう。帰ろう!
明日は終業式、そうすれば冬休み。当分は学校に来なくて済む。
今の私にとっては都合がよかった。
おまけに、上手くいけば次の登校の時までにはこの変な空気は時間の流れによって解消され、全て無かったことのようになるかもしれない。

「また、3人一緒の生活に戻れるかもしれない…!!」

そんな都合の良い考えを持ちながら一気に玄関まで階段を駆け下りた。

「寒いな、さてと…帰ろ…」

「美紗…」
「…っ…由真」

下駄箱からローファーを取り出そうとしたところ、後ろから声をかけられ振り向いた。声の主は知っていた。昔から聞きなれた声だからだ。
そこには、最近は全く話していなかった由真が立っていた。こうやってお互い向かい合って話すのは本当に久しぶりだ。

「な、何…由真?」
「ねぇ美紗…あのさ…」
「あぁ、都会に遊びに行こうって話?そのっごめんね、今日はちょっと都合悪いんだ」

もちろん嘘だ。
けど、由真は顔色一つ変えずただ呆然と立っていた。
どうしたんだろう、いくらなんでもいつもの平常心の時の由真とは全く違った。


「美紗…これは私に対しての復讐なの?」

「えっ…」


あれ、おかしいな…

今、由真はなんて言ったのだろう。
よく、聞き取れなかった。


「由真…何言ってるの?」
「とぼけないで…こんな事して楽しい?そんなに雄吾と私が一緒にいる光景が羨ましかったの?美紗だって応援していたくせに」
「ちょっと待って!由真!!」

「じゃあね…美紗。もう二度とあなたとは話さないし、会うこともない」


身体中の血の気が一気に引き、感覚がなくなった。ほんの数十秒の出来事だった。
私は…ずっと…立ち尽くしているだけだった…。




この事件の真相を知ったのは、次の日の朝だった。




由真は、転校することとなった。
親の仕事の人事異動の関係上、地方勤務となり年をまたぐと同時にこの街から出ていくらしい。
結局、由真の言葉通り最後の最後まで私達は話すことはなかった。
何も話さず、由真はこの街から出て行った。

それと同時に、由真と雄吾は別れたらしい。
由真が遠距離恋愛は無理と判断してのことだ。


この街に残ったのは、私と雄吾のふたりだけとなった。


「由真、行っちゃったな」
「うん…」

こうやってふたりで並んで帰宅するのはいつ以来だろうか。いつもなら私達の隣にはもう一人いた。でも、今日から私達二人だけだ。

「寂しくなったな」
「うん」
「なあ美紗」
「なに?」
「お前はずっといろよな…この街に」
「…え」


いつもの悪ふざけの雄吾ではない。滅多に見せない、真剣な表情だ。

しかし、負の連鎖は終わりを迎えることなく、続いていった。
それは、年が開けての出来事だった。
久しぶりに雄吾と二人で遊ぼうとしたとき、事件は起こった。

「雄吾、また待たせちゃってるかな…ん?」

公園で待ち合わせをする予定だった。
けど、今日に限って公園の周辺がやけに騒がしかった。
すると、待ち合わせ場所に人ごみが集っていたのだ。

私は嫌な予感がした。

「すいません!ちょっとどけてください!!通して…え…」
作品名:Wizard//Magica Wish −13− 作家名:a-o-w