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Wizard//Magica Wish −13−

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・・・

「よぉ…美紗」
「雄吾…ばかっ…」

病院の個室、ベッドには人口呼吸器が取り付けられ酷くぐったりとした雄吾の姿があった。雄吾が目を覚ましたのは事件から3日後の昼だった。

医者から話を聞いた。外傷はさほど酷くはない。ただ脳内出血が酷かったらしく、右半身が麻痺、さらにはその麻痺が現在も進行中とのことである。この症状の原因は不明らしく、麻痺の進行を遅らせるのが精一杯らしい。もしこのまま麻痺の進行が続いていけば…


いずれ心臓も止まってしまう。つまり、死へのカウントダウンは始まったいるのだ。


ただ、あともう少し病院に搬送できれば、このようなことにはならなかったという。

この話を聞いたとき、私はなにも声が出せなかった。ただ、許せなかった。なんでもっと早く誰かが通報しなかったのだろうか。
なんで皆見て見ぬふりをしていたんだろうか。
何度も恨んだ。そして泣いた。

何もかもが許せなかった。

・・・

「美紗、りんご」
「もう、ちょっとは動いてよ!」
「わりぃな!もうあまり半身うごかなくってよぉ!」

雄吾はいつも笑顔だった。平気そうにしてはいるみたいだが、実際は辛いのだろう。雄吾の言葉通り、既に右半身は麻痺し、誰かの援護がなければ立つことすらできなかった。


それから、季節は幾度と過ぎていく。
雄吾は学校に通えず、ずっと病院で入院生活することとなった。

私は受験生だということも忘れて毎日面会時間のぎりぎりまで雄吾の傍にいた。
何度も親に怒られた。
けど、雄吾がほおっておけなかった。

季節が過ぎていくと同時に次第に雄吾が弱っていった。

昔はあんなに活発だったのに、こんなにおとなしい雄吾は滅多に見れない。いや、むしろそれが当たり前になっていった。


そして、冬。
私は大学受験を諦めた。進路なんてなにも決めていない。就活もしていない。
ただ、彼の傍にいた。傍に居たいと思った。


「今日、終業式だったんだ」
「そっか…皆と卒業したかったけど…無理そうだな…」

麻痺は進行していた。
足の自由が全くきかなくなり、左手もなんとか動かせる状態だ。

看護師の小話が聞こえてしまった。

−あの患者さん、もう長くないみたいよ−
−ちょっと、そんな話こんなところでするものじゃないわよ−

雄吾が死んでしまう。
毎日点滴をして身体をベッドに固定され、まともな食事も取れていない雄吾は一年前と比べてかなりやせ細ってしまった。

「なぁ美紗…」
「なに、雄吾」

面会時間が残り少なくなった夜の8時近く、雄吾の掠れた声が病室に響き渡る。
彼は窓の外を見ながら私に話しかけた。

「俺さ…自分でもわかるんだ。もう長くないって…この点滴とか装置とか外せば今でも死ぬことぐらい…わかってるんだ」
「なに馬鹿のこと言っているのさ…冗談もほどほどにしてよ…」
「だから…さ。最後に馬鹿してみたいと思うんだ」
「止めて。もうそれ以上何も話さないで」

いつの間にか、私は瞳から涙をこぼしていた。
雄吾が何かを決意したかのように私を見る。

わかってるよ…雄吾は馬鹿だ。

最後に本当に馬鹿な事をするつもりだ。

「美紗、…最後に二人で、…散歩しよう」
「っ!!」
「頼む、この装置外してくれ」

雄吾の身体には延命装置がいくつも装着されていた。
もし外せば…解っているだろう。

でも…雄吾は望んでいるんだ。
最後の最後で、…人間らしく死ぬことを。


「もうっ…駄目って言っても、雄吾は…ぐすっ…引くつもりないでしょ?卑怯だよ…私が断れないこと知っててそんな事いうんだから…っ…」

「頼むよ…美紗ぁ…最後に馬鹿を…させてくれよ…」



−−−私は装置を外した。
看護師達にばれないように雄吾に大量のコートやら毛布を包ませ、病院を後にした。


私たちは雪が降る空の下、かつて3人で歩いた通学路をゆっくりと歩いている。
雄吾は私の肩によし掛かり、ほぼ動かない足を精一杯動かそうとして歩く。
ほぼ、私が引きずっているのと変わりないが…。

通学路をとおりがかる人達は何事かと私達を凝視した。
けど、厄介事に関わりたくないかのように見て見ぬふりをしてとおり過ぎていく。


「はぁっ…はぁっ…懐かしい…な…昔…3人で……一緒に…歩いた…よな」
「うん…」

次第に雄吾の呼吸が荒くなる。
けど、精一杯笑顔を作り私を不安にさせないように話す。

「ごめん…な……美紗…はぁっ…はぁっ…あの時…一人にさせちゃってさ…」
「うん…」


別れの時が近づいてくる。

終わりが…来るんだ。



「なぁ…美紗…最後に…一つ…言い残したことが…ある…っ!!がっ…あぁっ!!!!」
「っ…雄吾、雄吾!!?きゃあっ」

身体のバランスが崩れ、雄吾が倒れてしまった。私は彼の体重を支えきれず一緒に地面に倒れてしまう。幸いにも雪のクッションのお陰で打撲程度ですんだ。

けど…



「雄吾、しっかりして、雄吾!!」

「はぁっはぁっ!うぅっ…」


雄吾は左手を心臓に位置する場所に手を当て必死に呼吸をする。
もう駄目なんだ…雄吾は…限界なんだ…。

「ありが…と…う…はぁっはぁっ!!…あ、…ごめん…な…美紗…」
「喋らないでっ!!お願いだからっう…うぅ…」
「がぁっ…あ……な……美紗…聞いて…くれ…」
「雄吾ぉっ!!!!」





「ずっと……美紗…のこ…と……好き…だ……た…」

「っ!!」

「ごめ………な……」







私は必死に助けを呼んだ。叫んだ。

けど、誰も状況が把握できず、とおり過ぎていった。

声にならない叫びが響き渡る。

なんで…どうして…



なんで誰も…手を差し伸べてくれないの?




作品名:Wizard//Magica Wish −13− 作家名:a-o-w