Wizard//Magica Wish −13−
………
雄吾は死んだ。
私は一人ぼっちになった。
世界が歪んで見えた。
何もかもが憎かった。
憎くて憎くて仕方なかった。
私は…自分が生きているこの世界が嫌いだ。
卒業式を終え、私一人だけ進路が決まらないまま、家へと帰宅した。
何もかも失った。
もうこの世界での生きがいすら無くなってしまった。
「……あ…」
雄吾の遺品から受け取った懐中時計。どこか壊れてしまったのか針が止まっている。
今度直してあげなくては…。
「…ただいま」
家に入るとまだ昼間だというのにパパが会社の部下を連れて飲んでいた。
全く暇な大人達だ…。
だが、私は聞いてしまった。
聞くべきではなかった。
−全く、今年も使えない社員ばかりだ。まともに営業できないとは…−
−落ち着いて下さい社長!…あ、そういえば、火野の奴、今も頑張ってるんですかね~−
「えっ…」
火野…火野って
由真のお父さんのこと?
−火野?…火野とは誰のことだ?−
−以前、社長が地方に飛ばしたあの使えない社員のことですよっ!ほら、非合法で−
−あぁ、あいつか…そういえば、そんな奴もいたな…丁度去年の年末近くのことだったな−
「っ!!!?」
私は一気に階段を駆け上がり自分の部屋に入ってベッドに腰を掛けた。
そっか…やっと辻褄がわかった。
去年の終業式の前の日、由真が私に言った言葉。
今の今まで理解に苦しんだけど、やっとその意味がわかった。
「ははっははははっ!あはははははっ!!」
そっか、結局由真の言うとおりだった。
全部、私が蒔いた種だったんだね。
正確には、私のパパが発端だったんだ。
「あははははははははははっ!!!!ははっ…はっ…うわあぁァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い……
暴れた。
本棚を倒した。
クローゼットから服を投げ捨てた。
鏡を窓に向けて投げた。
枕を破いた。
そうしなければ私が私という個体を保てなかった。
「うわぁァァァァァ!!!!うっ…うぅぅ…」
許さない…
人は…人類は一度、滅びなくてはいけない。
こんな冷たい世の中、一度終わらせなくてはいけない。
復讐したい。
全てを…壊したいっ!!!!
−やぁ、随分暴れているね。どうしたんだい?−
「っ!!?」
割れた窓から一匹の猫…いや、犬?
白い生物が私に話しかけてきた。
なんだ…幻覚でも見ているのか?
「君には魔法少女としての資格がある。僕は君の願いを一つだけ叶えることができるんだ。今の君の願いは一体なんだい?」
モノクロの世界で差し込まれた一つの光。
今の私の願い…。
簡単よ…私の願いは…。
「全てを破壊したい。全ての人類を抹消したい。そして…世界を終わりの時へと導きたい……この悪意に満ちあふれた世界に復讐したい!!!!」
「……契約は成立した」
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作品名:Wizard//Magica Wish −13− 作家名:a-o-w