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Wizard//Magica Wish −13−

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「さあ、ショータイムだ」

俺の目の前に蜘蛛の形をした使い魔…いや、ファントムが宙を舞う。右手の剣でいくらなぎ倒しても無限に現れ、俺の進行を邪魔した。

だが、今の俺にとってはこんなファントムでは可愛いものだ。

俺の瞳に映っているのは、ただ一つ。

あの魔女王…ミサのみ。


「『ビッグ』プリーズ!」
「邪魔だっ」

ウィザードは部分倍化の魔法を使用し、蜘蛛型のファントムを吹き飛ばした。後ろから這いよるように無数のファントムが遅いかかるが、今の彼には意味はない。まるで後ろの視界が認識できているかのように回し蹴りを放った。


−そうだ憎め…もっと力を解放しろ…−

「『コピー』プリーズ!シューティングストライク!」


上空から2体のカラス型のファントムが突撃してくる。ウィザードはそれをいち早く察知し分身魔法を使用しながら火炎弾を放った。ファントムは無残にも爆散してしまった。

「面倒だ、全てなぎ払ってやる」
「『ハリケーン』プリーズ!『フーフー!フーフーフーフー!!』」

ハリケーンスタイルに変身したウィザードは自分の身体を中心に大型の台風を解き放った。それに巻き込まれたファントム達は断末魔を上げながら消滅していく。

だが消滅していくフェントムとは別に地面を這い蹲りながらウィザードに襲ってくるヘビ型のファントムがいた。その数は数十体、遠くから見たらまるで黒い色をした川のようだ。

「無駄だと言っているのがわからないのか?」
「チョーイイネ!『サンダー』サイコー!」

右手をヘビ型のファントムに向け、魔法陣を出現させる。
するとそこから雷が流れ出し地面を這いつくばっていた蛇は丸焦げになってしまった。

ウィザードは焼き焦げた蛇を踏み潰し、左手に黄色の指輪を装着した。

「『ランド』プリーズ!『ドッドッドッ、ド・ド・ドン!ドッドッド、ドン!!』」
「それで飛んでいるつもりか?止まっているように見える」

ランドスタイルにチェンジしながらウィザーソードガンをガンモードに変形させ空中を飛んでいたカラス型のファントムを次々と撃ち落としていった。
そのままウィザードは大きく空中へジャンプし、右手に装着されていた指輪で魔法を発動させた。

「『ドリル』プリーズ!」

足に地面から土をかき集めドリルのように高速回転させ地上のファントムへと急降下キックを放つ。ファントムの身体から噴出された黒い液体が身体に掛かるが全く気にせずそのまま銃を撃ち続けた。


「っ、所詮は幻影か。弱すぎる」

無限に現れるファントム、それと同時にウィザードは全てなぎ倒す。
身体を回転させキック、回し蹴り、かかと落としをファントム達にお見舞させる。

ファントムが弱すぎる。
おそらく、このファントム達の元は人間ではない。

奴…ミサ自身が作り出した幻影だ。

最後の悪あがきのつもりか。
それとも…俺に無駄の魔力を使わせて置いて自分が出向くつもりをしているのか。

間違い無く後者だろうが。


「ふんっ、はっ!」

気がつけば大量のファントムも半数以下に減っていた。
それほど時間が経ったとは思っていない。
いや、俺自身が楽しんでいた為だろうか。

俺は今、戦うことに快楽を得ている。

こんな気持ち、始めてだ。


「『ハリケーン』プリーズ!『フーフー!フーフーフーフー!!』」
「キャモナスラッシュシェイクハンズ!『ハリケーン』スラッシュストライク!」

自分の目の前に大きな真空波を放った。先程と同じようにファントムが宙を舞い無残に消滅していく。

すると、目の前にフェニックスの姿のミサが立っていた。


「ようやくここまで辿り着いたぞ、フェニックス…いや、ミサ」
「あら、早かったわね。ここまで魔力をあげているとは驚きだわ」

(いいえ…正確には『魔女化』がかなり進行している。彼自身が真っ黒に穢れ切ろうとしている。もう時間がないのね)


「ふぅ~…ふぅ~…」


身体が軽い。さっきとは大違いだ。
気のせいかな、力がいくらでもみなぎる。あふれる。

今なら無限に魔法が使えそうだ。

なんでだろう。魔法を使うことが本当に楽しい、快感だ。

誰にも負ける気がしない。今なら…今であれば!!


「ミサ、手加減無しだ」

「私もそのつもりよ…さっきの傷は既に癒えた。私を殺すつもりで来なさい…指輪の魔法使い!!」

「っ!!」

お互いの剣がぶつかりあう。
火花が飛び散り、二人の周りの衝撃が走った。お互い手加減無しの為か、周りの空間が歪んで見える。

「はぁっ!!」

「ぐっ…」
「チョーイイネ!『ヒーリング』サイコー!」

フェニックスの大剣がウィザードの左足を切り刻んだがそれと同時に治癒魔法を発動させ一瞬で傷を完治させる。それと同時に今度はウィザードの剣がフェニックスの右肩を斬り付けた。

「どこまでもしぶとい魔法使いね…けど、これなら!」

「っ…逃がすか」

豪炎の翼を広げ戦いの場を空中へとフェニックスは移した。ウィザードも自分の身体に風を纏わせその後を追う。

「馬鹿ね、空中なら私は負けないわ!」
「ぐっ…っ!!」

中を縦横無尽で飛び回るフェニックスの加速に着いて行けず、次第に身体には沢山の傷がついていった。だがウィザードは一切躊躇することはない。むしろ自分が苦戦していることを逆に楽しんでいるかのように見えた。


「速いな…だがっ」
「『ディフェンド』プリーズ!」
「『エクステンド』プリーズ!」

「これでっ!!…な、何!?」

ウィザードは防御魔法を使用しながら腕を伸ばしフェニックスを捉えた。

「捕まえた」
「『ウォーター』プリーズ!『スィースィースィースィースィー!!』」

空中でウォータースタイルにチェンジし腕を縮めながらその勢いを殺さず剣でフェニックスの身体を凄まじい速さで切りつけ、地面へと叩き落とした。大きな衝撃を立てて落ちたフェニックスとは逆にウィザードは綺麗に着地しローブをひらりと流す。


「立て、フェニックス」

「はぁっ…はぁっ…」


「『コピー』プリーズ!」
「そっちから来ないなら、俺から行く」

「ぐっ、ああっ!!」


身体がぐらいついているフェニックスに容赦なくウィザードは両手の剣で何度も斬り付けた。再びフェニックスは地面に膝を突き、闇雲に大剣を振り回した。


「ぐぅ…くう……この力…もはや魔法使いとしての力を凌駕しているのか…くっ…」


「まだだ…ショータイムは始まったばかりだ…フェニックス」


右手の剣をフェニックスに突きつける。

既に、今のウィザードの力はフェニックスをも軽く上回っていた。
フェニックスから見たウィザードの姿は、まるで本当の『悪魔』のように見えた…。

作品名:Wizard//Magica Wish −13− 作家名:a-o-w