機動戦士ガンダムRS 第25話 果てなき輪舞(ロンド)
「占いの結果は、どうなんですか?」
マーネリー軍曹は、一気に不安になった。
「占いの結果は、『あなたの近くにあなたのことを大切に想ってくれる異性がいます。
その人は、実直で献身的』だって。
うらやましい」
ミサキ中尉は、占い結果をうれしそうに伝えた。
「私は、そんな目立つ女性ではありません」
マーネリー軍曹は、謙遜した。
「ナン准尉、マーネリー軍曹の身近な男性って誰かしら?」
ミサキ中尉は、突然ナン准尉に質問してきた。
「シグマン大尉では、ないでしょうか」
ナン准尉は、シグマン大尉を引き立てるように答えた。
「なるほど。
シグマン大尉か。
確かにマーネリー軍曹の身近にいる人よね。
それにシグマン大尉は、実直でまじめだし」
ミサキ中尉もシグマン大尉を引き立てようとしていた。
「幸せですね、マーネリー軍曹。
そんなすばらしい男性と四六時中一緒にいられるなんて。
私たちとは、大違い」
ミサキ中尉は、好きな人と一緒にいられる時間が多いマーネリー軍曹をうらやましがった。
「ま、まだそう決まったわけではありません。
わ、私はまたブリッジに上がります」
そういうと敬礼してマーネリー軍曹は、顔を真っ赤にしながら食堂を出ようとしたがその動きはぎこちなかった。
「ご苦労様」
ミサキ中尉は、マーネリー軍曹にそういった。
「やったわ、ナン准尉。
マーネリー軍曹もまんざらでもなかったわ。
ちょっと効果ありって感じね」
ミサキ中尉は、手ごたえを感じていた。
「そうですね。
ちょっとうれしそうでしたし」
それは、ナン准尉も同じだった。
「この調子で頼むわね」
ミサキ中尉は、ナン准尉に好投をお願いした。
※
ナン准尉は、通路にいた。
「ナン准尉、いいところに来た」
そこには、ニール少尉がいた。
「もうすぐここをマーネリー軍曹が通るからうまくぶつかってくれ」
ニール少尉がナン准尉に指令を出した。
「ぶ、ぶつかるんですか?」
良い人で通っているナン准尉には、それがとても難しく感じられた。
「じゃあうまくやれよ」
ニール少尉は、そういうとその場を離れた。
「うまくやれるかな」
ナン准尉は、不安だったがもうここまできたらやるしかないと割り切った。
「軍曹が来る」
ナン准尉は、タイミングを見計らってマーネリー軍曹にぶつかった。
見事ナン准尉は、マーネリー軍曹にぶつかった。
「誰だ、わき見なんか見て歩いてるのは。
ちゃんと前を見て歩け」
ナン准尉は、不機嫌そうに言った。
マーネリー軍曹は、階級が上の人が自分のせいで不機嫌になったと思い戸惑ってしまった。
「何をやっているんだ、ナン准尉」
そこにシグマン大尉が来た。
「あ、シグマン大尉」
マーネリー軍曹がシグマン大尉に気付いた。
「怪我はないか、軍曹」
シグマン大尉は、そういうとマーネリー軍曹に手を伸ばした。
「ありがとうございます。
大丈夫です」
マーネリー軍曹は、少しうれしそうにシグマン大尉の手を取って立ち上がった。
「気をつけるのはお前のほうだ、ナン准尉。
それと言葉遣いも」
シグマン大尉は、ナン准尉をしかった。
「はい。
申し訳ございません」
ナン准尉は、少し本気で謝った。
「た、大尉。
もういいです」
マーネリー軍曹は、さらにしかろうとしていたシグマン大尉を止めた。
「私は、これで失礼します」
マーネリー軍曹は、敬礼してその場を去った。
2人は、マーネリー軍曹が見えなくなるのを確認した。
「ありがとう、ナン准尉」
シグマン大尉は、ナン准尉に礼を言った。
「ナイス悪役。
いい感じだったぞ」
その光景を一部始終見ていたニール少尉もナン准尉をほめた。
「あんなのでよかったんですか?」
ナン准尉は、いまいち手ごたえを感じられなかった。
「ああ、もうばっちり。
この調子で後も頼んだ」
ニール少尉は、ナン准尉に好投を続けるように言った。
※
シグマン大尉、ニール少尉とナン准尉はブリッジにいた。
「いいか、ナン准尉。
これからマーネリー軍曹がお前に報告書を渡しに来る。
うまくやれよ」
ニール少尉は、ナン准尉に作戦の概要のみを説明した。
「失礼します」
ブリッジにマーネリー軍曹が入ってきて敬礼した。
するとマーネリー軍曹は、ナン准尉に近づいた。
「ナン准尉、報告書を確認してください」
ナン准尉は、報告書を見た。
報告書に目立った間違いは、なくとても読みやすくなっていた。
「とてもいい報告書だ。
これもシグマン大尉の指導あっての賜物だな」
ナン准尉は、シグマン大尉の指導のよさもほめた。
「そ、そうですね。
確かに大尉の指導は、厳しかったですがおかげで今の自分があります」
マーネリー軍曹もシグマン大尉の指導のよさもほめた。
「感謝してくれるのは、ありがたいがこそばゆいな」
シグマン大尉は、照れくさそうに言った。
「今のうちに撤収するぞ」
ニール少尉とナン准尉は、ブリッジを後にした。
「よしよし。
いい雰囲気になってきたな。
2人とも見詰め合ってたし」
ニール少尉は、確実な手ごたえを感じていた。
「とりあえずここの作戦は、成功ですね」
ナン准尉もうれしそうに言った。
※
ニール少尉とナン准尉は、リクリエーションルームにいた。
「もうすぐここにマーネリー軍曹が来る。
そうしたらお前に話しかけるからうまいことあわせろ」
ニール少尉は、ナン准尉に作戦を説明した。
「わかりました」
ニール少尉は、タイミングを計っていた。
ナン准尉は、話しかけられてくるのを待った。
そしてそのときが来た。
「ところでナン准尉」
ニール少尉が話し始めた。
「何ですか、少尉」
ナン准尉は、自然を振舞って答えた。
「アイリス曹長の影で埋もれてるけどマーネリー軍曹も結構美人だよな」
その言葉にナン准尉は、何とか答えた。
「そうですね」
しかし次の言葉にナン准尉は、あきれた。
「俺は、あのタイプの美人は見たことがないよ」
(そ、それはわざとらしすぎです)
「わりと艦内でも人気が高いですから」
ナン准尉は、心で突っ込みながらも何とか答えた。
「純情で少しおくてなマーネリー軍曹とつりあいのとれる男性がいたらどんな人かな?」
ニール少尉がナン准尉に質問した。
「冷静沈着で知的な男性じゃないでしょうか」
ナン准尉が男性のタイプを答えた。
「その人ってこの艦内で言ったら誰になるんだ?」
ニール少尉が具体的に誰かを質問してきた。
「シグマン大尉です」
ナン准尉は、力強く答えた。
「そうだよな。
シグマン大尉は、俺たち男から見てもかっこいいからな。
あの2人ならお似合いのカップル間違いなしだな」
ニール少尉は、2人をおだてた。
「人の噂話をそんなに大きな声で言うものでは、ないと思います」
そこにマーネリー軍曹が顔を真っ赤にしてきた。
「やあ、ナン准尉。
今俺のことを呼んだか?」
そこにシグマン大尉が来た。
「た、大尉」
マーネリー軍曹の顔がいっそう赤くなった。
「どうした、マーネリー軍曹」
作品名:機動戦士ガンダムRS 第25話 果てなき輪舞(ロンド) 作家名:久世秀一