Wizard//Magica Wish −14− 最終回
「…っ!!…あ、あれ…ミサさんの身体が…」
「消えた…」
「…美紗…」
ミサの身体はソウルジェムからウィザードリングへの変換と共に消滅してしまった。
そこには、秒針が止まっている懐中時計が一つ。
ウィザードの手にはミサのソウルジェムから生み出されたウィザードリングが残された。指輪…と言うより、指輪につながったタイマーのような物。指輪の部分に龍の像がある。
右手に装着できるみたいだ。
「ハルトくん…ミサさんは?」
「あぁ…ミサは……
っ!!!?ぐあぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
その瞬間、ウィザードの変身が解除され、胸をもがきながらハルトは地面に膝をつき、声を上げて苦しみ始めてしまった!
ほむら は瞬時に拳銃を取り出し、銃弾を込める。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!あっぐあぁぁ!!!!…あぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
「ハルトくんっ!!」
「ついに始まったみたいだね、操真ハルト…いや、ウィザードの魔女化が」
「キュウベぇ!!」
音も立てずにまどか達の後ろにキュウベぇが尻尾を振りながらこちらを凝視していた。
「うぅぅっ!!!!…ほ、ほむらちゃ…ほむらちゃんっ!!!!は、はや…うぐあぁぁぁぁぁ!!!!」
「っ…わかっているわよっ…」
ほむら は装填し、ハルトへとそれを突きつける。
「ま、待って!!」
「駄目だっ!!まどかちゃんっ!!!!止めるなぁぁぁっ!!!!」
「……っ…はぁっ…はぁっ…」
終わる…。
これで、終わるんだ。
これで まどか を救える。
今まで、長かった。
これでやっと、私の戦いが終わる…。
「はぁっ…はぁっ…っ!!…」
なのに…何故?
指が…動かない…。
手が震える…足ががたつく。
頭の中が真っ白になる。
「うぅぅっ…あっ!!ほむらちゃんっ早く!!!!」
「ほっほむらちゃん…」
「どうしたんだい?暁美ほむら」
これで終わるのよ?
何故、引き金が引けないの?
今までずっと決めていたのに…
この瞬間を待っていたのに…
なんで…どうして?
私は…っ…私は…っ!!!!
「…ない……」
「ほむら…ちゃん?」
「引け……い…ない…っ…」
「っ!!」
「撃てるわけないじゃないっ!!馬鹿ぁぁぁぁ!!!!」
ほむら は地面を拳銃を落とし、顔に手を当てて膝を落としてしまった…。
彼女には、…彼との想い出を、作りすぎてしまったのだ。
「ほむらちゃん…」
「うっ!ひぐっ…無理よっ!!…私があなたを殺すことなんて…できないよっ…できっこないよっ!!」
「もう良い!!ぐすっ…もう良いんだよ、ほむらちゃん!!」
「まどかぁ…うっ…うぅっ!!うあぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!!!あぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」
「ほむらちゃん…ごめんね…私の為に、ずっと感情を押し切っていたんだね…っ…」
「ごめんなさいっ!!ごめんなさい!!まどかぁぁっ!!!!」
まどか は泣きじゃくる ほむら を自分の胸の中へと抱き寄せた。
胸の中で、ほむら はずっと まどかにごめんなさい、ごめんなさい、と連呼していた…。
「だったら……あと俺に出来ることは…一つだね…っ…」
ハルトは、立った。
そして歩き始めた。
何処へ?
宛は無かった。
ただ、まどか達から見えなくなるぐらい、どこか遠くへと。
「っ…ハルトく…」
「来ちゃだめだっ!!」
「えっ…」
「ちょっとでも離れて…まどかちゃん達に被害及ばないぐらい…があぁぁっ!!…ははっ…これが、俺の最後の精一杯かな…っ…」
ハルトは振り返り、二人を見る。
すると、ハルトの脳裏にまた、とある映像が過ぎった…。
「…っ!!…」
作品名:Wizard//Magica Wish −14− 最終回 作家名:a-o-w