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ヘタレたちと返し刃

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「…美味いな」
「でしょでしょー?パスタは一杯茹でたから、おかわりどーぞー!」
「うむ、ではもう少しだけ………って、いや待て!やはりそろそろ返し刃捜索に戻った方がよくないか?」
美味しいイタリアの手作り料理を食べてうっかり流されかけたドイツが、何とかストップをかけた。このままでは、探し人など一生見つからない気がするが、それはドイツの気のせいではなく事実であろう。
「えー、そうかなー?…でもパスタ余っちゃうし……」
「では俺が残り全てを自宅で…は無理があるか。…他にも誰かにお裾分けするとか、そういう訳にはいかんのか?」
「うーん…あ、それなら女将さんにあげられるかも!」
「女将さん?」
「そ。近所で民宿やってる人でね、すっごく優しくてね、きっとマンマが生きてたらこんな人だったんだろうなぁーって俺いっつも思ってるんだよ!」
「そうか」
イタリアの両親が交通事故で亡くなったことはドイツも知っている。自身の両親も普段は滅多に会わない、謂わば死んだようなものであるため、イタリアの寂しさも多少は分かる。結局、一人暮らしで自炊もするドイツの家に残りを持っていき(イタリアのゴリ押しで9割近く持たされた)、イタリアが懐く女将とやらに更に余ったパスタを渡してから、再び返し刃捜索に戻ることとなった。



「女将さーん、いるー?」
「…あら、イタリア君!どうしたの?そちらはお友達?」
「うん、このムキムキはドイツ。俺の友達!」
「まあまあ、初めまして」
ペコリと頭を下げられ、ドイツは差し出そうとした手を引っ込めて頭を下げた。どうやらこの女将は、ここより東の地方出身らしい。
「爺ちゃんに頼まれて人捜ししてるんだけど、なかなか見つからなくてね、腹ごしらえしてからもう一回捜そうと思って。それで、ご飯大量に作っちゃったから、女将さんに余った分をあげようと思ったんだけど」
「そうなの?じゃあ有難く頂こうかしら…イタリア君のお料理はとっても美味しいものね」
「えへへー嬉しいなぁ」
ごそごそと持って来たパスタとソースを鍋ごと渡すイタリアは実に幸せそうだ。女将は笑いながらそれを受け取った。そして奥から戻って来ると、宿泊客名簿を開きながら問うた。

「それで、どんな人を捜してるの?ここは旅人も泊まっていくし、もしかしたら力になれるかも」
「あ!そうだよね、ここ宿屋さんだもんね!えっとね、俺たちが捜してるのは返し……」
「あーあーあー!!小柄な黒髪黒目の男で、腰に刀なんかをぶら提げてるようなヤツだが…」
そのまま素直に返し刃の名を出そうとするイタリアの口を慌てて塞いで、ドイツは捲くし立てた。ただでさえ厄介な人間を捜索しているのだ。情報は是非とも提供して欲しいが、余計な波風を立たせたくはない。女将はドイツの様子を不思議がっていたが、少し考え込んでから「ああ!」と手を打った。
「ちょうどその条件に当て嵌まる人が泊まっていたわ」
「ヴェ、ホント!?」
「この人じゃないかしら」
宿泊客名簿で指差した先の名前は、イタリアがローマから教わった返し刃の名前そのものだった。
「ヴェエエエエ!ビンゴ!女将さん、ビンゴだよ!この人!!」
「まあ、本当に?お役に立てて良かったわ」
「泊まっていた…と過去形ということは、返し…じゃなくて、この日本という客はもう宿泊していないのか?」
女将に抱き付いて大喜びのイタリアを引き剥がしながら、ドイツは冷静に問う。
「ええ。本当なら今夜泊まっていくつもりで宿を取られたのだけどね、急にキャンセルされてしまって…」
「え、じゃあ今何処にいるかは…?」
「分からないわ…申し訳ないけど。でも、ついさっきここを出て行ったから、まだ近くに居るかもしれない」
「それだけ分かれば十分だ。イタリア、急ぐぞ」
「え、あ、うん。…じゃあ、女将さんまたねー!!」
「はいはい。イタリア君、ドイツ君、気をつけてね!」

慌ててバイクに跨った2人は、ドイツが住む町と反対の方角へと急いだ。
作品名:ヘタレたちと返し刃 作家名:竹中和登