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【カイリン】十四歳の亡霊

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雑踏の中を、少女はするすると通り抜けていく。
ツギハギだらけの服、手にはぼろぼろのテディベア。気まぐれに手を伸ばして、店先に置かれたリンゴを一つ失敬する。

だが、彼女を咎める者はいない。

少女は皮付きのままリンゴをかじると、雑踏の中へ消えていった。



『行楽帰りの事故で全員死亡、と処理されています』
『本人の状態は?』
『記憶障害ありと報告されていますが、体の方は問題ありません』
『なるほど。被検体にはもってこいだな』

そんな言葉で閉じこめられ、切り裂かれて中身を入れ替えられ縫われ、「リン」という名前さえ取り上げられて。

『仕事だぞ、シザーズ』

その一言で、どれだけ多くのものを闇に消してきただろう。




『シザーズ』

警戒レベル:特A

あらゆる事象を切り離す能力を持つ。対象は限定されず、能力は常時発動状態である。その為、制御装置を常に身につけさせること。一度装置が外れたら、彼女を補足することは不可能である。




『シザーズが逃げただと!?』
『探せ! まだ遠くには行ってない!』
『制御装置は!? 外されたらまずい!』
『つけています! が、万が一外れたら!』
『探せ!! 外される前に捕まえろ!!』


荒い息を吐きながらも、少女はニヤリと笑った。手には、無理矢理引きちぎった装置と、薄汚れたテディベア。


自由だ。あたしは自由だ。


首筋から滴る血を拭い、制御装置を投げ捨てると、少女は甲高い笑い声を上げながら走り去る。唯一の友人である、テディベアを抱えて。


ーーその日から、少女は亡霊となった。