二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

返し刃の秘密

INDEX|2ページ/2ページ|

前のページ
 

「ど、どういうこと?」
「私の能力の名は【カウンター】、ありとあらゆる攻撃を10倍にして相手に跳ね返します」
「そ、それでは先程の賞金稼ぎたちも…!」
「そう、私を殺そうと斬りかかった瞬間、その10倍の力を自らの身体に受けて死んだのです」
思わず立ち止まった2人は、半歩前で止まった返し刃を見て呆気に取られた。
「だ、だが…!それならお前は、自らの能力をコントロール出来ないということか?そんな強大な力を持ちながら、自分で制御出来ないとでも?」
「強大であるが故に、です。私の意思とは関係なしに、自動で発動してしまう。発動したら最後、途中で止めることも出来ない」
「そんなバカな…」
それほどまでに強力な超能力が存在していたとでも言うのだろうか。呆然としながらもドイツは、返し刃からビリビリと感じる威圧感の正体にやっと気付いた。あれは、能力の威圧感だったのだ。返し刃を傷付けようとする者に容赦なく牙を剥く、おぞましいまでの能力。

「私が交通事故に遭えば、相手の車は大破し乗車していた人間は悉く死ぬでしょう。私の足に喰い付く野良犬があれば、その犬の足は深く傷付きもげるでしょう。最早、私にはどうすることも出来ない。力をコントロール出来ない限り、私は歩く人間凶器です。…そして、死という選択肢以外に、この能力から解放されることはない」
「「………」」
黙り込んだ2人を眺め、返し刃は小さく苦笑した。そうして、諭すように若者へと語りかける。
「怖気付きましたか。私が恐ろしいですか。……そんな生半可な気持ちで、私に付き合わない方が良い。どんな用だったかは分かりませんが、どうか他の誰かに頼って下さい。今日私と会ったことは忘れて、もう帰った方が良い」

事故でも偶然でも悪意がなくとも、返し刃の身体に害を為せばすぐさましっぺ返しを食らう。それは、ちょっとした不注意で命を落とすことになりかねないことを意味している。
望まないまま、あまりに多くの命を奪ってきた。今や償うことも出来ない。“殺してくれる誰かを求める旅”を続ける間も、無関係な人間とは極力関わらないようにしてきた。そしてこれからもそれを続けていくのだ。警戒心は十分に持ちつつも、決して殺意は持たない青年2人を追い返さなかったのは、本当に気紛れだった。

命を狙わない客人とは本当に久々に会ったので、少々喋りすぎましたかね。
呟いた返し刃は、イタリアの滞在する村がすぐ目の前にありながら、踵を返して去ろうとした。次の瞬間、

「待って…!って、うわっ!」
「!」
「イタリア!」
ぐいっ、とイタリアから袖を引かれ、ほんの僅か後ろに引っ張られた返し刃の身体が突然光ると同時に、イタリアは派手に地面に転がっていた。ドイツが慌てて抱き起こす。
僅かに動揺した様子の返し刃は、けれど小さく息を吸い込むと落ち着いた声で言った。

「…安易に私に触れないで下さい。今のようになりますよ」
「爺ちゃんが、俺の爺ちゃんが絶対何とかしてくれるよ!!だから諦めないで!」
「は?」
「…そういえば、返し刃をローマ様のところへ連れて行くのが目的だったな」
「……私を、ローマ様のところへ?」
「そう。爺ちゃんが、返し刃さんを連れて来て欲しいって俺に頼んだの。ね、爺ちゃんの能力のことは知ってるでしょ?きっとコントロール方法を教えてくれるよ!」
2人の用事の内容に驚いたのか、返し刃は黙って瞬きを繰り返した。【カウンター】の能力発動を恐れず、両手をギュッと握ってくるイタリアにも反応出来ないようだった。

「しかし、」
「お前は相変わらず、ゴチャゴチャ余計なこと考えんだなぁ」
困惑したまま、それでも何か言い募ろうとした返し刃の声を遮る大声が、道いっぱいに響いた。ビクリとした3人が一斉に振り返れば、噂のローマが脇に何かを抱えて立っていた。

「爺ちゃん!」
「おぉっと!…イタリア、思ったより早かったじゃないか!やっぱり俺の孫だな流石俺の孫だな実に俺の孫だな」
走って抱き付いたイタリアを少しよろけて受け止めたローマは、抱えていたもの―――どうみても成人男性だ―――をドイツに預けた。困惑するドイツを尻目に、ローマはイタリアを腕に抱いたまま返し刃に近付く。固まったように動かなかった返し刃が、漸くぎこちなく唇を動かした。

「…ローマ様」
「久しぶりだなぁ、日本」

返し刃は目を伏せて頷いた。


日本の超能力:【カウンター】自分に仇なすものを全て10倍にして跳ね返す(制御不能な上、自分からは一切攻撃出来ない。刀はブラフ)
作品名:返し刃の秘密 作家名:竹中和登