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返し刃と爺ちゃんと起源君

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「俺を降ろすんだぜ!いいから早く降ろすんだぜこのムキムキ!!」
「おっ、おい!暴れるな、落とすぞ!!」
「ちょ、その人を絶対放さないで下さいムキムキ!」
「お前までムキムキ言うな!俺はどうすればいいんだ!」
「いいからお前は俺を地面に降ろすんだぜ!そっと下に降ろすんだぜ!」
「降ろしたらダメです、ずっと確保してて下さい。その隙に私は逃げます」
「お前ら…2人して勝手なことをグダグダと……」
「すぐ逃げる日本は卑怯者なんだぜ!でも、どうやったって俺から完全に逃げることは不可能なんだぜ!」
「せいぜい今のうちに言ってなさい。私なんかを追ううちに、いつか酷い目に遭って中国さんに泣き付くことになるんですからね!」
「………」
「おーろーせー」
「おーろーすーなー」
「…お前ら黙れ!!!」
「「!!」」

延々と続くドイツを挟んだ2人の不毛な遣り取りに、マイペースなイタリアの友人を務めるほど辛抱強さに定評のあるドイツが遂にキレた。
ローマたちが止める間もなく、ドイツが担いでいた韓国を勢いよくドスンと背負い投げで地面に叩き付けると、その能力によって一切危害を加えられない筈の返し刃が顔を青褪めさせて正座した。どうやらドイツに迫力負けしたらしい。そのすぐ側には、韓国が転がっている。受け身に失敗したのか、彼の身体の一部が変な方向に曲がっている気がしなくもないが、返し刃は手を出せず沈黙したままだ。

「付き合ってられるか!俺はもう帰るぞ!…ローマ様、これで失礼します」
「あ、ああ…」
のびた韓国と真っ青な顔で正座した返し刃を睨み付け、それでも尊敬するローマにだけはキッチリと挨拶すると、ドイツは肩をいからせて去って行く。
さっきまでのシリアスな雰囲気は何処へやら、展開についていけなかったイタリアとローマは暫し呆然としていたが、やがてイタリアが弾かれたように顔を上げた。
「ヴェッ、ドイツ待ってよー!!」
慌てて後を追おうとしたイタリアだが、数百メートル行ったところで再び引き返してきた。正座したままの返し刃の目の前にしゃがむと、ポケットから画用紙の切れ端と鉛筆を取り出して、サラサラと何かを書き付け始める。

「返し刃さん!」
「!」
いきなり呼ばれてビクリと身体を震わせた返し刃が、目の前に立つイタリアを見上げた。
「これ、俺の携帯番号!」
「…は?」
「暇な時とか、困った時とか、寂しい時とか、何かあったら俺に電話して!」
「電話?」
「そう、電話!」
きょとん、とした返し刃は、とてもイタリアより年上には見えない幼い表情をしていた。全く予想もしていなかったことを告げられた顔だ。それに苦笑しながら、イタリアは続ける。
「…さっき、返し刃さんは“1人で生きていく、貴方たちに迷惑はかけない”って言ってたでしょ?けど、そんなこと貫いてたら本当に一人ぼっちになっちゃうよ。そんなの寂しすぎるよ。…俺はこんな性格だし、特技も料理や絵を描くこと以外ないから、今まで本当にたくさんの人に迷惑かけて生きてきた。だから、優しい周りの人の有難さや大切さってよく分かってるつもりなんだ。その支えなくして、ここまで来られなかったって思ってる」
「………」
「だからこそ、俺は返し刃さんがたった1人で頑張ってるのが哀しい。…人って周りに迷惑かけながら生きていくものだよ。それが当たり前なんだよ。返し刃さんの場合は、その迷惑がメガトン級で性質が悪いけど、それでも誰とも一緒に過ごすことが出来ないなんて、そんなのおかしい!」
「……今、サラッと酷いことを言われたような気もしますが」
「え、あ、ごめん!でも、その、つまり、俺が…電話するぐらいなら問題ないし、迷惑にもならないでしょ!?あ、諦めちゃダメだよ!」
返し刃の呟きにビビリ、慌てたように捲くし立てるイタリアは少し涙目になっている。しかし、なけなしの勇気を振り絞った成果はあったらしく、イタリアの誠意は無事伝わったようだった。気遣われているのに、押し付けてこないし恩着せがましくもない。そんなイタリアの優しさは、返し刃の頑なだった心を少しずつ動かした。

「有難うございます、イタリア君」
目を細めた返し刃は小さな声で礼を告げると、差し出された切れ端を受け取った。
「電話…出来たらします。それと、」
「?」
「私の名前は日本です。返し刃ではなく、日本と呼んで下さい」
「…!う、うん!分かった!!」
イタリアは何度か日本の名を嬉しそうに口にすると、怒らせて帰ってしまったドイツを慌てて追い掛けて行った。



走り去るイタリアを見送った日本が、同じく一部始終を見守っていたローマに向き直った。
「…ローマ様」
「…何だ?」
「いいお孫さんをお持ちですね。それと、大変個性的なご友人をお持ちで」
見事な背負い投げでした、とまだ少し呆然としながら呟いている。
「そうじゃろ?そうじゃろ?いい子な上に可愛いんだよなぁ~イタリアは!」
「はぁ……この子もすっかり重くなりました、よっ」
ローマの相変わらずの孫馬鹿っぷりに苦笑しながら、日本は失神したままの韓国を抱いて立ち上がった。細身の見かけによらず、実は力持ちなのだ。
取り敢えず、今日利用する予定だった民宿に韓国を放り込んで、自分はさっさとこの地方から立ち去ろう。支払いは中国のツケにしておけば良い。日本はサッと頭の中で計画を立てた。イタリアにああ言われても、やはり韓国と共に旅する気にはなれない。

ローマに背を向けて歩き出した日本が、ふと思い出したように立ち止まった。
「……貴方にも、また何かありましたら連絡を差し上げます」
「…おう。何もなくても連絡してこい!」
「ローマ様、私は…」
「俺も、もっともっと力を磨く。お前やアイツを助けられるぐらいの力を身に付けて、いつか全ての柵を解放してやるよ」
力強く宣言するローマに、日本は小さく頷いた。

(たまには気紛れも起こしてみるものですね)
(本当に、アイツに仕事を依頼して良かったよ)
すっかり暗くなった空の下、背を向けて2人は歩き出した。


ローマの超能力:【デリート】他人の能力を消す(能力発動中の相手に触れることが条件。能力のコントロール方法を教え込むことも可能。【カウンター】や【クリエイト】には無効)