fate/destruction
Episode.1
時は遡って。
――今、私たちが居る世界は刻一刻と滅びへと向かっている。
端から見るとまったく動きを感じられないが、
少しずつ資源や物資が削られている。
それを知って私はこの滅びていく世界を、
どうにかしなくてはと本気で考え始めた。
幼いころ死んだ両親が言うには、
私の一族はかつて栄えていた魔術師の血統だったらしい。
でも、私のお爺さんの代あたりで、
ほとんど魔術の才能は無くなってしまい、
私に才能は引き継がれていないと言っていた。
それでも、何か使えそうな魔術があるかもしれないと、
家を漁ると、小さな隠し部屋を見つけた。
そこには、聖杯戦争の歴史や、
サーヴァントについてなどが書かれた書物が大量に置いてあった。
そこから引っ張り出した書類に書かれていた、
サーヴァントの召喚方法通りに水銀で魔方陣を描いたころ、
私の左手には三段重ねの蝋燭のような刺青―これが令呪と呼ばれるものだろうか―
が描かれていた。
準備もしっかり終えて召喚を行い現在に至る。
正直成功するとは思わなかったが、
無事サーヴァントの召喚に成功したようだ。
魔方陣から現れた少女はこちらを見つけると、
笑顔で歩み寄って来た。
「君が僕のマスター?」
「あ、そう…だと思うけど、あなたは?」
「僕は、アサシン。
気軽にアサシンって呼んで。」
少女――アサシンは人懐っこい笑顔でこちらに微笑む。
いや、それよりも、アサシンはクラスの名前で、真名ではないはずだ。
「アサシンは一体何の英霊なの?」
一番気になっていた事を問いかけると、
アサシンは先程までの笑顔を曇らせ悲しそうな顔をする。
これは聞いてはいけない事を聞いてしまったのかもしれない。
サーヴァントの真名は、正体を知らせるのと同時に、
その人物の恐ろしい過去までも公開するのに等しい。
もちろん、堂々と名乗れる英雄もいるだろうが、
後ろめたい過去を持つ英雄もいるだろう。
アサシンはどうやら後者に当たる英霊なようだ。
「あ、言いたくないないなら無理しなくていいよ。」
「うん、ごめんね。」
アサシンは本当に申し訳なさそうにうつむく。
サーヴァントとはいえ、元々は人間だったのだ。
過去を詮索されるのは嫌だろう。
少し反省していると、
アサシンは何かを感じ取ったかのように、
自室の入り口を睨みつける。
「どうしたの、アサシン。」
「そこに居るのは誰、
こそこそしてないで出てきたら?」
すると、アサシンの声に反応したのか、
誰も居なかったはずの所から、
地味目な和服姿の青年が姿を現す。
「ほう、思ったよりも早く気づいたか、
見た目はあんまり当てにならないようだな。」
着物姿の渋い感じの青年、
だが、確実にその能力はただの人間とは、
比べものにはならないほどの力を感じる。
「ふ、まあいい。
こちらだけ情報を知っているのはフェアじゃないな。
俺のクラスはライダー、まあ末永くよろしく。」
アサシンは素早くナイフを取り出して構えるが、
ライダーは彼と私をちらりと見て、
にやりと笑って扉を開く。
「逃げるの、ライダー?」
「悪いが、俺のマスターからの指示でな、
今日はただの様子見だ。
また今度な可愛いお嬢ちゃん。」
彼はニヤリと笑って去っていった。
先程のお嬢ちゃんというのが、
馬鹿にしてるようで気に食わなかったのか、
アサシンはムッとした顔でライダーが去っていった方を睨んでいたが、
すぐ諦めたように私の方へ戻ってくる。
「ごめん、逃がしちゃった。」
「ううん、大丈夫。
とりあえず、今日はもう休もうか。」
正直初めてのサーヴァントの召喚で、
疲れたまっていたのか自分のベットに潜り込むと、
すぐに眠ってしまった。
作品名:fate/destruction 作家名:すのう。