やわらかな獣 2
半分は自棄だったが、プロイセンはいよいよ腹をくくった。つねにプロイセンに従順であるドイツがかたくなに食い下がってみせるとき、たいてい一人で煮詰まって、やっかいな問題を生み出しては抱えているからである。そういうときは自分の気が済むまで思い通りにしたがるから、もともとプロイセンに多くの選択肢は用意されていない。時間稼ぎの逃げ道はあっても、結局のところ思うままにさせてやりたい兄心が働いて、かわいい弟の奴隷である。
「期間は?」
無粋だと思いながらもおそるおそる尋ねるが、ドイツに機嫌を損ねたようすは見えなかった。容認されたことがうれしくて、それどころではないのかもしれない。ドイツが嬉しいというならプロイセンもそれだけで満足だったが、目的や真意がわからない以上、胡乱さがつきまとって離れない。
「そうだな、厳密には決めていないが、明日から……」
そこまで口にして、いっとき逡巡するように黙り込んだドイツの表情に影が差す。
「………終わりは考えたくない、な」
そう言って笑うドイツの表情がいかにも無理をしているようで、プロイセンは推し量るように目を細めた。どうせ途方もないことを煮詰めて、息苦しくなるまで堂々巡りしているのだろう。考えすぎるのはよくない、というのがプロイセンの実体験に基づいた持論で、机上で生み出した空論など実用できなければ意味がなかった。今も。
「……よし、それなら計画変更だ。今日からにしようぜ」
頭で考えて埒があかないのなら、手っ取り早くラクになる方法を実践したほうが、よほど効率的である、とプロイセンは考えている。
ドイツはなにか、試しているようでも、確かめているようでもあった。楽園という手段を取って、なにかを達成しようとしている。プロイセンはそれが何であるのか知る権利があると思っているし、だからこそ、ドイツの手を取った。
そうやってふたりの、奇妙な楽園生活がはじまったのだった。