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【かいねこ】クレイジーガールの恋愛衝動

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「あーーーーーっはっはっはっはっ!!! だっせーーーーー!!! だっっっっっせーーーーーーーーー!!!」
「帰れ」

ベッドの上で包帯まみれになっているメルローは、目の前で爆笑するリーキを睨みつけた。

「いやいや、そんな怒んなって。ほれ、見舞いのブドウ持ってきてやったぞ。干したやつ」
「干すな」

リーキはがさがさと袋を開け、干しぶどうを食べ出す。

「んで? お前の潜入先って何処だっけ?」
「帰れ」
「いいじゃねーかよー、それくらい教えてくれたって」
「引き継ぐなら、それくらい知っておけ」
「うえーん、カイトー。メルローが苛めるー」

リーキが後ろに控えているアンドロイドに泣きついた。赤いガスマスクをつけた男性型は、微動だにしない。

気味の悪い奴だ。

メルローはこのアンドロイドが嫌いだった。マスクの上から褪せた色の髪がのぞき、素顔は決して晒さない。リーキが言うには、赤い目の端正な顔立ちらしいが。

「恥ずかしがり屋なのさ」

リーキはそう言って笑うが、メルローはカイトを信用していない。元々、機械を信用する気はない。

「カラシナの闘技場だ。表向きはダチュラという男が仕切ってる。ロボット同士を闘わせ、賭をする」
「許可は?」
「当然取ってるさ。あそこの上がりは馬鹿にならん。上も、多少の不正には目をつぶるだろう。だが、ダチュラは雑魚だ。こっちの狙いは、クランベリー」

その名前を聞いて、リーキは口笛を吹いた。

「おいおい、逃がした魚は大きすぎるな」
「まだ逃げてない。向こうに逃げる気はないのさ。俺を襲ったのは警告だ。これ以上深入りするな、と」
「じゃあ、やめようぜ。いいじゃねえか、泳がせとけば」
「そうはいかない。奴は手を広げすぎた」
「へー、そうですか」

リーキは、もぐもぐと干しぶどうを口にしながら、

「お前を襲ったロボの所有者は?」
「どうせ、登録されてるのは下っ端だろうさ。あの場にはヒト型もいたが、手を出していない。そいつは「マスターの命令」だと言っていた。恐らく、クランベリーのことだろう」
「手を出してねーんじゃ、駄目だわなあ。「怖くて動けませんでした」と証言されりゃ、それで終わりだ」
「ああ。だから続けるんだ」
「はーん」

気のない声を出すと、リーキは空になった袋をゴミ箱に押し込む。

「お前が死んでりゃあ、話は簡単だったのにな」
「勝手に殺すな」
「捜査官を殺られたとなりゃ、全面戦争だ。大っぴらに踏み込める。けれど、お前は多少ボコられただけ。引っ張れるのは下っ端の雑魚のみ。これじゃあ、表だって動けん。頭のいい野郎だ」
「だからこそ、今の地位を築けたんだろ」
「まあ、せいぜい頑張りますよ。俺には、心強い相棒もいるし」

メルローは、リーキの後ろに立っているカイトに視線を向けた。

「連れてく気か」
「ああ。俺よりよっぽど頼りになるからな」

そう言って、リーキはにやっと笑う。カイトは、相変わらず微動だにしなかった。