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ユースティティア

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 アムロの出産の翌日。
出張の予定を驚異的なスピードでこなした ――付き合わされた支社のメンバーはヨレヨレになっている―― シャアは、ジェットヘリで帰邸した。
そしてわが子に対面したのだが、途端にメロメロになってしまった。

「なんて可愛らしい!!栗色の髪が巻き毛なのはアムロ似だ。目鼻立ちは私に似ているかな。それにしても、深緑色の瞳に金色のガーベラが咲いているなんて、魅力的な女の子になるだろうね。けっしてお嫁になんて出しはしないぞ!!お父様とお母様とずっと一緒に居ような」

全身を消毒した後は、ずっとわが子に頬擦りをし、もみじの様な手を擽り、髪を優しく撫でていた。
そして、心行くまで我が子とのスキンシップをした後、恨み言を吐き出し始めたのだった。

 先ずは出産に立ち会えなかった事。
出産の一部始終を画像で残す気満々だったシャアは、その機会を完全に逸したのだ。
そして、その原因を突き止めるべく執事に事の仔細を聞きだした。
結果、急な出産はアストライアの出したハーブティに原因がある事が判明したのだ。

 「つまり、私がわが子の出産に立ち会えなかったのは、全て母上のせいだったのですね」

悔しそうに告げるシャアの眉間には、深い皺が刻まれていた。

 アストライアが選んだハーブ。その多くが妊婦への飲料を禁ずるものだった。
セージ タイム エキナセア セントジョーンズワート
極めつけはブラックコホシュ。これは分娩期に用いるハーブでタイム共々子宮の筋肉を刺激する。

「だって、白いホワホワしたお花が咲いてて、アムロさんに似合いのハーブだと思ったのですもの。セントジョーンズワートは黄色のお花が咲くのだけど、気分を向上させる作用があるし、なにより聖ヨハネの花と言われるのよ? 貴方達の結婚式の日を象徴するハーブでしょう? エキナセアはピンクの花びらが可愛らしくて・・・」
「理由はどうでも結構です、母上! 出産介助の経験がありながら、何故、妊婦に禁忌のハーブを、よりにもよって私のアムロに淹れるのですか! 母上は私が嫌いなのですか?! 一生に一度しかない初めての子供の出産を記録に残す機会を粉砕して下さって!! 最初に会うのは私だと決めていたというのに、母上ですか? しかも、この館の中で、私が一番最後に我が子と対面する?! これが虐めじゃなくて、何だと言うのです?!」

完全に拗ねて恨み言は終わりが見えない。
「だんな様。お小言はその辺で・・・」
「エドワルド!お前もお前だ!! 何故、母上がハーブを摘んでいる時に監視をしていなかった! お前がしっかりと母上を監視していれば、この様な事にはならなかったはず・・・」
『いい加減になさい、シャア! 母上とエドワルドさん、アンナさんや館の皆のお蔭で無事出産出来たのよ? それを感謝こそすれ責めるなんて!! そんな心根の狭い夫を持ったおぼえは無いわ。子供に恥ずかしくないの?』

延々と続きそうなシャアの恨み節を一刀両断にしたのはアムロだった。
飼い主に叱られた大型犬の様に首を竦ませたシャアだったが、どうしても納得出来ないのか、腕を組んだままそっぽを向く。
そしてボソッと呟いた。
「そうは言っても、私の仕事が・・・」
『あら。シャアのお仕事ならあるわよ。大事な仕事がね』
我が子にしてあげる事の全てを第三者に持って行かれた事が悔しいシャアに、アムロの助け舟が出された。
「・・・何が残されていると?」
『名前。まだ、この娘の名前が決まっていないのよ? 大事な仕事でしょ? これだけはシャアと私が決める事柄でしょう?』
その言葉に、シャアの憂い顔は一掃された。

「そうか!名前。名前の決定が残っていた!!誰にも愛され慕われ敬われる、そんな名前を付けなくては!!」
『・・・そこまで欲張らなくても・・・』
「何を言う、アムロ。この子はきっとそうなる。君と私の子供なのだからね!」

この時、子供部屋に集っていたメンバーの脳裏に過ぎった言葉は共通だった。

――― 親馬鹿 ―――

「アムロさん。この調子だと、あの子、典型的な・・・」
『皆まで仰らないで下さい、お母様。私も今、心底そう感じている所です』
「大奥様、奥様。これは相当に注意してかからないと・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
小声で話せたのは三人だけで、残る家人とナナイ、ギュネイら役員たちは言葉も無かったのだった。


 シャアが我が子につけた名前は「テミス」
それは秤と剣を携えた正義の女神の名前。
常に正しき道を進んで欲しいとの願いも込められた名前だった。


護るべき者が増えたシャアの仕事は、より一層人々の為になるITを追求し、人々はその恩恵に深く与った。

正しき秤を手に、不正を剣で切り捨てる正義の女神は、常にシャアの許に居る。

あの初春の公園で出会った時から

                           2011/03/28

作品名:ユースティティア 作家名:まお