Sweet Devil
「お前を好きとか…悔し過ぎるやろ…」
相手の顔は見ずに、そう告げた。それでも得意げな顔をしている事だけは想像がついた。
「…トーニョ」
自分の名前を呼ばれ、なにげに振り返った。そこには、少し赤らめてはいるけど思った通りの顔でじっと俺を見つめている相手が見えた。
俺だってお前が好きだ。でないと付き合ったりしない。ただ相性も、性格も、出会い方も悪かった。昔も色々と此奴を憎んだこともあった。だから、素直に好きになんてなりたくなかった。なのに、俺を好きだと言ってくれる此奴に今までにない嬉しさが溢れてきて未だに気持ちが止まらない。
「…俺が嫌いって言うてんのも、好きって言わんのも…お前だけや」
相手から顔を逸らす。顔が火照っていくのが嫌でもわかる。
本当はお前が好きだって、俺のために休みを取ってくれたことが嬉しかったって、今すぐ抱き締めて欲しい、キスもして欲しいって言いたい。言いたいけど、そんなことはプライドが許すわけもない。半世紀も、ずっと…。
「……トーニョ、此方向けよ」
耳元で甘く囁かれて、首を横にぶんぶんと振った。
クスりと、微かに声が聞こえると、相手に無理矢理顔を向けさせられた。
「っ……アーサー…?」
「…アントーニョ……」
一気に顔を近づけられ、相手と自分の唇が重なっている事に気づく。
軽く触れる程度のキスなんかじゃない、息をするのが困難な程、激しいものだった。流石、世界一キスのうまい国。一瞬で腰が抜けてしまった。
知らないうちに、内職の手も止まっていたことに気づいた、でも、今はそれどころじゃない。
「ん……ふぅ…っん」
苦しさと、気持ち良さから時々声が漏れてしまう。
───このままやったら、やばい…っ
激しさに、全てを委ねてしまいそうなキス。苦しいほどの胸の鼓動に、そのまま気絶してしまいそうな感覚を覚える。抵抗する事を忘れてしまう。
ゆっくりと、やっと激しいキスから開放される。
「アントーニョ、まだやるか?」
頬を撫で上げて、優しい目で見詰められる。こんな顔をされたら断れなくなってしまう。
「嫌に決まっとるやろ……早よ、しろや…」
精一杯に返事を返す。
嬉しそうに微笑みながらありがとうと耳元で囁かれる。まるで、媚薬でも飲まされたかのように身体が震えて、全てを相手に任せたくなる。
───俺、もう此奴以外に恋なんて出来ん…
そう思いながら相手に抱き締められて、2人、ベッドへ向かった。
作品名:Sweet Devil 作家名:ゆーとぴあ