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ゆめのあとさき

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穏やかな夢の中に広がる穏やかな空を見上げ、そっと微笑んだ。
やがて聞こえ始めた足音が止まり、エメラルドの瞳が柔らかく細められる。

彼女の瞳に確かに映る己の姿に、ヒスイは一瞬呼吸の仕方を忘れた。
スピリアの奥で何度も何度も叫んだ名前が、喉の奥でくぐもる。
愛らしい唇が、ゆっくりと動く。


「ごきげんよう、ヒスイ」


薔薇色の頬に伝う透明な雫を映した直後、彼女の顔は視界から消えていた。


「…痛い、ですわ」


ヒスイ、と、腕の中から抗議の声が上がる。


「…うるせぇ…」


エメラルドの髪に、幾筋もの雫が降っていく。
四年分の想いが溢れて、とまらない。
胸が熱くて、スピリアが熔けそうなほど熱くて。
なのに。


「あたたかい…」
「え?」
「ヒスイの胸は、とってもあたたかい、ですわ」


なのに、そんなことを、そんな声で言うから。


「…馬鹿野郎」


この胸の熱を流し込むように、ヒスイはリチアの厚い唇に熱い口づけを送った。


作品名:ゆめのあとさき 作家名:狗原綾菟