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となりの桂くん(銀魂・高桂)

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(けっ…、反吐が出る…)


俺は大学の正門をくぐるなりそう思った。

それ例年よりも10日ほど桜の開花が早く、入学式の頃には桜が散りかけ、葉桜となっていた。

今日は入学式が終わり、手続きのために大学に来ていた。

(どいつもこいつも受験が終わった途端、ハメを外しやがって…)

俺は周りの人間を小ばかにしながら学内を歩いていると、サークルの新歓看板の前にしゃがんでいる人がいた。
(何、あの人…)

別に興味はなかったのだが、どんな顔をしているのか見てやろうと思った。

(これで不細工だったら盛大に心の中で笑ってやろう)

と思って5メートルほど距離をあけて覗き込むと、髪の毛に隠れてしまってはいたものの、顔立ちは整っているように見えた。


(うわっ!なんかかわいいじゃん。声、かけちゃおうか。)

いたずらしたくなるときのようなむずむずした感情がおこった。

「おい、大丈夫か?腹でも壊したのかい?」

と適当な理由を繕って声をかけようと思ったとき、俺は言葉を失った。

(うわ、何やってんだよ、こいつ…)

その長髪姿は猫の上に猫を乗っけようとしていたのだ。


(なんだこいつ…!)

いくらネコが発情期を迎える時期とはいえ、ネコを捕まえて交尾の手伝いをしている
のを見たのは初めてだ。

そしていくら大学だからといって、いくらなんでもこれは個性が強すぎではないだろうか。

(勉強のし過ぎで頭のどこかがキレちゃったのか…?)

そしてどちらのネコもすごく嫌がっており、そのうち一匹はそそくさと逃げてしまった。

「おい、待て!」

と声をかけるが当然通じない。声から判断するにおそらく男だろう。

(「待て」じゃねぇよ。)

どういうつもりでこんなことをしているのだろうか。

すると例の長髪がこちらのほうに顔を向けてきたので反射的に顔をそらした。

横目で見るその容姿はすらりとした長身で端正な顔立ちで長い髪の毛をなびかせ大層美しいのだが

(はぁ…よく笑顔動画のタグに「残念なイケメン」ってタグがあるけど、ああいうのを言うんだな。)

心の中でため息をつきながら、手続きの為に校舎の中に入ることにした。

しかし。

俺はそれから数時間後にまたそいつに会うことになる。

なんと、上京して新しい新居である学生マンションに戻ったときにそいつが家に入るのを目撃したのだ。

(しかも俺の隣の部屋…!!)

非常に嫌な予感がしたのは俺の気のせいだろうか。










一通りのガイダンスが終わり、授業が本格的に始まった4月下旬。

俺の朝の日課はというと―

まず7時に起床。1時間目がないから10時まで寝ようなんて人間としてクズだ。

顔をあらって、朝ごはんの準備をする。一人暮らしだからといって何でも食べていいわけじゃない
し、抜いていいわけでもない。そんなことしたらメタボまっしぐらだ。

朝ごはんの準備をしながら、洗濯機を廻し、テレビをつけてニュースをチェックする。

そして二人分の弁当を作る。

え、弁当を二人前も食うのかと?そんなことはない。

もう一人は隣に住んでいる髪の長い宇宙人に作ってやってるのだ。


というのも昨日の夕方、俺が夕食を作っていた折、奴が挨拶代わりと言って、筑前煮という名のかわいそうな野菜のにくずれを持ってきたのだ。

「これ、何…?」

「筑前煮だ。うちの田舎のおふくろの味だ。」

そういってタッパーに入っている筑前煮を「ほら、遠慮するな!」と押し付けてくる。

(遠慮じゃねぇよ、敬遠してるんだよ!!そしてお前の田舎はどこだ?どうせ火星だろ、火星!!)

すると奴は急に鼻をくんくんしだした。

「…これは奇遇だな!お前のうちも筑前煮をしているんだな!!」

(なんで煮物が全部筑前煮になるんだよ、肉じゃがだよ、肉じゃが!)

と突っ込もうとしたら、奴はもう家の中にあがりこんで卓袱台兼勉強机の上に皿を並べ始めているじゃないか!!

「おい、てめぇ!何、勝手に人の家にあがりこんでいるんだ!!」

俺はとうとう堪忍袋の緒が切れた。

(あいつの家族はあいつをどういう風に躾けてきたんだよ!)

と思い、奴が俺の肉じゃがを口に運ぶ様子を呆然と見ていた。すると、やつの目の色が急に変わった。

「…うまい。お前、料理がうまいな!!うちの母上よりもうまいぞ!!」

(褒められてもあんまり嬉しくない…)

かわいそうな筑前煮を作るような母親なんてきっと料理もへたくそに違いない。そうにきまっている。

「こんなにうまい肉じゃが、初めて食ったぞ!肉じゃがってこんなにおいしいもの
なんだな!お前を将来旦那にした女は幸せ者だな!!」

「そ、そうか…?そんなに言うならもっと食ってもいいけど…よ。」

という具合に、まんまと奴に乗せられて弁当まで作ってやる始末になった。

ピンポーン、ピンポーン、ピポピポピンポーン

やつのお出ましだ。そんなに押さなくてもわかるに決まっている。

ちなみに奴の名前は桂小太郎という。





「いただきまーす!」

桂は元気よくあいさつをして、茶碗に山盛りご飯をよそい、ほかほかと湯気を立てている
ご飯の上に生卵を溶き、しょうゆを混ぜ、ご飯の真ん中に穴をあけ、とろり溶いた卵を流し込んだ。

一人暮らしで食事の時にはテレビをつけていないはずなのに、俺の朝ごはんはなぜかにぎやかだ。

「おい、高杉!お前のドイツ語の宿題、やっておいたぞ。まったくお前という奴は食事と弁当を引き換えに宿題を俺にやらせるなんて。」

「飯を作ってやっているんだ。それくらいやれや。」

俺も卵かけご飯にした。桂は高校生になるまでスイスの日本人学校で過ごしていたという。だからある程度
ドイツ語もできるのだそうだ。
案外こいつは見た目によらずスペックが高く、日本語のほかにもドイツ語、英語、フランス語も少しは出来るのだという。

どうして品詞に男や女があるのかがよくわからず、俺は選択必修の第二外国語をドイツ語にしたことを激しく後悔した。

だから桂に宿題をやってもらうことにした。やってくれと頼んだときは、「テストや卒論のときに後悔しても知らないぞ」と説教やら文句を垂れていたが。

さて。どうして朝がこんなににぎやかなのか俺なりに考えてみたところ、俺の実家には両親はいながらも、ほぼ不在に等しかったということに気がついた。

父も母も仕事で世界を飛び回っており、俺の子育ては祖父母がやっていた。

だから成長期の高校生くらいになると、祖父母が用意してくれたご飯だけでは足りなかったので自分でいろんなものを作り始めた。

肉じゃがから始まり、和洋中いろんなものに挑戦し、俺の祖父母にまでご馳走したほどだ。

祖父母はやさしかったから「晋助さんの作るものはとてもおいしい」と褒めてくれた。

俺はそれでよかったけれど、本当は両親からも「おいしい」の一言欲しかったのかもしれない。

(なんか、柄にもなく朝からしんみりしちまったな。)

目の前の桂はそんなこともお構いなしにおいしそうに食べている。

「おい、口に昼飯がついてるぞ。」

口元にご飯粒がついている。桂はうれしそうにしてご飯粒をつまみ、口の中に入れた。