となりの桂くん(銀魂・高桂)
(こいつ、ホント見た目はいいんだけどな。)
もう何度目になるかわからないが、桂の見た目と言動が一致していないことが今更ながらおかしかった
学校は目と鼻の先なので、朝食の片付けを終わってから少し桂から宿題の解説と予習を手伝ってもらった。
桂はフランス語を履修したというので、俺たちは別れてそれぞれの講義室へと向かった。
俺の横には、俺と高校が同じだった河上と武市が座った。
「晋助、あの長髪と仲がいいでござるな。」
「あ、ああ桂か?万斉と同じ学科だったか?」
「そうでござる。頭がキレる奴ではあるがうちでは相当変人扱いされているでござる。」
聞くところによると、入学式にみんなスーツを着ているのに、Tシャツとジーパンで現れたのだそうだ。
桂ならやりかねないし、なんとなく桂の周りには1メートルくらい人を寄せ付けない雰囲気がある。
「それより万斉。今日の合コン、かわいい女、いるんだろ?」
「私は女子大生よりも中学生のほうがいいですねぇ…」
大学受験と同時に彼女とお別れした俺には一日でも早く彼女を作りたいと思った。
ところが、俺は数時間後、その合コンで玉砕することになる。
合コンで玉砕した理由とは…
俺はもともと積極的な女、というか女子力を見せつけようとする女というのが苦手なのだ。
もっとそっけないタイプのほうが興があっていい。
しかし今日、万斉がつれてきた女というのが揃いもそろって俺の苦手とするタイプで
俺は結局片隅でビールをちびちび飲んでいた。
すると合コンに呼ばれていた女の一人が、「もっとこっち来なよぉー」としきりにうるさい。
そっけなくしていると向こうも俺と他の男との態度をあからさまに違いをつけてくる。
しまいには「ねぇ、ちょっと河上ぃ。今度合コンの人数を合わせるときはもっと大人の男にしてよねー。こんな乳臭いガキ連れてこないでよ。」と酔った勢いで言う始末だ。
(…んだと、このアバズレ女!!)
と売り言葉に買い言葉で思わず出てきそになったが万斉の面子を立てるためにそこは我慢した。
俺は結局その後、武市の家に行って一緒に酒を浴びるように飲み、ふらふらする足取りで家路についた。
すると自分の家のドアの前で寝てしまったらしい。
「おい、目が覚めたか。おはよう。」
そこは桂の家だった。
目が覚めると、そこは桂の部屋だったのだが…
「おい、朝から何を見ている?」
自分のベットを譲ってくれたことにはとても感謝をしているが、
桂は寝袋から半身を出して、朝からアニメを見ている。
「フランス語の『それいけ!ステファン』だ。フランス語の勉強になるのだ、お前も見ろ」
「いや、いい…。」
それよりも頭がとっても重たく、胃がもたれている感じだ。
(あー…これが二日酔いってやつか…)
この世の生き地獄だと思った。俺が具合悪そうにしているのに気がついたのか、桂は
「おい、二日酔いだったら枕元にそれ、用意したぞ。」
と言うので枕もとのビンに手を伸ばした。よくある「ウコンの泉」だ。
ウコンをまったく別の例のアレと読み間違えてしまいそうになったのが、自分でも腹立たしかったが、とりあえず桂に礼を言ってウコンの泉を飲んだ。
それでもまだムカムカするのでベットを借りていた。どうせ今日は土曜日で休みなんだし。
それにしても妙な部屋である。部屋一面、ステファングッズでいっぱいなのだ。しかも今、俺がかけている布団の柄もステファン。
「何でお前、ステファンが好きなの?」
テレビを見ながらフランス語を口ずさんでる桂にたずねた。
「ステファンを見てると癒されるからだ」
「あ、そ。」
それだけ答えてまたベットでごろりと寝転んだ。
「あのさ。」
「なんだ?」
「助けてくれて、サンキュ。」
「……」
桂は何も言わずにテレビを夢中で見ていた。
そういえば、俺はよく桂のことをよく知らない。
確かに生まれてから高校生になるまでスイスにいたことは知っている。
でも兄弟が何人いるとか、スイスから戻ってきた後、どこの場所に住んでいたのかは知らない。
「あのさ、お前がドイツ語教えてくれたおかげで、この間の宿題、全部できたよ。」
「そうか。」
桂は相変わらずテレビに釘付けだ。
すると机の上にあった携帯電話がメールの着信を伝えた。スマホだの何だのが流行っているのに
MOVAを使っていた。
MOVAはもう終わったはずだが、桂は問題なく使っている。
「おぉ、銀時。どうした。」
電話の相手は桂の友達らしい。俺は付けっぱなしの「それいけ!ステファン」
を見ていた。
子供向けのアニメのはずなのに、フランス語がわからなくて何を言っているのかさっぱりだ。
「…今は日本の大学に通っている。えっ、6月、日本に来るのか?楽しみにしている。」
こんなふうに嬉しそうに電話で話す桂を始めてみた。
「友達?」
電話を切った桂に尋ねた。
「あぁ、日本人学校のときの。今はアメリカにいて、今度日本に来るんだ。」
「そうなんだ。よかったな。」
桂はうれしそうに携帯電話を眺めていた。
(作者注:MOVAはガラパゴス携帯のはずなので海外の人と通話できるかがわからないのと、2012年3月31日でサービスが終了したので今は使えません。念のため)
結局、桂の家で丸一日厄介になることになった。
俺は頭が痛くて唸っていたし、桂は丸一日フランス語の「それいけ!ステファン」を見て、
DVD全巻を制覇した。
お昼近くになると、桂はカバンをごそごそと漁って財布を取り出して部屋を出て行った。
30分くらいすると、レトルトのお粥と蕎麦を買ってきた。
「お昼、作らねぇの?」と聞いたら、「高杉みたいにうまく作れないからいい」と蕎麦をすすりながら言った。
(ちょっと言い過ぎたか…)
とおかゆをちびちび啜りながら反省した。
それでも自分のプライドの高さゆえか、「言い過ぎてすまない」という、そういう謝罪の言葉がすぐに出て来ない。
そういえば、高校時代は風邪一つ引いたことがなかったので、大学生活が始まってこんな風に一日ごろごろすることになろうとは思いもよらなかった。
看病はしてくれないが、それでも近くに人がいるのといないのとではだいぶ違うのだと思った。
桂は桂のペースで日がな一日をDVDを見て過ごしていたのだが、不意に桂のほうから声をかけてきた。
「そういえばお前は昨日、俺のうちの前で泥酔していたが、お前、ホントは未成年だろ?」
ちらりとこちらを見て言った。なんか桂に限らず、蔑みの目で見られると悔しいが、反論はできない。
「…は、二十歳だよ。…四捨五入したらだけど。」
悔し紛れにそれしかいえなかった。桂はあきれたようにふーっとため息をついた。
「そ、そういうお前はいくつなんだよ。」
「俺か?俺は今度の6月26日で二十歳だ。」
ということは桂は一浪していることになる。
「じゃあ、俺よりも一つ年上だ。」
しかし俺よりも年上のようにはとても見えない。
作品名:となりの桂くん(銀魂・高桂) 作家名:八条