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こらぼでほすと ダンス1

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ニールの誕生日が終わったら、ミニティエとアレハレルヤは組織へ戻った。さすがに、余裕がなかったらしい。そして、すぐに桃色子猫の降下の連絡が入ったので、気落ちしている暇はニールにはない。ついでに、どえらい宿題を課せられた。
「はあ? ワルツ? 」
 キラとアスランが、寺にやってきて宿題を提示したので、寺の女房は、その内容に、あんぐりと口を開けた。
「はい、フェルトに、それなりのパーティーを楽しませたいんですよね? ママニール。そうなると、ダンスは覚えてもらわないと。」
「だから、なんで? 」
「本来、夜会というか晩餐会というものは、食事の後で、そういう娯楽があるものなんです。せっかくなら、そういうものも楽しませてあげたいんでは? 」
「確かに、そうだけど。」
「ですから、エスコートする人間が、最初は踊るのが礼儀です。エスコートは、ママニールなんだから、踊らないわけにはいきません。」
「いやいやいや、アスラン? 俺、そんな高尚なもんは・・・」
「だから、覚えていただきます。ワルツの基本ぐらいならステップも難しくありません。基本だけで大丈夫です。」
「つまり、おまえさんは踊れると? 」
「もちろんです。ホストをやってるスタッフは、一応、踊れますよ? 店でも踊らなければならないことがありますから。キラも踊れます。」
 ホストクラブ所属のスタッフは、全員が、この講習を受けて最低限は踊れるのだと、アスランはおっしゃる。体調の問題があったニールは除外されていたから、講習されていなかっただけなのだそうだ。
「ママ、そんなに難しくないよ? 三拍子に合わせるぐらいだから。」
「フェルトも踊れないでしょうから、リードしてやらないといけないんで、ママニールには、そこいらも覚えてもらいます。」
 はあ? と、ニールは頭を抱える事態だ。もちろん、言いだしっぺは自分で、綺麗なドレスを着せてみたいと思っただけだったのだが、そんな宿題があるとは思っていなかった。
「ラクスとカガリも踊りたがると思うんだよね。だから、とりあえず三曲は踊ってね、ママ。」
「いっ? 」
 始めますよ? と、アスランが容赦なく、ステップを踏む。相手は、キラが勤めている。どちらのパートも踊れるらしい。じゃあ、簡単に、と、キラを相手にニールもステップの練習だ。ステップ自体は難しくないが、これにターンとかキメのポーズなんてものが付随するし、踊れないフェルトを踊れるようにエスコートするとなると、結構、大変だった。
「ちょ、ちょっと待ってくれ、アスラン。」
「基本は、こんなとこです。毎日、誰かを相手にして練習してください。」
「うちの亭主も踊れるのか? これ。」
 傍若無人マイノリティー驀進中の坊主が、こんなことができるのか? と、ニールは疑問に思ったのだが、「たぶん、簡単なステップは踊れます。」 と、返されて絶句した。
「音感の問題だと思うんですが? 」
「練習したのか? 三蔵さん。」
「何回かはやってました。でも、すぐに踊れるようになってましたよ。」
 ニールは、そういう意味では危険な生き物だ。音感は微妙な状態だから、坊主にも、隠し芸になるぞ、と、鼻歌を注意されたことがある。

「ん? ワルツぐらいなら、どうにかなるぞ。」
 アスランが帰ってから、坊主が檀家周りから戻ってきたので、尋ねたら、簡単に肯定された。店に出る時に、なんとなく習ったとおっしゃる。そして、女房の問題にも気付いて爆笑している。
「あーそうだったな。・・・・それはそれでいいんじゃねぇーか? いい余興になるだろ? どうせ、一曲だけだ。後は、キラなりアスランなりが踊る。」
「その一曲が問題なんですが? 」
「別に、適当に動いてればいいだけだ。」
「俺には音感がありません。」
「・・・・あー・・・まあ、がんばれ。」
「練習に付き合ってください。」
「ああ? そういうことは、間男に頼め。おまえと手なんか繋いで、お遊戯なんぞやりたくねぇ。」
 ということで、白羽の矢が勝手に立てられた間男と、毎日、ワルツの練習なんてことになってくる。
「違うって、ママニャン。そこでターン。一直線に動いてばっかりじゃ、壁に激突すんだろ? 」
 そして、ハイネはスパルタだった。境内で、せっせと練習させられるにあたって、「言わなきゃよかった。」 と、ニールは後悔したが、すでに遅かった。




「アスラン、うちの女房にダンスは無理だぞ? 」
 ニールが出勤していない日に、坊主がフロアマネージャーに声はかけた。さすかに境内で繰り広げられている、とてもダンスとは思えないブツを観察したからのことだ。
「え? そうなんですか? 」
「あいつ、リズム感が皆無だ。ロボットのほうが踊れるだろう。」
「それって、三蔵さんが練習に付き合ってあげればいいんじゃないの? ワルツって足だけだし。」
 もちろん、キラも居るので、そういう意見になる。音感のある人間なら、ワルツは、それほど難しいものではない。身体を音楽に合わせていれば、それなりに見えるものだ。
「あーキラ、それ以前の問題だと思う。ハイネも、教えようがなくて頭抱えてるぜ? 」
 さらに、現状に、うわぁーと思った悟空も同意見だ。音楽に乗るなんてのは、自分のおかんには無理だと、あれを見て納得した。
「アスラン、最初の曲は短時間にして、すぐに変わればいいんじゃないか? どうせ、ママニャンは長時間は踊れないだろう? 」
「というか、そんなに練習させて大丈夫なんですかね? まだ、体力的には運動は厳しいでしょう? 」
 沙・猪家夫夫は、現状は把握していないが、世の中には得手不得手というものが存在するのは理解している。
「もういっそのこと、チークダンスにしたら、どうだ? 」
「初っ端から、チークダンスって、いかがわしすぎるだろ、鷹さん。」
「だが、ママニャンがエスコートさせつつ踊るってなると、それぐらいしか無理なんじゃないのか? 虎さん。」
 見た目には、ダンスなんかお茶の子歳々で踊れそうなニールだが、どこか弱点はある。今まで、音感が必要なものを店でも寺でも必要としなかったから発覚しなかっただけだ。
「じゃあ、フェルトのエスコートを他の人がやればいいんじゃないの? ママもエスコートされる側なら、できなくてもいいと思うんだけど。どう? 」
 突然の天然電波攻撃に、誰もが、へっ? と、キラを見た。エスコートされる側ってことは、どうするつもりだ? のところで停滞している。
「キラ、それって、ママニールにもドレス着せてしまうってこと? 」
 唯一、その天然電波を多少理解しているアスランが正解を答えると、そうそう、と、キラも頷く。それだけで、虎と鷹は吹き出した。
「おまえ、それは・・・着物は、それほど違和感はないが、ドレスは怖いぞ? キラ。」
「180オーバーの女装はやめたほうがいい。どう転んでも笑いしかない。」
 ゲラゲラと笑いつつ、虎と鷹がツッコミだ。中性的な容姿の人間なら、着こなせるだろうが、ニールは、絶対に中性的ではない。
「なあ、キラ。おまえがフェルトのエスコートやれよ。」
「僕、ラクスのエスコートだよ? 悟空。それなら、悟空がやれば? 」
作品名:こらぼでほすと ダンス1 作家名:篠義