こらぼでほすと ダンス4
女性陣の化粧直しの時間があるので、少し休憩時間がある。エスコート役は、控えの間に待機だが、他は、大広間で適当に軽い酒なんか飲みながら雑談に花を咲かせている。
「トダカさん、親衛隊とは踊ってやらないのか? 」
「・・・踊りたくないねぇ。孫娘と娘だけで十分だ。虎さん、明後日の朝、シンとレイと娘さんと少し抜けるつもりなんだが、いいかい? 」
「孫娘は? 」
「フェルトちゃんは、カガリ様とラクス様にお任せしてある。少し野暮用なんだ。こっちで勝手にヘリも手配しているから、午後には戻るんで頼むよ。」
どちらも年代モノのワインを口にしつつ、そんな話をしている。鷹は今回、ラボの留守番なので、虎が全体の段取りのうち移動手段なんかの担当しているので、トダカが話をしている。イベント担当の沙・猪家夫夫にも、先に留守をすることは伝えたから、これで説明も終わりだ。
「了解。まあ、どうせ、わいわい騒ぐだけだ。ニールが不在だと亭主が拗ねるかもしれないが、被害はそれぐらいでしょう。」
「あははは・・・片時も手放さない勢いだからね。うちの娘も、かかりっきりが楽しいみたいだし。いい夫夫だよ。」
そこへ、沙・猪家夫夫とハイネも合流してくる。女性陣の化粧直しなんてものは、時間がかかるものだ。それに、もう、すっかり役割分担も決まっているから、男性陣も気楽に待っている。なぁーんちゃって舞踏会ごっこをやって、適当にダンスをするぐらいのことだ。
「トダカさん、明後日、午後から戻られるっておっしゃってましたが、なんなら一日、ご家族でフリーにされてはいかがです? こちらは、これといって用事もありませんから。」
「そうそう、フェルトちゃんの相手は、適当に居るから問題はないぜ? 坊主にママニャンを独占させるのもムカつくだろ? 」
「うーん、どうなんだろう。うちの娘さんが亭主の相手を疎かにするのを嫌がらないなら、あっちこっち連れ歩きたいとこなんだけど。」
慰霊碑のある島は、今は他には何もないところだが、オーヴ本島には、いろいろと見せたいものはある。ただ、ニールが亭主を気にするだろうから、トダカも、それを言えないでいるのだ。せっかく、オーヴ本国に来ているのだから、特区にないものは見せてやりたいのが親心というものだ。
「いや、一日くらい、いいんじゃないですか? 三蔵は、ニールがいなければ、適当にしているはずですから。」
「居れば世話させるが基本姿勢だから、気にしなくてもいいんだぜ? トダカさん。ママニャンだって、オーヴは初めてなんだから観光もしてくれば、いいんじゃないか? 」
寺の間男のハイネも、そう勧める。慰安旅行なのだから、のんびり遊べばいい。まあ、トダカが行くところの予想はついているので、その場所からオーヴ本島も近いからのことだ。本島は首都だから、特区なんかより大都会で、散策するには良い場所だ。
「じゃあ、少し寄り道させてもらおうかな。」
勧めてくれるなら、トダカも乗り気になる。それほど歩き回るのでなければ、ニールも楽しめるだろう。
ようやく、化粧直しが終わったらしく、大広間に音楽が流れ始めた。楽団というほとの規模ではないが生演奏をしている。優雅な三拍子の曲で、それを合図に配置に着く。扉が開くと、カガリと悟空を筆頭に、静々と入場してくる。次が、歌姫様とキラだ。そして、この二組が大広間の中央に進んで、背後を振り向くと、そこから両側からエスコートされたフェルトが入ってくる。きちんと結い上げられた桃色の髪に、小さな王冠が、ちょこんと乗っている。三人が、中央に、ゆっくりと辿り着くと、扉からアイシャとシン、レイも入ってきて、扉を閉めた。全員が、大広間の中央に向かって顔を上げている。
「本日は、フェルトのための舞踏会でございます。どうぞ、みなさま、楽しんでくださいませ。」
こういう口上は歌姫様の担当だ。軽くお辞儀すると、キラと向き合う。それが、合図になって、周囲もカップルになる。
フェルトのほうは、ニールが手を離して、三蔵と向き合う。そして、どちらもお辞儀を一つすると、手を組む。
キラたちが、最初のステップを踏むと、それに合わせて周囲も動き出す。
「桃色猫、適当に俺に合わせろ。」
「はいっっ。」
それを、少し眺めてから、三蔵も桃色猫の腰に手を回して、ステップを踏む。フェルトは、少し練習しただけだが、音感は悪くないのか、ちゃんと踊れている。
「なかなか、様になってるな? 」
壁際に退いたニールの側には、ハイネだ。女性が足りないから、適当に野郎同士でも組んで、フェルトたちの邪魔にならないように踊っているので、壁の花は少ない。残っているのは、トダカーズラブのメンバーが、ほとんどで、こちらは撮影もしている。
「上手いもんだなあ。」
「おまえ、後でチークダンスな? 適当に身体を揺すってれば、それらしく見えるから。」
「了解。」
五番目がニールなので、それまでは三拍子の曲でフェルトには踊ってもらう。一曲ずつは短くして、何人かが相手をする。スタッフは、全員が、それなりに踊れるので、初心者のフェルトのフォローも可能だ。くるりくるりとフェルトがステップを踏むのは、可愛くて微笑ましい。ドレスを着せてみたいなあ、と、ニールが口にしたことが発端で、こんな仰々しい催しになっているが、「遊ぶ時は全力で。」が、モットーの『吉祥富貴』だから、こんなものなのだろう。
「いい経験させてもらってる。」
「たまには、いいんじゃないか? 女の子の夢みたいなもんだし。カガリ姫もオーナーも、ノリノリだったからな。」
フェルトは、こんな世界があることは知らなかっただろう。でも、女の子が一度はやってみたいと思うものだ。だから、体験させてあげたい、と、カガリもラクスも用意してくれた。本当に有り難いことだ、と、ニールも感謝している。
「明後日な、夕方までトダカ家一行で、のんびりしてこいよ? 」
「え? 」
「初めてのオーヴなんだし、墓参りだけじゃ味気ないだろ? こっちは、適当にやるから気にしなくていい。」
こそり、と、耳元に囁くようにハイネに言われて、ニールも、はっとする。野暮用で留守をするということで、詳しいことは話していないはずだった。
「なんで、気付いた? 」
「そりゃ気付くだろ? フェルトちゃんを連れて行かないんだからさ。」
普通の外出なら、フェルトも連れて行くのがニールだ。それが連れて行かないのだから、場所は、あまり言えない場所ということになる。そこから推察される場所で、ニールが思いつく場所なんて、ひとつしかない。付き合いも長くなってきた。ハイネにも、それぐらいは解るし、たぶん、坊主も気付くだろう。
「三蔵さんには、時間があったら行くつもりだって言ってあるんだ。」
「ああ、それなら問題ないな。首都あたりの観光もして来いよ? 特区よりデカイ都市だ。」
周囲に聞こえないように、ニールの腰に手を回した状態で話していたのだが、曲が一端、終わって坊主が戻って来た。桃色猫の前には、トダカがいて、ダンスを申し込んでいるし、カガリたちもフェルトと少し話している。
「お疲れ様です。飲み物は? 」
「今はいい。・・・あいつ、なかなか上手いぞ。」
「そうですか。」
「トダカさん、親衛隊とは踊ってやらないのか? 」
「・・・踊りたくないねぇ。孫娘と娘だけで十分だ。虎さん、明後日の朝、シンとレイと娘さんと少し抜けるつもりなんだが、いいかい? 」
「孫娘は? 」
「フェルトちゃんは、カガリ様とラクス様にお任せしてある。少し野暮用なんだ。こっちで勝手にヘリも手配しているから、午後には戻るんで頼むよ。」
どちらも年代モノのワインを口にしつつ、そんな話をしている。鷹は今回、ラボの留守番なので、虎が全体の段取りのうち移動手段なんかの担当しているので、トダカが話をしている。イベント担当の沙・猪家夫夫にも、先に留守をすることは伝えたから、これで説明も終わりだ。
「了解。まあ、どうせ、わいわい騒ぐだけだ。ニールが不在だと亭主が拗ねるかもしれないが、被害はそれぐらいでしょう。」
「あははは・・・片時も手放さない勢いだからね。うちの娘も、かかりっきりが楽しいみたいだし。いい夫夫だよ。」
そこへ、沙・猪家夫夫とハイネも合流してくる。女性陣の化粧直しなんてものは、時間がかかるものだ。それに、もう、すっかり役割分担も決まっているから、男性陣も気楽に待っている。なぁーんちゃって舞踏会ごっこをやって、適当にダンスをするぐらいのことだ。
「トダカさん、明後日、午後から戻られるっておっしゃってましたが、なんなら一日、ご家族でフリーにされてはいかがです? こちらは、これといって用事もありませんから。」
「そうそう、フェルトちゃんの相手は、適当に居るから問題はないぜ? 坊主にママニャンを独占させるのもムカつくだろ? 」
「うーん、どうなんだろう。うちの娘さんが亭主の相手を疎かにするのを嫌がらないなら、あっちこっち連れ歩きたいとこなんだけど。」
慰霊碑のある島は、今は他には何もないところだが、オーヴ本島には、いろいろと見せたいものはある。ただ、ニールが亭主を気にするだろうから、トダカも、それを言えないでいるのだ。せっかく、オーヴ本国に来ているのだから、特区にないものは見せてやりたいのが親心というものだ。
「いや、一日くらい、いいんじゃないですか? 三蔵は、ニールがいなければ、適当にしているはずですから。」
「居れば世話させるが基本姿勢だから、気にしなくてもいいんだぜ? トダカさん。ママニャンだって、オーヴは初めてなんだから観光もしてくれば、いいんじゃないか? 」
寺の間男のハイネも、そう勧める。慰安旅行なのだから、のんびり遊べばいい。まあ、トダカが行くところの予想はついているので、その場所からオーヴ本島も近いからのことだ。本島は首都だから、特区なんかより大都会で、散策するには良い場所だ。
「じゃあ、少し寄り道させてもらおうかな。」
勧めてくれるなら、トダカも乗り気になる。それほど歩き回るのでなければ、ニールも楽しめるだろう。
ようやく、化粧直しが終わったらしく、大広間に音楽が流れ始めた。楽団というほとの規模ではないが生演奏をしている。優雅な三拍子の曲で、それを合図に配置に着く。扉が開くと、カガリと悟空を筆頭に、静々と入場してくる。次が、歌姫様とキラだ。そして、この二組が大広間の中央に進んで、背後を振り向くと、そこから両側からエスコートされたフェルトが入ってくる。きちんと結い上げられた桃色の髪に、小さな王冠が、ちょこんと乗っている。三人が、中央に、ゆっくりと辿り着くと、扉からアイシャとシン、レイも入ってきて、扉を閉めた。全員が、大広間の中央に向かって顔を上げている。
「本日は、フェルトのための舞踏会でございます。どうぞ、みなさま、楽しんでくださいませ。」
こういう口上は歌姫様の担当だ。軽くお辞儀すると、キラと向き合う。それが、合図になって、周囲もカップルになる。
フェルトのほうは、ニールが手を離して、三蔵と向き合う。そして、どちらもお辞儀を一つすると、手を組む。
キラたちが、最初のステップを踏むと、それに合わせて周囲も動き出す。
「桃色猫、適当に俺に合わせろ。」
「はいっっ。」
それを、少し眺めてから、三蔵も桃色猫の腰に手を回して、ステップを踏む。フェルトは、少し練習しただけだが、音感は悪くないのか、ちゃんと踊れている。
「なかなか、様になってるな? 」
壁際に退いたニールの側には、ハイネだ。女性が足りないから、適当に野郎同士でも組んで、フェルトたちの邪魔にならないように踊っているので、壁の花は少ない。残っているのは、トダカーズラブのメンバーが、ほとんどで、こちらは撮影もしている。
「上手いもんだなあ。」
「おまえ、後でチークダンスな? 適当に身体を揺すってれば、それらしく見えるから。」
「了解。」
五番目がニールなので、それまでは三拍子の曲でフェルトには踊ってもらう。一曲ずつは短くして、何人かが相手をする。スタッフは、全員が、それなりに踊れるので、初心者のフェルトのフォローも可能だ。くるりくるりとフェルトがステップを踏むのは、可愛くて微笑ましい。ドレスを着せてみたいなあ、と、ニールが口にしたことが発端で、こんな仰々しい催しになっているが、「遊ぶ時は全力で。」が、モットーの『吉祥富貴』だから、こんなものなのだろう。
「いい経験させてもらってる。」
「たまには、いいんじゃないか? 女の子の夢みたいなもんだし。カガリ姫もオーナーも、ノリノリだったからな。」
フェルトは、こんな世界があることは知らなかっただろう。でも、女の子が一度はやってみたいと思うものだ。だから、体験させてあげたい、と、カガリもラクスも用意してくれた。本当に有り難いことだ、と、ニールも感謝している。
「明後日な、夕方までトダカ家一行で、のんびりしてこいよ? 」
「え? 」
「初めてのオーヴなんだし、墓参りだけじゃ味気ないだろ? こっちは、適当にやるから気にしなくていい。」
こそり、と、耳元に囁くようにハイネに言われて、ニールも、はっとする。野暮用で留守をするということで、詳しいことは話していないはずだった。
「なんで、気付いた? 」
「そりゃ気付くだろ? フェルトちゃんを連れて行かないんだからさ。」
普通の外出なら、フェルトも連れて行くのがニールだ。それが連れて行かないのだから、場所は、あまり言えない場所ということになる。そこから推察される場所で、ニールが思いつく場所なんて、ひとつしかない。付き合いも長くなってきた。ハイネにも、それぐらいは解るし、たぶん、坊主も気付くだろう。
「三蔵さんには、時間があったら行くつもりだって言ってあるんだ。」
「ああ、それなら問題ないな。首都あたりの観光もして来いよ? 特区よりデカイ都市だ。」
周囲に聞こえないように、ニールの腰に手を回した状態で話していたのだが、曲が一端、終わって坊主が戻って来た。桃色猫の前には、トダカがいて、ダンスを申し込んでいるし、カガリたちもフェルトと少し話している。
「お疲れ様です。飲み物は? 」
「今はいい。・・・あいつ、なかなか上手いぞ。」
「そうですか。」
作品名:こらぼでほすと ダンス4 作家名:篠義