こらぼでほすと ダンス4
デモンストレーションのような踊りが終わると、また休憩時間になる。生演奏のほうは、その時間も適当な音楽を奏でている。その頃になって、衣服を取り替えたキラとカガリが戻って来た。双子で、似たような背格好だから、違和感はない。キラがドレスで頭にティアラを乗っけているが、店でも見るから、誰も不思議には思わない。身体つきは、すっかり青年らしくはなっているが、元々はインドア派だから、それほど目だって筋肉がついていないからだろう。対して、カガリはアウトドア派だから、ちゃんとした筋肉があって体格的に、似たようなことになっているので、カガリのモーニング姿も、見劣りはない。
「お待たせ。」
「キラ、可愛い。」
「そう? ありがとう、フェルト。」
「まずは、おかんと踊るんだろ? フェルト。私はキラと踊るから、途中で交代しよう。」
「うん。」
では、曲を頼む、と、カガリが声をかけると、休憩していた面々も大広間の真ん中へ出てくる。今度は、大人しい音楽だ。ワルツのように、手を延ばして構えるのではなく、割と密着している。
「えーっと、適当に音楽に合わせてればいいらしい。」
「うん。」
で、適当に、と、言っても音感に乏しいニールには、それも難しいので、付近で踊っているキラとカガリのペアと同じように動く。とにかく、フェルトの足は踏まないように気をつけるので精一杯だ。
「楽しいか? 」
「うん、楽しい。こんなドレス、本当にあるとは思わなかった。」
「そうだよなあ。俺もテレビか雑誌でしか見たことないよ。・・・おまえさんにドレス着せてみたいって、俺がリクエストしたら、こんなことになったんだ。」
「うん、それは聞いたよ。・・・・ありがと、ニール。」
「楽しんでくれれば、それでいいんだ。」
「刹那、怒らないかな? 」
「こればっかりは、女の子の特権だろ? 刹那がダンスしたいって言わないと思う。それに、あいつ、来月には降りて来るから、どっかに連れ出しておくさ。」
「そうだね。刹那は、ドレスなんて興味はないよね? 」
「あったら、問題だ。」
ふらふらと揺れつつ会話していたら、いきなりフェルトを横手から攫われた。そして、ニールの前にはドレスのキラだ。
「フェルトの相手は交代だ。」
とても踊っているようなもんではなかったので、カガリとキラは、予定より早く乱入した。するすると、フェルトはカガリとターンして離れていく。キラも、ニールをダンスしている風に見せかけて放した。そこで、今度は背後からハイネがニールの肩に手をかける。
「やっぱ、ここは間男だろ? 」
そして、キラのほうにはアスランだ。
「お姫様、攫われてくれる? 」
「もちろんだよ、アスラン。」
で、派手にお姫様抱っこして、そのまんまターンする。キラのほうは、そのまんま、アスランの肩に手をかけて、フェルトに手を振っていたりする。
ハイネが背後からニールの前に出てくる前に、レイが、ニールの手を取って、ハイネから引き剥がす。さらに、ニールの手は悟空に取り代わる。フェルトのほうにも、シンが乱入だ。カガリからフェルトを横取りして踊っている。
「こらっ、シン。」
「おまえは、オーナーと踊れ、カガリ。」
「私はフェルトがいいんだ。」
なんだか、優雅な舞踏会じゃなくなってるなあーと、ニールが、それを笑って眺めていたら、悟空からアイシャにチェンジしてハグされた。
「うわっ、アイシャさん。」
「はーい、ニール。」
「やめてくださいよ。俺、虎さんに殺されますって。」
「大丈夫よ。次は、アンディーだから。」
はい? と、思っていたら、虎が背後からアイシャの手を取っていた。虎夫婦に挟まれた形になったニールは、その腕から抜け出したところで、トダカに捕まる。
「ようやく、娘さんと踊れるなあ。」
「トダカさん、無理ですって。」
「大丈夫だよ。はい、一、二、三。・・・ついておいで。」
トダカの足を見て、ニールも同じようについていく。足捌きを確認しつつなら、ニールでも、なんとかなる。フェルトの様子を、ちらりと見たら、あちらも入れ替わり立ち代り相手が代わりながら踊っている。
「こういう踊り方もあるんですか? 」
「いや、余興。みんな、フェルトちゃんと踊りたいから、適当にチェンジして踊ることになってたんだ。一曲ずつだと、フェルトちゃんが疲れるからね。」
へぇーと油断したら、今度は悟浄に相手が代わる。トダカの相手は八戒だ。
「俺は、チェンジしてもらわなくてもいいんですが? 」
「まあ、そう言うなよ、ママニャン。おまえとも踊りたいってんだからさ。ほら。」
悟浄から、次にハイネだ。みんなが、パートナーを入れ替えて踊っているらしい。
「愛してるぜ、俺のお姫様。」
「やめろよ、気色悪りぃぃ。」
「あははは・・・・ここは一発、間男としてはホストトークは必要だろ? このまま、適当に踊って終わりだ。」
「あいよ、了解。うちの亭主は? 」
「そこいらで寛いでるよ。はい、チェンジ。」
次に、歌姫様だ。ニールが、踊れなくても、ターンに誘導して、勝手にしてくれる。
「ママと踊れるなんて嬉しいです。」
「踊れてないけどな。」
「うふふふ・・・一応、それらしくは見えておりますよ? 」
「なら、いいけどさ。」
そんなふうに、パートナーがチェンジしていく踊りをして、その日の舞踏会は終わった。フェルトには新鮮で忘れがたい思い出になっただろう。
作品名:こらぼでほすと ダンス4 作家名:篠義