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Idiot【IS×仮面ライダーフォーゼ(能力のみ)】

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<プロローグ=Dieu n’est pas>


 この俺、河原一也はごくごく普通の高校一年生、代わり映えの無い日常、家族もまともで学校生活も順風満帆、彼女はいないが友達もそれなりに居て、幸せで、とても退屈な人生を送っている。
 そんな俺の趣味は特撮番組の鑑賞とライトノベルの購読、最近は近頃活動を再開したインフィニットストラトスの改装版を読むのが日課だ。
 それにしてもこの作品……以前は何気なく読んでいたが、最近の作者の言動やネットの感想を見ると、読めば読むほどツッコミ所の多い作品だと思う。
 無気力のくせにいざという時はありえない主人公補正で逆転するホモ野郎一夏、そしてその主人公にとても理解できない理由で惚れるヒロイン達、世界観の破綻具合、もうマジで何なんだと思う。

 俺がこの作品の登場人物だったら、束なんという高慢なコミュ障女をぶちのめしISなんてものを無くして、主人公を排して、ヒロイン達に……特にシャルロットに本当の恋というものを教えてやるのに(二組の人はいらん)、まあそんな事を考えていても、俺はISの主人公じゃないのでどうしようもないんだけどな。

 そんな事を考えながら、俺は今日も下校時間になったので部活動のある友人たちと別れ、日課であるライトノベルが置いてある本屋へ向かう。無論立ち読み目的だ。金の無い高校生にはライトノベルの大人買いなんぞ夢のまた夢の行いなのだ。

 そして人気の無い信号が青の交差点を渡る俺、次の瞬間……俺目掛けて猛スピードでトラックが突っ込んできた。

「!!」

 運転席を見ると、運転手らしき人間がコクリコクリと舟をこいでいる。眠りの世界に入りかけているので俺の事は気付いていないようだ。

 逃げなくちゃ、でも足が動かない、トラックが徐々に近付いて来る。5m、4m、3m、2m、1m、0m……俺の体に衝撃が襲った。でも、痛みは不思議と感じなかった。
 そしてそのまま俺の意識は暗闇に沈む、同時に「河原一也」という存在はこの世からきれいさっぱり無くなった……。



☆ ☆ ☆



 気が付くと俺は、どこまでも真っ白な世界に一人で立っていた。辺りを見回しても真っ白な世界、体験したことのないような状況に俺の心に不安が募る。

「まさか、これが死の世界……?」
「ええ! その通りです!」
「うわ!?」

 突然、後ろから声を掛けられ俺は飛び退く。そして声がした方角を見ると、そこには白いスーツに金箔を施してキラキラしているネクタイをした、銀髪オールバックの男が立っていた。

「あ、あんた誰だ!?」

 俺の質問に対し、男はニヤニヤと笑って答える。

「神様です」
「はあ!?」

 何を言っているんだこの男は? 頭おかしいのか? こんなある種狂気じみた場所に居たらそうなってもおかしくはないが。

「うーん、信じて貰えないようですね……まあいいでしょう、まずは簡単に貴方の状況を説明します! アナタは先程、トラックに轢かれて死にました!」
「お、おう」

 とりあえず俺はその男の話を聞くことにした。

「しかし! アナタはあの場で死ぬ運命ではなかった! 本当なら天界の定めた寿命により後100年は生きる筈だったのです!」

 100年!? マジでギネス級に長生きする筈だったのか俺!? そう思うと勿体無いような、代わり映えの無い人生を後100年も生きるのは苦痛というか……。

「これは明らかに私達のミス! という訳で貴方には別の人間として生き返ってもらい、生きる筈だったもう100年を謳歌してもらいます!」
「え、あの……普通に生き返るじゃ駄目なの?」
「残念ながら前世のアナタの肉体はついさっき火葬されたので戻りようがありません! 誠に申し訳ございません! その代り前世の記憶を持ち越したまま! 好きな世界に、好きな能力を持って転生させていただきます!」

 その言葉に、俺は耳をぴくっと動かす。これは確か……ネットの二次創作小説でよく使われる手法であるチートオリ主の転生というものじゃないか!? 強くてニューゲームともいう奴!?

「あ、あの! ラノベとかアニメの世界とかでもいいっすか!?」
「もちろん!!」
「能力とかも!?」
「もちろん!!」

 そう言われて、俺はうーんと悩み始めた。行く世界はもちろんISの世界だろう、なら持ち越せる能力は何がいいだろう。
 まっさきに浮かんだのは特撮の中でも特にカッコいい平成仮面ライダーシリーズ、その中でもサイバーな雰囲気を醸し出す作品がいい。

 ファイズは……駄目だ、折角寿命が100年もあるのに寿命の短いオルフェノクになる必要が無い。
 カブトは……悪くないけどパワー不足だし、シナリオがクソすぎてぶっちゃけ嫌いだ。
 他にも候補が浮かんだが、最善だと思ったのは一つしかなかった。

「あの……フォーゼドライバーください! スイッチも40種全部! 劇場版仕様も付けて!」
「ハイ解りました!」

 男は指をぱちんと鳴らすと、俺の手元にはフォーゼドライバーが収まっていた。もちろん市販のおもちゃなどではなく、重量感から本物だという事が解る。

「はあああ……アンタ本当に神様だったんだな!!」

 俺は目の前の男を完全に尊敬の眼差しで見ていた。すると男は俺に一枚の紙を渡した。

「ではこの紙に転生した時の設定を記載しておいてください! 極力反映しておきますので!」
「わっかりましたぁ!!」

 俺はポケットに入っていたボールペンで渡された紙に色々書き込み、それを男に渡した。

「では、よい人生を……」

 男はニッコリ笑いながら手を振る。その瞬間俺の視界は強い光に包まれた……。