二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
たままはなま
たままはなま
novelistID. 47362
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

その男、蠱惑的につき

INDEX|1ページ/2ページ|

次のページ
 
その男、蠱惑的につき



僕は、この動画をもう幾度リピートしているのだろう。
虎徹さんが踊っているPVは、実に素晴らしい出来上がりで見飽きる事がない。
この人の魅力を余すところなく切り取っている。
少し悔しいのは、こんな虎徹さんを僕以外の多くの人が知ってしまう事。
僕だけのものにしておきたかった表情が此処にあった。



あるアーティストからPVのオファーが来たのは、
僕と虎徹さんが1部に復帰して暫く経った頃の事だった。
メンバーは虎徹さんをメインにアントニオさんと折り紙先輩を起用して、
内容は曲に合わせてダンスをするというものだ。
当初、ヒーローの仕事ではないと固辞しようとしていた虎徹さんだったが、
ロイズさんからの強力な押しや、アーティストからあった直接のとても熱心な説得に、
仕方なく折れてそのオファーを受ける事になったのである。
改めて送られてきた映像監督、振付師、スタイリスト等の資料と、
イメージを虎徹さんに分かりやすく説明するためのとても詳細な絵コンテを見て、
(そんなものを貰っても、虎徹さんは、資料の類をきちんと見るような人ではないので、
当然、僕がチェックを入れる。)
僕も飛び入り参加させてもらえるようにロイズさんに掛け合った。
PV制作のメンバーが、その筋では有名な虎廃の男性ばかりであったからだ。
いくらアントニオさんや折り紙先輩が一緒であっても、
あの人達に虎徹さんの身の安全を任せておけるわけがない。
ヒーローである彼は、犯罪者に対しては一歩も引く事などないが、
一般人に対しては、非常にガードが甘くなってしまう。
何かあってからでは遅いのだ。
僕がしっかりと傍に居て目を光らせていないといけない。
万一、打ち上げでも行きませんかなどと言われて付いて行ってしまったら、
何があるか分かったものではないのである。
そんなわけで、急遽、僕の出番を捻じ込んでもらう事にし、
スタッフやロイズさんを説き伏せて何とか成功した。
「僕達はバディですから。」
この魔法の言葉を使えば、最終的にはどうにかなるのである。

PV撮影の打ち合わせの時、今回はアイパッチ無しでとの話に虎徹さんは難色を示した。
「ヒーローは素顔を晒すものではない」という持論によるものだが、
監督は、アイパッチでは表情が隠れてしまうので是非にも素顔でと主張して譲らない。
そこへ、スタイリストが折衷案として、眼鏡を掛けてはどうかと言ってきた。
実際問題、マーベリックの事件があった時に、
彼の素顔は殆どの市民の知るところとなってしまっているので、今更ではあるが、
しかし、それでも、会社も彼も公式に認めたわけではないので、
今も表向きには彼の素顔はシークレット扱いとなっている。
仕方なく、レンズに少し色を掛けた眼鏡を使う事で妥協する事になった。
また、顔がかなりのアップになる場合には、
その下にカラーコンタクトで印象を変えてもらうようにして。
眼鏡では心許ないと虎鉄さんはごねたが、ここまで譲歩してもらったのだ、
僕からも取り成して彼を納得させた。



そして、PV撮影の当日を迎えた。
虎徹さんの衣装は、普段に来ているものと同型同色でネクタイ無しのバージョンと、
シャツとベストは同型、パンツは少しゆったりした型のもの、
足元はレースアップのハーフブーツで、首には革のチョーカー、革の手袋、
それぞれを黒で統一したもののバージョンが用意された。
僕は何時もの黒のカットソーにワークパンツとブーツ。
その上に羽織る黒のパーカーが用意され、
アントニオさんは、普段のバージョンと、
白のシャツに黒のパンツに黒のエナメルシューズのバージョン。
折り紙先輩は普段の服のみ。
これだけ見ても、虎徹さんへのスタイリストの力の入れようが見て取れるというものだ。
控室で衣装に着かえると、スタイリストがあちこちと整え始める。
特に、今回のメインである虎徹さんに対しては、シャツのボタンを何処まで外すか、
掛けては外し、外しては掛け直してもっとも良いスタイリングを探す。
執拗に何度も繰り返すのを、虎徹さんはプロの拘りは凄いなどと言って関心しているが、
それだけでない事を分かっていないのは虎徹さんだけだったろう。
ボタンを掛ける時よりも外す時の方が明らかに嬉々としているのを、
アントニオさん達も気が付いて、居た堪れない顔つきで見ていた。
「あまり深く開け過ぎると品が良くないのでは?」
などと、眉間に皺を寄せないように気を付けながら、それとなく牽制していたのだが、
結局はベストの開きのギリギリまでシャツを肌蹴る事に決まってしまった。
確かにその方が虎徹さんのセクシーさを引き立てるのであるが、
セクシーな虎徹さんを他人に披露したくない僕は、眉間に深い皺を刻んだ。
それでも、黒の衣装のシリーズの全てを買い取る約束を取り付けるのは忘れない。
黒の革のチョーカーと黒の皮手袋が、ストイックでありながら扇情的で、
あまりにも虎徹さんに似合っていたから。
僕の家で休日を過ごす時に着てもらうのだ。
外に行く時には、危険過ぎるので絶対に着せたりしない。
みすみす犯罪者を作る様なものだである。
では、家の中であの服装をしてもらう意味とは・・・。
そこは聞かないでいても分かってもらえると思う。

撮影が始まる。
ダンスのステージとエフェクトは後でCG合成するが、
虎徹さんが一人で椅子に座っているカットは、
白いソファーに黒のクッションが配置され、背景は真っ白のステージが用意され、
黒い衣装をまとった虎徹さんを引きたてるように計算されていた。
振付は、アラビックダンスの要素を取り入れた、時に腰をくねらせるセクシーなもので、
驚異的な細腰を誇る虎徹さんをより魅力的に見せるのに効果的だった。
リズミカルな動きの間にゆっくりとした動きが入り、
細く長い手足がゆったりと誘うように揺らめく。
つまり、虎徹さんの長所を最大限に引き出す振付けになっている。
流石は名うての虎廃、よく分かっていると感心してしまう。
振付師が練習に付き合っている時に、腰をここまで振ってと体に触れた時には、
見ていた僕は血が出るかと思う程、拳を握りしめて耐えたものだ。
あの時、よくぞ耐えたと自分を褒めてやりたい。
お蔭でこんなにも妖艶な虎徹さんを見られる。
更に、大きく胸元を開けた虎徹さんが動く度、
くっきりと浮き出た鎖骨と、しなやかな胸筋の動きが目を奪った。
こんなに色気を漏れ出させているというのに、それに当てられない人間など居ない。
スタイリスト、カメラマン、監督、その他、この場に居たスタッフの誰もが、
虎徹さんの艶めかしさに目を奪われ、うっとりと見ている。
当の本人は振付けされた通りに踊るのと、
撮影監督の要望する表情を作るのに必死で、爪の先程も気が付かないわけだが。
こういう鈍い人だから、僕がこの人を魔の手から守らなくてはならないのである。
カメラマンも当然の様に虎廃を公言して憚らない人だったので、
ダンスシーンでも何度もリテイクを出していたが、
一人でソファーに腰掛けている虎徹さんの表情を撮るのには特に時間を掛けた。
画面いっぱいのアップにするというので、