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たままはなま
たままはなま
novelistID. 47362
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その男、蠱惑的につき

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眼鏡の下に、用意された能力発動時に似た蛍光ブルーのコンタクトを着けている。
黙ってカメラを見詰める姿、それがまたとてつもなく人の心を乱すのだ。
撮影現場のあちこちからため息が漏れ聞こえた。
虎徹さんにたいして、カメラマンと撮影監督から、
もう少し上目使いでとか、指先をちょっと悔しげに噛む感じでとか、
とにかく細かく注文を入れるので、このシーンだけでも、
大幅に予定時間を押してしまった程だった。
あの上目使いも、指先を噛む甘そうな唇も、すべては僕だけのものなのに、
こんなにも惜しげも無く晒されてしまうなんて、本当はとても我慢ならないが、
仕事とあっては、ここは割り切って、完璧な映像を撮ってもらうしかない。

撮影が終わったのは、予定時間を随分と過ぎた深夜。
それでも、すっかり魅了されてしまったスタッフ達は虎徹さんと離れがたいらしく、
案の定、この後簡単な打ち上げをしますがご一緒に如何ですかと誘ってきた。
そんなものは、却下に決まっている。
僕は飛び切りの営業用の笑顔を貼り付け、
「僕達は体を休ませるのも仕事の内なものですから、これで失礼します。」
と断ってしまい、さっさと虎徹さんを連れ帰って来た。
もちろん、帰宅して直ぐに休むわけがない。
僕以外にあんな仕草や、こんな表情を見せるのはこれきりにしてもらいたいと、
虎徹さんには罪が無いとは分かっていながら、お仕置きをせずには居られなかった。



そうして出来上がった映像に音を入れたチェック用PVのデータを受け取ったのが今日。
僕は帰宅してからずっと、壁一面のスクリーンにこの動画を映し続けているのだ。
パンチ主体の攻撃用に鍛えられた体は、肩幅がしっかりとしているけれど、
それを支える腰から足に掛けては、バレリーナのそれの様にしなやかで細い筋肉で、
キュッと引き締まっている。
もともと、オリエンタル系はあまり筋肉が盛り上がり難いらしいのだが、
彼の場合は、殊更それが顕著で、ハンドレッドパワーを発動していない時には、
強烈なパンチを繰り出す腕でさえモデルの様に適度にほっそりと見えるのだ。
足も細く長く、尖った顎と相まってシャムネコに似ている気がするスタイルをしている。
そういえば、シャムネコの骨格をオリエンタル系と言うのだったと思い出す。
そのすんなりとした腕や脚が撓って、えも言われぬ艶を発散する虎徹さんらしい。
止めポーズを決める度、腰の細さに目が留まり、抱き寄せたくなってしまう。
アントニオさんと組む事で、虎徹さんはより華奢に見え、
折り紙先輩がいる事で、より大人の色気を感じさせる事に成功している。
虎廃のプロデューサーの見事な配役といえた。
特に、最後の顔のアップは出色の出来だ。
黒い皮手袋の上から親指を軽く噛んで、
上目づかいでじっとこちらを見詰めてくる。
これで誘っている気は全く無いなんて、この人はどれだけ無自覚なんだろう。
全ては虎廃の虎廃による、虎徹さんの魅力を広める為の仕上がりに、
虎廃の急増を予感した。
これは、暫く一人で出歩かせる事は出来そうにない。

「バニー、飯出来たぞ!」
キッチンからリビングに夕食を運んできた虎徹さんが、
僕がPVをリピートしているのを見て呆れた声で言った。
「お前、それ何回観てんの?」
虎徹さんは、僕の心配になど気が付かない。
「・・・虎徹さん、貴方は僕だけのものですよね?」
彼が僕の不安げな声音と表情に弱いのを知っていての言動だ。
一瞬、目を見張ったが、直ぐに照れくさそうに俯いて、
頬をポリポリと人差し指で掻く。
「んー、まあ、ある意味・・・そうだけどさ・・。」
頬が染まっているのが可愛い。
「ある意味って、どんな意味です?」
少し意地の悪い質問の仕方をしてみる。
虎徹さんは耳まで赤くして、そっぽを向き、口を尖らせた。
「お前、意地が悪い・・・。」
ぼそぼそと口籠るのも愛おしい。
「どんな意味で僕だけのものなんですか?」
耳元で囁くように訊ねる。
ピクリと肩が跳ね、眉尻を下げた虎徹さんは、
色々な意味で食べてしまいたいくらい可愛らしい。
「だっ!そんくらい分かれよ!」
分かっていたって、その口から聞き出したい。
それくらい分かって欲しいものだ。
「僕が思っているのと同じ意味かどうか確かめさせてもらってもいいですか?」
腕の中に愛しい人を捕らえる。
「・・・いいけど、せっかくの飯が冷めちまうから、飯の後でな。」
素っ気なさを装っても、体温の高さがそうでない事を物語って、
もう僕は我慢など出来そうになかった。
「食事は後で温め直しましょう。今は貴方の熱が冷めないうちに食べてしまいたい。」
横抱きに虎徹さんを抱き上げ、僕は寝室へと直行したのだった。



END