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たままはなま
たままはなま
novelistID. 47362
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Call Me Maybe

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彼に近付きたくなっても、それまでの僕を考えると簡単に素直になどなれなくて、
どうしたらいいのか戸惑うばかり。
他人の方から好意を向けられるのに慣れきってしまっていた僕は、
こちらからアプローチする方法など知らずにきてしまったのだ。
そんな時に、大人組の飲み会で盛り上がって終電を逃してしまった虎徹さんを、
僕がブロンズの彼の家まで送って行ったのだった。
「また終電を逃して帰れなくなる様な事があったら電話して下さい。」
そう言って、彼に僕の電話番号を書いたメモを渡した。
バディである僕らは、お互いの携帯の電話番号などとっくに知っていたが、
余程の事でもなければ電話をかけ合ったりする間柄とは言い難く、
これは、僕の精一杯の歩み寄りの第一歩だったのだ。
虎徹さんは、金色にも見える瞳を瞬いて驚いていたが、
にかっと笑ってメモを受け取ってくれた。
「ありがとな、バニー。」
たったそれだけの言葉が、どれ程僕を幸せな気持ちにしてくれたのか、
この時の彼に伝わっただろうか。
僕が初めて虎徹さんをファーストネームで呼んだ時、
嬉しくて飲みに行ってしまったという彼の喜びと同じかそれ以上に嬉しかったのだ。
仕事の為に僕の電話番号を渡す事は、ままあることだったけれど、
プライベートで僕の方から電話番号を渡したのは彼が始めてといっていい。
「僕が自分から電話番号を渡すのは、貴方が始めてなんですよ。」
どんなに欲しがられても、僕はやんわりと躱し続け、
会社の電話番号の記された名刺を渡したことしかない。
「え?そうなの?お前、すっげえモテまくってるのに?」
「簡単にプライベートを売る気はありませんから。」
会心の笑みを付けて答える。
虎徹さんは刹那、真面目な顔でメモに目を落として返した。
「そっか。俺、ホントに嬉しいよ。」
道端に咲く花に気が付いた時のような温かい笑顔を彼は見せたのだった。
それからは、些細な事でもよく電話が掛かるようになった。
もちろん、終電を逃してしまった時にも。
何度か彼の家に送ったが、
次第に、何かと理由を付けては僕の家に連れて帰るようになっていったのである。

そうしているうちに、マーベリックの事件が起きた。
彼は次第に減ってゆく能力の発動時間の事もあり、
愛娘の元へ、今までの分のも含めた約束を果たす為に帰って行った。
僕も、自分の足で立てる人間になる為に、世界を巡る旅に出た。
その間も、僕達は頻繁に電話をし、近況を報告している筈だったのだが・・・。
嘘を吐くのはとことん下手なくせに、
隠し事をするのに掛けては詐欺師も顔負けに上手い彼は、
僕に黙って、こっそりヒーローに復帰してしまっていたのだった。
能力の発動時間の減少が1分で止まって安定した事も知らせてくれなかった彼。
まったく、こんな酷い話はない。
僕達は、二人揃ってこそだというのに。
それが彼の優しさと気遣い故だと分かっていないわけではない、
きっと、電話の前で何度も言おうかどうしようかと悩んでくれたのだろうと思う。
でも、自分の人生を探す僕の枷になる事があってはならないと、
結局は僕には知らせずにいる方を選んだ。
虎徹さんというのは、そういう人なのである。
彼がヒーローに復帰し、2部で活動を始めていたのを知ったのは、
文字通り、シュテルンビルドからは地球の反対側に滞在していた時だった。
他のヒーロー達とも連絡を取り合う様になっていた僕に、
折り紙先輩から届いたメールに添付されていた動画。
1部のヒーロー達の映像の端に、見切れるように映る2部ヒーローの中に彼が居た。
僕は直ぐにアポロンメディアの元上司、ロイズさんに電話を入れた。
「そろそろ電話を掛けてくる頃だろうと思ってましたよ。
何時こっちに戻って来るの?」
そこからの僕の行動は早かった。
直ぐに一番早く帰れる飛行機の便を予約し、荷物を纏めると空港に直行して、
翌日の夕方までにはシュテルンビルドに帰還したのである。
僕のスーツが斉藤さんによる完璧なメンテナンスを済ませるまでに、
両親の墓前に帰還と復帰の報告に行った。
会社に帰ると既に虎徹さんは出動しており、僕も彼の後を追って出動した。
彼の行動予測など簡単につく。
僕は虎徹さんが犯人にお説教をしている間に先回りをして待っていた。
そして、案の定、彼はもう一度僕の腕に落ちてきたのである。
光を反射してキラキラと輝くガラスの破片をバックに。
フェースガードを上げている彼の驚きに見開かれる目を見た僕の心臓は、
これ以上ないくらいの早鐘を打って、胸から飛び出しそうに思えた。
この人は、やはり僕を新しい一歩へと踏み出させる。
僕の居場所は、彼の隣をおいて他には無い。
またしても虎徹さんに僕は落ちた。
今度は絶対に離してなどやらないし、離れていかないと誓う。
「これ、僕の電話番号なんです。
何かあったら、必ず僕に電話をして下さい。僕を呼んで。分かりましたね。」
僕は有無を言わせなかった。
「・・・分かった。電話、必ずするから。」
虎徹さんの頬が染まっていく。
この気持ちをどう表現すればいいのだろう。
待ち焦がれていたものが、やっと僕の元にやってきたのだ。
彼は、もう僕に隠し事をしない。
僕達は二人でいる必要がある存在同士なのだと分かってくれた。
こういうのを天にも昇る気持ちというのかも知れないと思ったのだった。

虎徹さんは僕のもの、僕は虎徹さんのもの。
それを充分に分かり合い、今の僕達がいるのだけれど、
彼は相変わらず自身の魅力に超絶に疎く、僕は苦労を強いられている。
今夜も、仕事がらみのディナーに引っ張り出されていながら、
幼馴染のヒーローと何時ものバーで飲んでいるらしい彼からの電話を、
今や遅しと待ちうけている僕なのであった。



END

作品名:Call Me Maybe 作家名:たままはなま