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たままはなま
たままはなま
novelistID. 47362
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Muse

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別のデザイナーからは艶の無い真っ黒の一揃いが着方のレクチャー付きで。
(胸元のボタンを3つ開けて着るようにとあった。
そんな色っぽい恰好で外を歩かせたりはしないけれど。)
また皮革を主に扱うメゾンからは、シープ革のベストとベルトタイプのチョーカーが、
懇意にしている別会社のデザイナーに依頼して、
艶のある黒のシャツとワークタイプのパンツを作らせてセットにして贈られた。
それには、ワークブーツ風のレースアップのハーフブーツまでそろえられており、
黒の革に真っ赤な靴紐、特徴的な靴底とヒールの赤が映えて、
どこのメーカーが依頼に加わったのか一目でわかったものである。
婦人向けのブランドが、紳士靴、
しかもこんな斬新なカジュアルに進出するとは思わなかった。
虎徹さんの影響力、恐るべしである。
彼本人が何もしていなくても、パーティーで実際にその目にし、話してみると、
色々とインスピレーションが湧きあがるというのは、強ち嘘でもないようだ。
眼鏡はセルフレームのツルに、
鏡面仕上げのシルバー素材がワンポイントで埋め込まれていて洒落ていた。
これは、休日に二人で出かける時に活躍している。
「タイガーの足に、ピンヒールのシンプルなストラップサンダルを履かせてみたい」
と、ピンヒールサンダルを贈られた時には流石に驚いたものであった。
試着させると、とんでもなくセクシーで似合うと分かったが、何時もは履かせられない。
黒の何でもないスキニーパンツに合わせただけで、足元から情欲を感じさせたからだ。
無駄を削ぎ落とした様に本当にシンプルな黒いそのサンダルは、
時にちょっとした変化が欲しい時に、お願いして履いてもらう特別な一足になった。
「ワイルドタイガーの肌に馴染む、勝負色の口紅」なるものを贈られた時には、
確かに、虎徹さんの小麦色に近い肌に、品良く似合う朱赤の口紅だったけれども、
ファッション界の何処の辺りまでが彼に浸食されているのか分からなくなったものである。
これらの贈り物は、ワイルドタイガーモデルとして実際に店頭に並ぶ事もあり、
少しアレンジされたものがショーを賑わす事もあった。
そして、それぞれに売り上げに貢献する人気を博したのである。
彼らにとって、ワイルドタイガーというのは、
インスピレーションを与えてくれる“ミューズ”であるらしい。
僕にとってのワイルドタイガーは相棒で、虎徹さんは可愛い恋人だけれど、
前に進む力を与えてくれる“女神”のような人でもあるのだ。
どんな時にも慈愛に満ち、僕を抱きしめて悪夢から救い出してくれるのである。
彼を抱きながら、僕の方が抱かれていると感じる時も多い。
「こんなおっさんが“ミューズ”だの“女神”だのって何の冗談?」
そう言ってけらけらと虎徹さんは笑う。
この人は、自分の魅力に疎過ぎるのだけれど、人を引きつけて止まない人だ。
“天然たらし”という言葉は虎徹さんの為にあるような言葉だと僕は思う。
今度はどんな人たちに目を付けられるか気が抜けない。
好意を向けられる事に弱くて、直ぐに流され気味になってしまう虎徹さん。
そんな所も可愛いと思うわけだけれども、
元KOHである恋人の僕が、鉄壁のガードをしてやらなければと心に誓うのであった。



END
作品名:Muse 作家名:たままはなま