Misconfiguration
俺の謝罪に、アルケミストがどんな顔をしたのかは、うつむいていたからわ
からなかった。ただ、しばらく後に、ためいきをついたっていうのだけは聞こ
えた。
「来い」
さらにその後、アルケミストは俺の手首を掴んだ。
「え?」
驚いた顔をする俺の様子を気にすることなく、彼はずんずんと宿の廊下を歩
く。思い切り足をふんばれば、彼の足を止めさせることは可能だろうけど。そ
んなことはせず、俺は彼に従った。
彼が俺を連れて行ったのは、俺の――というか、俺とパラディンが借りてい
る部屋だった。
「邪魔をする」
適当なノックにパラディンが答えるのを確認すると、アルケミストはそう言っ
て部屋の中に入った。
装備の手入れをしていたパラディンは、目を丸くして俺たちを見ていた。
「夕飯をおごってやる。だから、コレをつれてけ」
そう言い放って、アルケミストは夕飯というよりは、宴会が開けそうなen を
パラディンに差し出した。
「は? 一体なんだ。今すぐか?」
「別に。どうせ夕飯には出るんだろう」
促され、金を受け取りながら、パラディンは俺を見た。その、事情説明を求
めているような目つきに、俺は黙って首を横にふる。
「まぁ、文句を言う筋合いはないんだが」
「足りなければ言え」
そこまで言うと、アルケミストはくるりと踵を返した。え、ちょっとなんで!
「ど、どうせならアンタもいっしょに行けばいいだろう!」
今にも部屋の扉を閉めようとしていたアルケミストに、俺はあわてて声をか
けた。アルケミストは一応足を止め、こちらを見る。
「俺はいい」
ただ一言、そう言い残すと、彼は扉を閉めた。わりと、穏やかな閉め方だった。
追いかけることもできず、じゃあありがたくおごりで飯食い行くか! なん
てことも言えず、俺は中途半端にてのひらをもちあげた格好で固まった。
「どうするんだ? まぁ、返しに行くというなら止めないが」
しばらくの後、パラディンが斜め下から俺に問いかける。
「……なぁ。俺、そんっなにアルケミストに嫌われてんのかな……↓」
情けない声に対し、パラディンは黙って肩をすくめた。その後。
「リスに糸を取られた」
うっ;;;;;;
「湖に落ちた触媒をひっくり返した連携に失敗した自分から毒をあおった」
;;;;;; 嘘じゃない、嘘じゃないけど! そ、そこまであげつらうことないじゃん!
ないじゃん! ていうか実はオマエも俺のこと嫌いだろうTT
パラディンは立ち上がると、半泣きの俺の肩をポンと叩いた。
「まぁ、飲め。せっかくのおごりだ」
「うあああああああそんな諦めきったよーな言い方するなーTT」
「というかむしろ、ヤツに嫌われていない相手というのは存在するのか?」
パラディンのしみじみとした言葉に、俺はがっくりと肩をおとした↓↓
数日後、磁軸へと向かうアルケミストを俺は呼び止めた。うん、きっとこれ
なら喜んでくれるに違いない。
「新しい技を身につけたんだ♪」
何で自分にと言いたげに、アルケミストは首をかしげる。にやり。でも、関
係あるから報告したんだなこれが♪
「ヘッドバッシュをおぼえたから。この前みたいに混乱しても、今度は……;;;」
「今度? ^^」
「……こ、今度混乱したら、もうちょっとうまく止められるよー……って……;;;」
え、なに? 何その笑顔。そうかとかなんとか、頷いてるのがやけに怖いん
だけど;;;;;;
「それはありがたい。……俺もこの前のでオマエを止めるには核熱の術式一発で
は足りないことがわかった。ちゃんと二発分待機させておくから、思う存分混
乱するといい」
ええええええええええっ! ちょっと待て、ちょっと待って! 何? 何で、
何で怒ってんだよ>< 今度はうまくやるって言っただけじゃん! 何で?
なんなんだーっ! TT
俺の心の声を聞いてるのか聞いてないのか。すたすたとアルケミストは磁軸
へと向かう。メディックが、はやく来いと俺を呼んだ。俺はのろのろ歩き出す。
……俺、なんでこんなに嫌われてるんだろう……;; やっぱりこの前のダブ
ルアタックがやりすぎだって怒ってる? でも、いつもならとっくに怒鳴り散
らしてる、よ、な? TT
皆においついたところで、アルケミストを見る。彼はこの世の中に楽しいこ
となんか何一つないという仏頂面で待機していた。はぁ……↓↓↓
fin
これらが古代語学習の一助と
ならんことを希う Ε /GuildStella 著
作品名:Misconfiguration 作家名:東明