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たままはなま
たままはなま
novelistID. 47362
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Fall 1

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Fall  1



今回のミッションは、どうしても成功させなければならなかった。
ここ数回、立て続けに我々の作戦が阻止されており、上層部からかなりの苦言を呈されているのだ。
それ故に私が此処に送り込まれて来たのだから。
私を含め幾人かの者達は、某国の傭兵部隊の中でも特殊な任務を負っている。
敵国の要人を暗殺する為だけに存在する部隊、軍の中での呼び名は“死神”。
ある時は事故を装い、ある時は病気を装い、一切の痕跡を残さずに対象を消すのが任務だ。
所属する者達それぞれに得意の分野があって、仕留め方はそれぞれだが、私は高難易度であってもかなりの高確率で仕留める事が出来るマルチプレイヤーだ。そういった理由から、私に与えられたコードネームは“デビル”という。
ミッションの成功報酬も他の“死神”よりも、ある意味それ相当に高くつく。よって私を招喚する時というのは、出来る限り確実に対象を仕留めなければならない場合に限られてくるのだった。
つまり、今回はそれだけ切実だという事なのだ。
対象が重要人物であるのみならず、失敗が続いた分の軍内部での信用を取り戻す意味に於いて。
諜報部からもたらされた情報によると、このところ“死神”の仕事を阻止しているのは敵国に新設された対暗殺部隊組織ではないかとの事だった。

始めは、経済界の大物を対象にした時。
個人的なイブニングパーティーが行われる会場へと向かう車に仕掛けを施し、事故に見せかけようとしたのだ。貴族の本邸だった建物を改造したホテルが会場で、小高い山を下る途中でブレーキを故障させて制御を失わせ、山道から落ちるか道路脇の林の木にぶつからせる予定だったのだが、道幅が広くなっている箇所でタイヤがバーストし、ブレーキが故障を起こして間が無く、あまりスピードが出ていない段階だったのでスピンしたものの車は無事に停車してしまった。
だが、その状況でタイヤがバーストするのは腑に落ちない。スピードがそれほど出ていないのなら、タイヤに掛かる負荷はバーストするには至らない筈だし、何かにぶつかったという訳でもないのに突然というのは不自然だ。
仕事の確認の為にサーチしていた衛星からのデータを見ても、バーストの仕方自体が不自然さを感じさせた。解析すると、まるで銃弾で撃たれたようにタイヤが破裂している。
データから車の周囲数百メートルには人の居た様子は見られない。それは、更に遠い距離から狙撃されたという事だろう。そして、人が居ても不審に思われない場所。
タイヤの破裂が確認された場所から直線距離で2㎞の所にあるホテルの何処かからだと思われる。銃と銃弾の組み合わせによっては不可能とは言えない。おそらくそれだけの威力のある銃と銃弾となれば、銃はアメリカ製のチェイタックM200、銃弾は最大有効射程2300メートルの408チェイタック。この大口径ボトルアクションライフルは2000メートル以上であっても、その弾速は音速を超える。射撃時の反動も少ない為、対象物に対しての誤差もあまり大きくならない。今回の場合にはうってつけの組み合わせと言えるだろう。
それにしても、車内の人間に大きな怪我をさせる事無く止めるに足る、正確な腕を持つ狙撃手が居てこその計画だ。

二度目は、朝のウォーキングを日課にしている標的に一般ランナーを装って近付こうとした“死神”が、気配ひとつ感じる間もなく何者かに腕を突然に引かれ投げ飛ばされて地面に叩き付けられ腰骨を骨折し、無様に失敗した。
殺気を孕む気配に対して、他の外人部隊のメンバーとは別格といえる訓練を積んだ“死神”に気配も無く近づく事が可能な相手とは、一体どんな人間なのか。
襲撃された本人は咄嗟の事で相手の姿を全く見ていないという。
そもそも、腕を引いただけで後は綿の詰まった人形を振り回す様に人間を投げる力を持っているのが既に驚異的だった。

三度目は、標的の行きつけのレストランでソムリエとして潜り込んでいた“死神”がワインを供した時、傍を通りかかった見知らぬ客に毒を仕込んだのを見破られたらしい。「らしい」と言うのは、毒入りである事を指摘された訳ではなく「そのワインの香りに、本来なら無い筈の金属臭の様な香りがするように感じられますが。」と指摘されただけだからだ。
その毒は海洋生物から採取した猛毒で、遺体からの検出が非常に難しく、暗殺にはうってつけだった。吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、悪寒、筋肉痛、血圧低下などの症状を呈し、重篤の場合は顔面蒼白となり、早いと15分程度で虚脱死するというものだったのだが、独特の金属臭がするのが難だった。それを、近くを通っただけの一般の者が嗅ぎ分けられるとは、余程の嗅覚の持ち主と言える。
言い逃れをして供してしまう事も出来なくはなかったが、それでは後で不審に思われてしまうので、直ぐに毒の入っていない物を用意する以外になく、結局は失敗したのだ。
何処と言って別段の特徴を持たない客だったそうで、顔もしっかりとは見ていないというものの、一応はモンタージュを作ってみた。しかし、一番重要な顔が曖昧で、あまりにもよく見かけるタイプの風体であるので、未だにその人物を特定できていない。

その後も数回に渡って暗殺を阻止されている現状なのである。
諜報部は敵国に放っているスパイから、どうやら対暗殺部隊が創られたらしいという他には細かな情報を一切得られない事と、阻止の仕方のバリエーションから一人以上ではないかと思われるその組織を“ファントム”と名付けた。
この度のミッションは“ファントム(亡霊)”対“デビル(悪魔)”の対決というわけだ。
なかなかに笑えるではないか。
暫く呼び出しがなく退屈を持て余していた私には、この対決はとても楽しいゲームになるものと思われ、私は高揚感を覚えながら、敵国へと単身赴いたのだった。



厳重な警備体制が敷かれた三ツ星ホテルのバンケットルーム。足元は靴が沈む感じがする程に厚い深いワインレッドに更に濃い臙脂色でダマスク模様が降りだされた絨毯が敷かれ、
壁紙は明るすぎないベージュを基調にストライプの間に蔦柄が型押しされていた。天井も同じ配色で、スワロフスキークリスタルをふんだんに使った豪奢なシャンデリアが何基も取り付けられ、煌びやかに着飾った人々にきらきらとした光を投げかけている。
1000人規模の夜間のパーティーが開催されている会場は、幾種類もの濃厚な香水の香りや、
各種の料理、アルコール類の匂いが混ざり合っていて、鼻の効く私には気持ちの良いものではない。
もちろん、そんな素振りを気取られるような事は決してしないが。
私は、白地で細かなピンタックの入ったハイカラーシャツに黒の蝶ネクタイをし、体にぴったりと沿う黒のウエストコート、同じ素材の黒のスラックス、エナメルの黒い靴を身に付けて、手には飲み物の入ったグラスを乗せた銀の盆を掲げ、ウエイターとして招待されている客達の間を、時折、飲み物を勧める声を掛けながら歩いている。ウエイター、ウエイトレス合わせて50名が会場を巡って給仕をしている中に紛れているのだ。
標的の動向を目の端に捉えながら、ミッションを決行するタイミングを窺っている。
作品名:Fall 1 作家名:たままはなま