Fall 3
軽い足音が廊下を近付いて来て、重厚そうな木製のドアが開かれる。そしてゆったりとした歩調でドアの陰から現れたのは、まだ幼さの残る顔をした、どう見ても10代前半以降には見えない少年であった。
流石の私も目を見開く。“スチュアート”を従え、私の向かい側のビロード張りの一人掛けの椅子にマントを翻して一人掛け用のソファーに座る彼が、ここに居並ぶ者たちの上官だというのか。ミッドナイトブルーの絹糸のようなさらさらとした髪、大きな瞳は長い睫に飾られ、透明度の高い鮮やかな青に輝いている。唇は淡い薔薇の花弁のようだ。体は華奢で、まるで少女の様なこの少年が、私を罠に嵌め、ミッションを阻止させたのだと、俄かには信じられない思いで見詰めてしまった。
優雅に足を組んだ少年が口を開く。
「僕の事は“伯爵”と呼んでもらおうか。お前の事は何と呼べばいい?“死神”か?」
まだ声変わりもしていない高めの声をしている。私は驚きのままに答えた。
「私は“死神”ではありませんよ。私の事は“デビル”とでも呼んで下さい。」
これが、彼との邂逅であった。
To be continued