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たままはなま
たままはなま
novelistID. 47362
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Fall 5 (完結編)

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後を“スチュアート”と“シェフ”に任せると、“メイド”と“ガーデナー”を連れて、私達は、いったん本拠地に帰投した。我々が“仕事”を終えて帰ってきたのは、最初に私が閉じ込められていた、捉えた獲物に情報を喋らせたり、あるいは、人知れず抹殺したりする為だけの施設とは違う。いわば、“ファントム”の本邸といえる邸宅だ。広大な敷地を持った大邸宅は、小さな主が親から相続した彼の持ち物であるが、今は住宅としては使用していない。今回の大取り物の為に、4か月近くを要して計画を練り、罠を用意したのである。まだ幼さの残る“伯爵”には、少し休養が必要であるとして、今は“ファントム”の為だけに使われているそこで暫く過ごす事にしたのであった。
“バトラー”たる私が“伯爵”の部屋に居る時には、他の者達は余程の事が無ければ近付かないのが暗黙の了解となっている。そう“伯爵”が仕向けて行ったから。何故なら、私が“伯爵”から褒美を貰うのに邪魔になるからだ。その頃、私は何かにかこつけては褒美を貰うようになっていた。
何しろ、彼からの褒美は、一度知ってしまったら手放せなくなるような甘美なものなのだ。悪魔の私をも魅了するくらいに。これまでの契約者の中にも気に入る者が幾人かいたけれども、彼らとは全く違う。何度この腕に抱き、褥を共にしようとも、彼は私に籠絡される事がないのだ。何時まで経っても一線を引いて、それ以上は内に入らせないのである。手に入らないものほど、より欲しくなってしまうのは、人間も悪魔も同じだ。執着という点に於いては、悪魔の方が上かも知れない。何しろ“悪魔”なのであるから。
「“伯爵”、今夜は沢山ご褒美を頂きませんとね。」
にっこりと笑顔を向け、彼を抱き上げてベッドへと運ぶ。
「何時も充分に与えてやっているだろう。」
ムッとした様子で“伯爵”が言う。確かに、私はご褒美を貪るように貰うけれど、今日は格別の働きの分、何時もより多く貰ってしかるべきだと思うのだ。代償の価値は、等価交換でなければならないのだから。
「ご褒美は、働きに見合っただけは頂きませんと。」
ベッドに横たえた“伯爵”はうんざりしていた。今までにも、大きな“仕事”をこなした時に、かなりしっかりとご褒美を貰い、その翌日は“伯爵”はベッドから起き上がる事が出来なかった。それを思い出しているのだろう。
「お前、僕は明日も用事があるんだぞ。」
この度の“仕事”の取りあえずの報告に王宮に行かねばならないと暗に言っているのだが、そんなものは私には関係ない事であるし、具合が良くないので後日に回すと理由を付ければ済む程度の報告だ。(翌日も動けるかどうか分からないので、敢えて後日と言っておく。)ロナルド・ノックスは簡単には口を割りはしない上に、“葬儀屋”の件については、一応耳に入れておくべきだとしても、まだ何も確証の無い、今のところは噂話なのだから問題はあるまい。
「“伯爵”、私との契約をお忘れですか?」
軍服の上着のボタンを外しながら首を傾げてそう問う。
「分かっている。だからこうして大人しくしているだろう。」
私は、ただ大人しくしていてもらいたいわけではない。唇を合わせ、首筋に舌を滑らせていく。服を肌蹴させ、胸の実を指先で弄んでも、彼はまだ声も出してくれないでいる。こんな頑なな態度も悪くないが、私は、彼から私を求められたいのだ。“伯爵”自ら、私に褒美を差し出して欲しい。こんな風に体を重ねるうちに、何時かはそうなっていくだろうか。
傲慢で、脆弱な人間の子供。私のただ一人の主。掌で腰を撫で上げ、片手でスラックスを剥ぎ取って、すべてを露わにしていく。欲望のままに貪りつくのが常の悪魔である私だが、この子供に対しては、随分と時間も手間もかけて体を暴くのである。既に悪魔としてはおかしくなっているのかも知れなかった。それでも、この子供への執着を手離せるとは考えられず、契約終了の時まで、ずっと彼の駒として、ある時は盾となり、また、剣となって護り闘っていくのだと誓うのである。そして時が満ちた時、滴るほどに美味な魂を、果たして私は本当に喰らうのだろうか・・・。
やっと聞こえてきた“伯爵”の切ない吐息を満足に思いながら、私は、そんな事を考えていた。



僕は悪魔を手に入れた。僕の軍門に下ったヤツは、“バトラー”となり、何時も充分な働きをみせる。対価を求めてくるのが面倒だが、ヤツの知識と腕は、今や“ファントム”に必要な要素となっているので仕方なくくれてやっているのであった。これから、“死神”の創始者と思われる“葬儀屋”を追い詰めていくのに欠くべからざる人材である、空腹を抱え、働きに等価として欲を求めてくる僕の犬。しかし、僕の悲願を叶えるのに、この程度で済むなら安いものだと思う。願いが成就した暁には、魂を喰われるのだとしても悔いはない。僕は、ヤツにこれからもしっかりと働いてもらう為に、今夜も褒美を与えてやるのであった。



END

作品名:Fall 5 (完結編) 作家名:たままはなま