Wizard//Magica Infinity −4−
「そう、今日もコヨミちゃんは外に出てないのね」
「うん、こもりっぱなし」
歩き慣れた通学路を凛子ちゃんと歩く。
普段は何も他愛もない話をしながら歩くのだが今日は違う。口から出る言葉は全てコヨミの心配事、気付けば既に学校が見えていた。
「とりあえず、コヨミちゃんが自分から出てくることを信じましょう。今、私達が何をしてもきっと無駄よ」
「うん。俺もそう思っていたところ。大丈夫、あいつのことだからいつもみたいに何事も無かったかのように戻ってくるでしょ」
「………そう、ね」
「?」
一瞬だけ、凛子ちゃんが顔を曇らせた。どうしたのだろうか?
とにかく、これ以上コヨミの心配をしていてもしょうがない。
今日は一人で過ごそう。
きっと、明日には全て戻っているはずだ…そう、全てが…。
・・・
−…で、あるからして。この形容詞の活用法は…−
「………。」
めんどくさい現代文の授業を受け続ける。
久しぶりにノートを開いたな。普段なら机の影に漫画の類を隠して授業を聞き流しているのだが…。
今日はそんな気分にならなかった。
そう、もちろんコヨミならこの俺の不真面目な行為を見逃さない。
最初は2、3回、口で注意するのだがそれでも俺が聞かない場合はシャーペンの尖った部分で俺の肩を突き刺してくるのだ。
だけど、今日はそんなスリルはない。コヨミが隣に居ない。
つまり…馬鹿をやっても何もつまらなかった。
−さて、ここの問題を…操真、やってみろ−
「えっ…はぁ」
講師に当てられ渋々前へ出る。
黒板には問題文が書かれ俺は回答をスラスラと書いていった。
するとどうだろうか、普段は不真面目な俺が真面目に書いたものだから講師と他のクラスメイトの口がぽっかりと開き目を大きく見開き続けていた。
−正解だ…どうしたんだ操真?−
「いやいや、失礼でしょ」
俺だってやるときはやる…というか、ちゃんと基本が理解していれば意外と簡単に解けたものなんだな、学校の授業って。
自分の席に戻ると同時に、自然にコヨミの席に視線が映る。
「…っ……。」
いくら見ても同じだ。
そこに、コヨミはいなかった…。
・・・
いつの間にか昼食の時間になっていた。
俺は購買で安い菓子パンとコーヒー牛乳を買い自分の席に着く。
「………。」
菓子パンの袋を開け一口噛じる。それと同時にコーヒー牛乳を飲む。
「むぐっむぐっ…んっく…」
黙々と食べ続ける。
会話する相手が居なくなっただけでこんなにも時間が経つのが遅く感じてしまうのか。
いつもならあっという間に昼休憩の時間が終わってしまうのだが、今日は別だ。まだ始まって10分しか経っていない。
菓子パンを食べながら外を眺めた。
今日も相変わらず天気が良い。雲一つない快晴だ。
こんなに天気が良いのに、俺の心の中は曇天だ。
コヨミの存在の大きさが改めて実感した。
俺は、なんて弱い生き物なんだろう。
いつもすぐ傍にいた人がいなくなっただけで心の中がぽっかりと空いてしまうのだから。
…もしも、だ。
コヨミに限らず、凛子ちゃんや俊平も俺の目の前から居なくなるとすれば、俺はどうなってしまうのだろう。
「弱いね…俺」
作品名:Wizard//Magica Infinity −4− 作家名:a-o-w