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らんぶーたん
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小説インフィニットアンディスカバリー第二部

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 だが、剣が触れる寸前に身をひねってそれをかわすと、騎士は漆黒の翼をはためかせて跳躍し、家屋の屋根へと離脱した。
 騎士が咆哮をあげる。
 身を震わせる大音量に、カペルは何故か胸を締め付けられるような思いがした。
 ひとしきり叫んだ騎士は、そのままこの場を後にする。騎士が屋根を飛び降りると、野次馬は慌てて道をあけた。逃げ遅れたものをはね飛ばしながら騎士が駆け抜けていくのを、カペルは見つめているしかなかった。
「待て!」
 エドアルドが追いかけようとしたが、その肩をドミニカが掴んで放さない。首を振って追撃を否定されると、エドアルドは口惜しそうに剣をおさめた。


 あの騎士だ。
 頭の中にあったのはそれだけで、ヴィーカは、騎士が近づいてくるのを街路の真ん中で呆然と見ていた。
 騎士が剣を抜く。
 斬られる。そう思った。
 思わず腰が抜け、その場にへたりこむ。
 目の前には漆黒の騎士。
 その手には剣。両手に保持されたそれが目線に構えられ、切っ先がヴィーカの喉元を指し示す。赤く光る目がこちらを見下ろすのが見え、言葉にならない恐怖が喉をふるわせた。
「あ……」
 剣が突き出される。
 しかし、それはヴィーカの喉を捉える寸前で止められた。
 そして、震える切っ先はだらりと下げられ、剣がその場にカランと音を立てて落ちた。
 騎士は慟哭する。
 それは絶望の慟哭。頭を抱え、身をよじり、魂を焼き焦がすような慟哭の中で、赤熱する瞳が悲しみをたたえてヴィーカを映す。
 動けずにいるヴィーカをその場において、騎士は街の外へと消えていった。ヴィーカにはそれを止めることは出来ず、今はただ、その背中を見つめているしかなかった。