二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

manjusaka

INDEX|2ページ/17ページ|

次のページ前のページ
 

此岸ノ黄昏 2



「―――誰かいるか?」
 閉ざされていた扉に向かって声をかける。重い音を伴いながら、じっとりとした視線を向けつつ、滑り込むように入ってきた従者が玉座から程遠い位置で控えた。
「今から蠍座のミロ、そして獅子座のアイオリアを呼べ」
「かしこまりました」
 深々と礼を尽くし、再び扉へと身を滑り込ませていくのを見届けたあと、一息吐く。
 一斉召集をかけた後、続々と聖域に黄金聖闘士たちが集い始めた。善と悪の狭間で揺らぎ続ける日々の中、揺らぎの振り幅はより一層激しいものとなり、正気と狂気の境界すら、薄ぼんやりと滲んだものとなっている中で教皇として振る舞い続ける。
 仄暗い玉座にて、謁見に訪れた黄金聖闘士の一人一人に注意深く声をかけ、観察すればおのずと見える彼らの立ち位置。何も知らず、まったく疑いもせず付き従う者。疑いの目を持ちながらも決定打を持たぬため、悩みつつも従う者。正体を掴みながらも、あえて組みする者。
 そして、空位の射手座を除き、この場に今もって訪れぬ者。それらは明確に叛逆の意を示しているのだろう。牡羊座のムウ、天秤座の童虎……乙女座のシャカ。
 一体、何を考えているのか全くわからないのがシャカである。彼自身は聖域に戻ってはいない。が、しかし―――視線をある場所に定めた。
 ずらりと教皇の間に並ぶ黄金色に輝く聖柩の前を順番に眺める。腕組みしたまま、ゆっくりと歩みを進め、乙女の姿を模した黄金聖衣の箱の前で立ち止まり、指先でそっと撫でた。まるでバルゴの聖衣だけは意に従うとばかりに、この聖域に戻されていたのだ。
 処女宮を守護する乙女座の黄金聖闘士として、恐らくシャカは教皇側につくということなのだろう。けれども、彼自身の心はそれを良しとしてはいないからこそ、今以って姿を現さないのではないのかと推測した。
 どのみち此処に聖衣があるということは聖域に、教皇に従うということ。つまりは真の女神から見れば、虚偽の女神を頂点と掲げる今の聖域同様、叛意を抱くことと取られるだろう。何も知らぬままに教皇側につくならばいざ知らず、シャカは知っている。いや、知ってしまったのだ。今の教皇が……私が本来、教皇であるべき者ではないということを。
 ここに至る過程をもシャカに暴露してしまっている。隠し通さなければならなかったことをなぜ洗い浚いぶちまける様なことをしたのか。
 私は心のどこかで今のシャカの存在を許せないでいるからなのだろう。小さな身体で精一杯その存在を示した、あの子を今もなお愛しいと思っている。瞳を閉じれば、時を超えて、私だけに差し向けられる笑顔に安堵してしまうほどに。
 もしもシャカが聖闘士という道を選ぶことがなければ、ずっと私の傍であり続けてくれたのかもしれなかったのだ。そう思えばこそ、やはり黄金聖闘士として存在するシャカを認められずにいた。まったく別の存在として思うほかに、折り合いをつけることができないでいた。
 その一方でシャカはといえば、枝葉を伸ばしスッと天高く伸びた緑樹のように成長した今でも、幼い頃に別れたままの気持ちを持ち続けていたようだった。彼が心から叫んだ言葉が幾度となく胸に押し寄せた。


 ―――君とともに歩みたくて、バルゴとなる道を選んだというのに。

 ―――私は君の願う奇蹟を叶える為だけに生まれた。

 ―――もう君はいないというならば、
    私はこの世界に復讐するためだけの存在となろう。


 奇蹟のように紡ぎだされた言葉。震える心に沁みこんでいった。今もなお一途に思い続けてくれた喜び。だが私はシャカの願いを叶えることもなく、遠ざけ、裏切り、傷付け、そして……今も偽り続けたまま。
「―――そう、私は偽っていたのだな」
 それが唯一の救いでもある。挿げ替えられた教皇の首。この玉座につく私が『サガ』であることをシャカは知らない。ただ、得体の知れない者が『教皇のように』『サガのように』振る舞っているのだと思っているはずだった。
 だからこそ、シャカはあの瞬間、その身を持って私を……『教皇』を討ち取ろうとしたのだ。『サガのため』に。
「ならば……手立てはある」
 僅かな可能性。何度も何度も考え、やっと辿り付いた答え。それは身の毛がよだつものであった。けれども、実行せざるを得ないだろう。必ず、シャカは聖域に戻ってくる。彼が聖闘士である限り、必ず―――。


作品名:manjusaka 作家名:千珠