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Sfと至が幻想入り

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「がつーんとって……。そうですか、外来人の方でしたか……」
 咲夜は顎に右手をあてると、静かに口を開いた
「そうですね、外の世界――つまり貴方達の元いた世界の非常識が常識となる場所とでも言いましょうか」
「非常識が常識に……な」
「新しい概念にも思えますね」
「見事な答え、さすが咲夜さん!そこに痺れる……」
「そんなことはどうでもいいんです。それよりあなた、どうして急に叫んだりしたんですか?」
「急に叫んだ?」
「さっき聞こえましたよ。襲われたとかではないのですか?」
「ああ、違いますよ。あれは、私が昼寝している最中に、そこのSfさんに突然……」
 そこまで言うと、美鈴は少し顔を赤らめる。
「昼寝については置いておいて、突然何です?」
「む、胸を揉まれまして……」
「胸?」
「はい。胸……」
「胸……」
「咲夜さん?」
 美鈴が顔の前で手を振っても、咲夜は全く反応を見せない。と思った次の瞬間、咲夜は美鈴の肩を両手でがしりと捕まえた。
「何故です?」
「は、はい?」
「何故胸を揉まれたのかと聞いているんです!!」
「いや、あの、それは……」
「私がお答えしましょう」
 Sfが一歩前に出る。
「あら、貴方が美鈴の胸を揉んだのでしたね。では一体どうして?」
「先ほど紅様にも説明しましたが、至様の安全確認の為です。不自然に膨らんでいるのは、武器を携行している恐れが」
「そう、安全確認ですか……。私の安全確認はしなくて良いのですか?」
「さ、咲夜さん?一体何を言っているんです……」
 美鈴は助けを求めるように至の方を見たが、乾いた苦笑が返ってきただけだった。
 Sfははっきりと答えた。
「結構です」
「そう……。結構、ですか……」
 すると、咲夜は優美な笑みを浮かべて美鈴の方へ振り返った。美鈴が胸をなでおろしたのも束の間、咲夜は美鈴の襟首を掴むと、至達に会釈をして遠くへと連れ去って行った。
 目を白黒させる美鈴には、咲夜がにこりと笑うのが見えた。
「今日のお嬢様方の夜食は、素敵なお客様二人と致しましょうか」
「咲夜さん?あのー、じ、冗談ですよね?」
「冗談?ふふ、面白い冗談を言いますね」
「え?」
「彼らは外から来たただの人間。どう扱おうと、力を有する者の自由でしょう?さくっと倒しますよ。あ、さくっと刺す、の間違いかしら」
「あの……何を言っているんです?」
「同じですよね?」
「え?」
「美鈴……あなたと私は同じですよね?どう見ても」
「えーっと……多分……はい」
「そうですよね?」
 咲夜の表情はゆっくりと変わっていった。優美な笑みから、安堵の笑みへと。美鈴もそれを見て安心のため息を吐いた。
「でも夕食は彼らです」
「え?」
「本当に人間の予備が少なくなっているんですよ。前にフラン様をうっかり人間の保管部屋に入れてしまったせいで」
 咲夜と美鈴はこそこそ話を続けている。
「どうにも、揉めているようだが」
 その言葉に返事はない。至が怪訝な顔をして辺りを見回すと、後ろからそうっと両手を伸ばしているSfと目が合った。
「おい、何をしようとしてる」
「Tes.至様の暇を潰そうかと」
「どうやって?」
「後ろから至様の目を塞ぎ、そのまま押し潰します」
 Sfが手の指を自分の方にぎゅうっと押し込むような動作をする。
「……それが暇の潰し方か」
「Tes.日本語フォーマットされた際に、日本の文化ではそうするものだと」
 至が黙ってまた前を向くと、話が終わった様子で咲夜がこちらの方にやって来るのが見えた。
「長いお喋りだったな」
 至の嫌味を無視して、咲夜がにこやかな顔のままで答える。
「ええ、なにせ今後の夕食についてですから。時間もかかります」
「夕食?そんなに揉める事でもあったのか?」
「ええ。間も無くその理由も分かりますよ」
 至がクーラーボックスの上で足を組み替えるのと、咲夜がそう言い終わるのは同時だった。

「至様」
 Sfが至のスーツの襟を掴み、そのままクーラーボックスの上から引き倒した。咲夜の投擲したナイフが箱に次々と刺さる。
「あらあら。優秀な侍女ですね?」
「お褒めに預かり光栄です」
 至が地面に転がったまま、
「何のつもりだ?」
「ええ、お嬢様の今夜の夕食になっていただこうかと思いまして」
「は?お前の主人は南米の未開の部族出身なのか?」
「いえいえ、私の主は吸血鬼です」
 銀のナイフを片手に持ちながら、咲夜は言った。
「はあ、吸血鬼……」
「薄いリアクションね……。嘘ではないですよ?」
「別に疑ってる訳じゃないが……、何というか……」
「あら珍しい。吸血鬼のお知り合いでもいるのかしら?それで、何です?」

「インパクトに欠けるな」

「い、インパクトに欠ける?外来人が、吸血鬼に対して?」
 至はSfを手招きすると、
「お前、現存する生物で吸血鬼よりインパクトのあるものを言ってみろ」
「Tes.大城一夫様です」
「……。そうじゃなくて、竜やら神やらのことを言えというつもりだったのだが」
「ご安心を。一夫様に次いで珍しい生物は佐山様です」
「ひ、ひそひそ話を止めなさい!」
 咲夜はナイフを握りなおすと、深く呼気を吐いた。
「貴方達は外来人にしてはどこか妙ですが、まあいいです」
 至はサングラスの奥で眼を細めた。
「殺す――か。Sf、俺を護れるか?」
「Tes.お望みとあらば」 Sfは至の方を向いて恭しく例をした。
「本当に、貴女は私に勝てるつもりなのかしら?貴女強いの?」
「ええ」
 Sfは唇を動かさずに返事。
「そう――」咲夜はもう笑わなかった。
作品名:Sfと至が幻想入り 作家名:紀伊