ボーカロイドが会議中
廊下から居間へ通じるドアは壊されていたが、キッチンから居間へ通じる引き戸は壊されていなかった。
居間への引き戸を開けて、
「……」
遠い目をした。まずどこからツッコんでいいのか分からない。
部屋の隅で、暗いオーラを漂わせながら体育座りをしているカイト。何かあったのか、と聞こうとしても、その前に豊胸手術の広告をにやりと笑いながら見ているメイコが目に入ってしまう。何でそんなもの見ているのかと問おうとすると、今度は「正しい礼儀作法〜マナーのなった大人になるために〜」と右上に書かれた番組を熱心に鑑賞しているレンが気になる。
とりあえず部屋自体へ踏み込んで見ると
「あ、お帰りー」
と隣から自分よりわずかに低い声が聞こえた。
「……リンちゃん、何かあったの?」
ミクがそう聞くと、リンは小さなため息をついて、雑誌を閉じた。
そしてミクを見上げて、こう言った。
「知らない方が幸せなこともあるよ」
わけが分からなかったミクも何かを悟ったように、キッチンへおやつを取りに向かった。
作品名:ボーカロイドが会議中 作家名:悠木陽和