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ゾンビが幻想郷入りした日

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 美鈴は死んだ。私が来る前からずっと生きていたのに。全てのゾンビに本当の死を与えてから…死を受け入れたという。美鈴、あなたが人を襲う者になっていたら、私があなたを葬って上げる。その方がいいでしょうから・・・

 自然とほおを伝う、涙。私達のほかにも、似た光景があった。

 「大ちゃん・・・・・あたいだけにするなんて・・・。あたい、あたい…」

 「てゐ!!てゐ!!お願いだから眼を開けてよ!てゐ!!!」

 「アリス…ダメだ、まだ死んじゃだめだ!まだ生きれるんだから…アリス!」

 「静葉…どこに行っちゃったの・・・・。」

 「も、椛…うそでしょ、貴方が死んだってネタにもなりっこないのよ…?…椛…椛…なんであんなことになったの・・・?」

 妖も、人も、心はある。この光景は、咲夜には辛すぎた。

 ぎしぎしと、長い廊下を渡って来る。さっきから、ずっと。そして、私たちのいる部屋で止まった。

 「……皆さん」
 静かな声は、様々な声にかき消され、扉の近くの者しか聞こえなかった。

 「皆さん!!幻想郷のため、自分のため、あちらの世界の為にも聞いてください!!!!」
 永琳の消えそうな声が、部屋に響いた。

 「…今、幻想郷では、見ての通りに死者が生者を…妖怪も人も関係なく、死者がとにかく生きている者達を喰らっています」

 「そして…」

 「私の調べによると――、もともと何らかの能力を持った死者に近寄ると、どんな者も能力は発動しない。これは確定事実です。また、能力を持っていた者が襲われ、死亡しても、能力は消えず、生前と同じように使える。これも確定事実です…」
 自分の事が信じられないように、永琳は項垂れた。

 「…今確認できた死亡した能力者を言っておくわ」
 隣にいた鈴仙が静かに、手に持っていた紙の内容を読み上げる。

 「大妖精、ミスティア・ローレライ、リグル・ナイトバグ、紅美鈴、…因幡てゐ、秋静葉、犬走椛、姫海棠はたて、霍青娥、わかさぎ姫、稗田阿求……の以上11人。今…少しまずいのは」

 「霊夢とアリス。あなた達はまずいの。酷い事を言ってると思うけど――」

 「…ホントの事だもの…それより永琳…私の身体の・・・中にあるアイツらの菌…を取り出して、・・・・・・・薬を、作って…!」

 「待てよ霊夢…お前、それでも・・・!!」
 魔理沙が声を張り上げる。

 「知ってる。自分が死ぬこと位…わかる。ねぇアリス…」

 「そうね、残念だけれど・・・・・それしかないわねぇ・・・・」

 「私が死んだら、誰でもいい。私を殺して」

 「私も…そうだなぁ、霊夢と…同じかな」

 「頼むから」

 「もう死ぬみたいなこと言うなよ!!霊夢もアリスも!私はお前らに何もしないからな!!!」

 魔理沙は大声で後悔の念を呟いて泣いていた。

 怖かった。辛かった。こっちも泣きそうになった。

 ――――もう…この世界は終わる…そう思った。そして、

            私の意識は消えた。

目が覚めた時、私は一人だった。さっきの部屋で、横たわっていた。

 この部屋には時計が無い。というより、永遠亭には時を記すものが何もない。蓬莱人が時を知ろうと、何の意味もないからだ。

 「…みんなどこに行ったのかしら…。今は何時だろう」
 懐中時計をポケットにいつも入れてある。ふたを開くと、さっきより2時間程進んでいた。

 「霊夢やアリスはどうしたかな……」
 2時間前の映像が頭の中で鮮明に映し出される。魔理沙はどうしたんだろう?やっぱり・・・ダメだっただろうか?

 「とにかく、永遠亭の人を探さないと・・・永琳位は残っているはず…多分」
 長い廊下も、あの時の鈴仙の狂気の眼をまともに見たときよりは短く感じられた。

 「あ」
 薬品のにおいがツン、と鼻に感じられた。
 ふすまを開けると、確かに永琳はそこにいた。が、とにかくひたすらに何かをいじり、空中に液体を浮かせては容器に入れ…を繰り返す無造作な動作があった。

 「咲夜!いいところに来たわ…ううん、それより」
 一瞬だけ笑みを浮かべ、手だけは止めずにこちらを見た。

 「聞いてほしいのだけれど」
 紙を取り出し、私によこした。

 「みんな戦闘態勢に入って、幻想郷全体に散らばっているわ。地底にいる連中も、神奈子や諏訪子の力で動かして戦っている。あと…」

 「それは分かった、私もすぐ外に行く。だけど・・・あの、」

 「霊夢とアリスはどうなったの?」

 「………聞きたいなら話すわ」

 「・・・・・・・いえ、いいわ」
 彼女の眼を見て、悟った私は、ふすまを開けようとした。すると、
 「外に行くのはいいけれど、これを」

 「?注射器?」
 それは、3本の注射器だった。これは…
 「ワクチン。どこに刺しても効くようになってる。噛まれても全部使えば、中に入った菌は消えて傷後だけ残るようになってる。でも、一回分よ」

 「十分だわ」

 「…くれぐれも気を付けて。ここからすぐ右に扉があるから、そこから出るといいわ」

 「わかった。じゃあね」
 駈け出してみたものの、確かに扉はあったが、その扉は、竹林のどこに繋がってるかわからなかった・・・
 


 

 

 
 
作品名:ゾンビが幻想郷入りした日 作家名:kurux2