部長として。
「赤也。」
「げっ・・・。」
「げっ。っていうのはどういう意味だい?こんなにも俺がお前を心配してやってきたというのに。」
「いや・・。すみません。」
「はあ・・・。それで?」
一見、シリアスに見えるこの保健室での俺と赤也の会話。こいつは明日に備えている他校との練習試合があるというのに昼休みに校庭で鬼ごっこをしていて女の子とぶつかりそうになり、それを避けようとしたら・・・
「足を捻った・・・と。」
「・・・はい。でも!俺、この程度なら全然部活できますし大丈夫ですよ!」
理由が理由なだけに聞いて呆れた。
部活ができるできない以前に赤也にはレギュラーとしての自覚が足りない。柳から赤也が怪我をしたと伝えにきたとき真田が居なかっただけ運が良かった。真田が聞いたら長い長い説教が始まって部活が終わるまで永遠としていそうだからな。この間にも真田に情報がいってなきゃいいけど。
「女の子は?大丈夫なの?」
「あ、軽くぶつかっただけで相手も大丈夫って言ってて怪我はしてなかったみたいっす。」
「ホント呆れるよ。」
「・・・すみません」
俺が冷たく言えば、不機嫌になったような落ち込んだような態度と声で謝る。
「今日の部活と明日の試合は見学。」
「えっ!?いや!でも、部長!」
「いやとかでもとか無し。見学は見学。足手まといは要らないよ。」
「っ・・・・。」
俺は赤也が昼休みに遊ぶことを非難したいわけじゃないんだ。ただ、レギュラーとして自覚して欲しいんだ。王者立海のレギュラーとして有力なメンバーであることを。もう、入学してきたときのお前とは違うんだ。お前は立派なうちのメンバーなんだから。そのために俺は厳しいことも言わなきゃならない。部長として。
「赤也、早く怪我を治すことを考えろ。治ったら部活にでることを許可する。ただし、"痛みが消えたら"だ。」
「はい・・・。」
俺は赤也の件に対しての真田への言い訳を考えながら席を立つ。そして赤也の頭に手を乗せる。
「早く良くなってね。」
そう言い残して保健室を後にした。