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ラブ・ミー・テンダー 1

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◆ 『天然みかど注意報』 シリーズ・第二弾! ◆

 『ラブ・ミー・テンダー』 第一話

   ◇ プロローグ ◇

 静雄の小さな恋人は、有り得ない確率で、しょっちゅう何らかのハプニングに遭遇している、究極の《危険ホイホイ体質》だ。

 コンビニに立ち寄れば、強盗目的で押し入って来たニート野郎に捕らえられ。
(帝人の護衛に張り付いていた粟楠会の下っ端が、「襲うなら余所のコンビニへ行け!」と、即座に犯人を放り出してくれたので、「わずか三分足らずの人質体験だった」と、後で帝人に聞かされた。)

 近道しようと銀行の裏手を通れば、警備員に成り済ました襲撃犯とばったり出くわし、現金輸送車ごと拉致される…なんて、とんでもない事件に巻き込まれ。
(帝人救出の為に、錚々たるメンバーが集結したので、異例のスピード解決だった事は言うまでもない。)

 下校中にうっかり懐かれてしまった迷子を、警察で保護してもらう為に、最寄りの派出所へ向かっていたら、車で近付いて来たその子供を狙った誘拐犯に、危うく一緒に連れ去られそうになり。
(何処からともなく立ち現れた、黄色いスカーフを身に付けた一党と、目を赤く光らせた不気味な集団がぐるりと車両を取り囲み、行く手を阻んでくれたそうだ。…余談だが、さる資産家のご子息様だったらしく、年末には、その時の礼だと言って、律儀にもお歳暮のハムが届いた。)

 ハロウィンには、都会のお祭りムードに誘われ、浮かれ出てきた妖精どもに気に入られ、こっそり精霊界にお持ち帰りされかける珍騒動が勃発し。
(あの夜のセルティの切れっぷりは、洒落にならないレベルで凄まじかった。母は強しと言うが、『うちの子を返せぇえ〜っ!』と猛り狂って、鎌状の《影》を振り回していた彼女の姿は、静雄を以てしても「絶対に敵に回したくない」と慄いた程だった。)

 他にも、あやかし絡みのトラブルに巻き込まれること数回。
(これ以上、妖怪の知り合いが増えるのは願い下げだとうんざりする程、水木しげるの世界を覗いた気がする。…仲間内で辟易してないのは、「頼んだら、解剖させてくれるかなぁ〜」と、あやかし連中に熱視線を送ってた、どっかのイカレた闇医者くらいのものだろう。)

 不可思議な超常現象に遭遇したのだって、一度や二度の話じゃない。
 本来、奇跡と呼ばれる光景を目の当たりにする機会なんて、都会で普通に暮らしている限り、そうそう有りっこない筈だ。
 にも拘らず、帝人がこの一年で直面したアンビリーバブル現象の遭遇率を一顧してみると、今まで静雄が気付かなかっただけで、怪異も神秘も、当たり前のように身近に存在する、極めてありふれた事象のように思えてくるのだから…つくづく、慣れというのは恐ろしい。

(…ったく。どんだけ、非日常に愛されてんだか…。)

 あれだけ様々なハプニングが、身の回りで頻繁に起こっていたにも拘らず、これまで然したる危害を被らずに済んでた僥倖こそが、もしかしたら帝人に齎された、最たる奇跡なのかも知れない。
 そう状況を楽観視していた矢先に舞い込んできた今回の珍事が、思いも寄らない後遺症を帝人に残していってくれた事に気付いたのは――折しも、帝人が高1の課程を滞りなく修了した、春休み前日の夜だった。
作品名:ラブ・ミー・テンダー 1 作家名:KON