瀬戸内小話2
無題
「覚悟はいいか?」
「……愚かな」
吐き捨てるような元就の態度に、元親は苦笑する。
「アンタ、自分の立場は分かってるよな」
「……愚かな鬼が血迷ってるいることくらいはな」
捕らえた敵の総大将は、首を取るのが道理。なのに、元親は元就を四国まで連れ帰った。それが、褒められたことでないのは知っている。
「鬼だから、できるのさ」
鼻を鳴らし、膝を割る。それに抵抗することのない中国の王は、そっと息を吐く。
「……であれば、好きにせよ。我は、もう貴様のものだ」
敗北した将らしい、潔い態度。それに、喉の奥でくっと笑うと、身を進める。
「言われなくても、そうさせてもらうぜ」