あなたと会える、八月に。
そこで言葉が途切れたのでジュリアスは、すっと視線をロザリアから老人へ移した。移して老人が自分を、すがるようなまなざしでじっと見つめていることに気づいた。
「……いえ」その、少し緊張した表情を笑顔に変えて老人は言う。「どうです、娘は美しく成長しましたでしょう?」
ふと見ればロザリアは、周囲の男たちの視線を集めつつ、悠然として髪ゴムを取り、長い巻髪を指と海風でほぐしながらこちらへ歩いてくる。
「何を言うかと思えば」ジュリアスは鼻で笑う。「ロザリアが美しいのは、今に始まったことではないではないか」
作品名:あなたと会える、八月に。 作家名:飛空都市の八月