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飛空都市の八月
飛空都市の八月
novelistID. 28776
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あなたと会える、八月に。

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◆9

 「八月にだけ、会える人」と言うロザリアの声の響きが好きだった。
 私こそ「八月にだけ、会える家族」を愛していた。彼女が十五のとき、その一片が欠けてしまい、全部が崩れ落ちそうになったとき、もしかしたら彼女自身やその父よりも、そうなることを恐れ慌てた自分がいた。何としてもそれは阻止したかった。だからそれが再び結束したとき、私はとても嬉しかった。彼らの役に立てたことがとても嬉しかったのだ−−本当に家族の一員になれたような気がして。
 だから、彼女たちの来年の八月……私にとっては二週間後、再び会えると思い、私こそが楽しみにして日々を過ごしてきた。
 それなのに。



 再び指を見る。そして、目の前の書類に付けられた写真を、その指でなぞる。
 女王候補のひとりと、以前から知り合いだったというだけでも、これから行われる試験−−女王を決定するための−−に支障が生じるだろう。そのうえ、もしも情にほだされて彼女の願いを聞いてしまっていたらと思うと……ぞっとする。
 この娘はいったい、いつごろから私を男と意識し始めたのだろう。
 もう誕生日は祝えないと叫び、その全てを投げ打って私に縋りついた。
 けれど、私は拒んだ。何故なら私は彼女の家族の一員であることを願っていたから。彼女は私にとってはすでに大切な『家族』であったから。
 それは、彼女が私と……躰で結ばれるよう願ったこととは大きく隔たっていたから。
 一方で、ロザリアは最後まで一度も涙を見せなかった。雨が隠してしまっていたかもしれないけれど。
 相変わらず、誇り高い、気丈な娘。
 そして、私に別れを告げた−−